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2016年10月22日 (土)

錦秋琥珀岩手行8:田沢湖・鶴の湯温泉

三日目。起きると朝霧が一面を覆っていて峠を越えての田沢湖行きは難しいかと思われたが、宿の女将さんに伺うともうじきに晴れてきますと言われて安堵する。
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走り始めの八時半ごろはわずかにもやっていたが、しばらくするときれいさっぱり消え去った。
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鶯宿温泉から田沢湖は30km弱なのでおおよそ40分ほどで湖畔に到着。湖岸には人もおらず静かに澄み切った湖面があるのみで気分がいい。
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桟橋があったのでそこへ行くとウグイが見えたので菓子を蒔く。と遠方から一斉に集まってきて随分にぎやかになった。
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戯れもそこそこに目当ての鶴の湯に向かう。この日は文句のない快晴となり、気温もこの時期としては暖かい。その上鶴の湯へ続く山道はどこまでも見事な紅葉が続いていて、この僥倖を山が祝福してくれているかのようだった。

外湯の開始と同時に入ろうと目論んだのでさほど人はいなかったが、流石は日本一名の知れた秘湯だけあって、あの有名な露天には既に七~八名ほどの客が居た。うまいこと居場所を確保して向かいの山の紅葉と枯れすすきと蒼色に白濁した湯の景色を眺める。
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(写真はネットから引用。ほぼ同じ景色を堪能)

じんわりと温めの湯が身体と脳の甘い痺れを誘う。程なく山の端から太陽が現れて眩しい光が差し込んでくると、得も言えぬ幸福感が全身に押し寄せた。神がかっているとも思える展開に「やはり凄いところだな」という鮮烈な印象が刻まれて、湯から出た後もほとほとと続く多幸感にしばし揺蕩った。泉徒としてはまたとない経験を積むことができ、とても満足した。

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2016年10月21日 (金)

錦秋琥珀岩手行7:葛根田渓谷・国見温泉

【葛根田渓谷】
元々紅葉は秋田駒ケ岳方面と思っていたが、宿を取った雫石にも葛根田渓谷という名勝があると聞き及んで足を運んだが、見事な景色が広がっていて始終歓声を上げるほどだった。
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水色の鮮やかな青に荒々しい岩肌、その上に衣を羽織るように緑・黄・橙・赤の見事な紅葉が折り重なって、まこと錦と讃える他になかった。
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最奥部の滝の景色や地面から噴気が立ち上り霞がかる景色も珍しいもので、これだけのものがほとんど人にも見られず盛況を呈しているのはどこか夢のようでもあった。
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【国見温泉】
11月の初旬には雪に閉ざされて冬季閉鎖になるという秘湯。国道から山を登っていく道は今が盛りと燃え盛る紅葉が見事だったが、宿の近くになる頃にはいつしか茶褐色になり、車を降りると冬の到来を思わせる強い北風が舞っていた。
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名高い黄緑色の湯に浸かって紅葉を・・・と思い、露天に向かうが脱衣所も屋外なので風に吹かれていかにも寒い。がゆえに、湯に浸かった時の極楽感は増すことになった。
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想像以上に黄緑色の湯は、かつて体験した鳴子温泉西多賀の湯よりも色に深みがある。どうやら少し濁っているところにその秘訣がありそうだ。また底には析出物が溜まっているのだが、その泥のような砂のような微妙な粒子感が足裏に心地よく、この湯への個人的評価を高めることになった。
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見上げれば寒風に吹かれながらもわずかに残る紅葉が望めた。湯の中と外、天国と地獄がせめぎ合うかの雰囲気が感じられるのもこの時期だけのものだろう。そのあわいをすり抜けて無事車中の人となった。(なお老婆心ながら体への負荷は大きいので、心臓の弱い方や高齢の方のこの時期の入浴は勧められないと感じた。)

2016年10月20日 (木)

錦秋琥珀岩手行6:風光舎

広域農道を少し入ると音らしい音は消え、時折木々を渡る野鳥がちちちとさえずるばかりの閑寂な世界となり、その先に風光舎はひっそりと建っていた。車を降りて店へのスロープを上がっていくと、ふいに香ばしい珈琲の薫りが鼻をかすめて期待は高まるばかりになる。
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店内は控えめの灯りで全体に英国調のコージーな雰囲気が漂う。置物や家具が決まり過ぎて堅苦しいということもなく、さりとて粗が目に付くようなこともない。非常に調和が取れていて心が落ち着く。入念に、また飽くことなくこの雰囲気を醸し出す工夫が続けられているのだろう。

程よい焙煎具合が売りというグアテマラは見た限りかなり薄いように思われたが、ここまでの店を作り上げる方に抜かりがある訳もなく、しっかりとした奥行きと香りを持つ美味しい珈琲だった。
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家人が頼んだかぼちゃのプディングは、”プリン”ではなく”プディング”であることを再認識させられるほどかぼちゃの濃度が高く、素朴な甘みと特有のまったりした舌触りが確かに残っていて、何やらコッツウォルズにあるマナーハウスにでも招かれたような錯覚に陥った。
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航空会社に在籍されていたというマスター夫妻の柔和な笑顔とまろやかな接遇にすっかり心を蕩かされて店を後にした。土日など混雑して忙しない雰囲気になってしまうとその魅力は半減してしまうから、ぜひとも今回のように人の少ない時間を見計らって再訪したい。

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2016年10月19日 (水)

錦秋琥珀岩手行5:松ぼっくり・髭

【松ぼっくり】
雫石と聞いてあまり具体的なイメージは湧かなかったが、来てみると盛岡や仙台の人が自然を楽しみに来るところとなっているようで、那須や軽井沢にある別荘地のような雰囲気の場所もいくつかあった。その中でも屈指の人気を誇るのが、ジェラートの松ぼっくりだということで足を運ぶ。

なるほど平日の午前中だというのに駐車場にはひっきりなしに車が出入りしているし、店の周りには購入後席に座って食べられるようなテラスがかなりあって一大観光名所になっているようだ。季節ごとのジェラートでは南瓜や栗などあってその誘惑にかられたが、家人の意向を優先していちじくとミルクのダブルにしてもらった。
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ミルク感の強さが売りなのかと思いきやさほどそれは感じず、むしろ後味の余韻が良くてついついスプーンが進んでしまうというタイプだった。ザクッとした硬派のコーンも後口をさっぱりとさせてくれてとてもいい。なるほど、これは流行るはずだ。今では盛岡駅でも楽しめるというから、これからこの辺りに来た際には季節ごとの味わいを楽しみたい。
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【髭】   
盛岡市と雫石町を東西で貫く国道46号。雫石に入った辺りに焼肉屋が何軒か集まっていて、地元では焼肉冷麺ロードとも呼ばれているとのこと。その中でも味わい深い名前の「髭」で冷麺を食べようと足を運んだ。

なんとなくのイメージでは山小屋風の店で、寡黙で気難しいご主人が立派な髭を蓄えていて、気まぐれな営業スタイルだが味は折り紙付きで・・・という感じだったが、立派なロードサイドの焼肉店で、明るく丁寧な接客の女性が出迎えてくれて少しホッとする。昼時を過ぎていたのですんなり入れたが、入口には待ち用の記名簿が置かれていたので時分時には混み合うのだろう。

冷麺を二つ注文したところ、ちゃんと注文後に茹でてくれるらしく15分ほど待たされたが、それだけの価値は充分にある素晴らしい麺だった。麺の肌は極上の滑らかさで、歯応えのもっちりむっちり感も申し分ない。讃岐うどんの極上の麺を食べた時に感じる恍惚感を覚え、谷崎風に言えば「美妃腿肉」とも呼べる官能的な逸品だった。やや甘めの出汁もカクテキを入れると程よく引き締まって全体の味のまとまりもいい。

すっかりはまってしまって翌日も出かけてしまう有様。盛岡市街で冷麺を食べずにここまで待った甲斐があった。さんまではないが、冷麺は雫石に限る。
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2016年10月18日 (火)

錦秋琥珀岩手行4:川長山荘

当初今回の旅では乳頭温泉郷に宿を取って紅葉を愛でつつ白濁の湯を楽しもうと思っていたが、さすがに紅葉のシーズンなので2か月前に思い立って部屋が取れるほど甘くはなかった。そこでもう一つの目的地である盛岡との間にどこか良さそうなところはないかと探し当てたのが、こちらの川長山荘だった。

宿のある鶯宿温泉はいわゆる大規模な温泉ホテルが幅を利かせているようだが、少し離れたこちらはこじんまりとしていて妙な圧迫感がなく気軽に滞在することができた。部屋は連泊だからか予約内容よりも広い角部屋を使わせてもらった。ごく静かな部屋で遠くに山並みが見え、晩秋らしい朝もやに包まれた風景も楽しめて良かった。
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温泉はほんのりと硫黄の香りが漂う湯で露天・内風呂・寝湯とあったが、やや温めの寝湯というのが肌に合い、毎朝毎夕ここに横たわって新鮮な源泉かけ流しの湯に入り浸っていた。泉質が穏やかなこともあってか入浴後の身体の反応もマイルドで、酸やアルカリのきつい湯に入ると眠りが浅くなり疲れがどっと出る体質の自分には丁度良く、毎晩ぐっすり眠れて疲れも取れいい骨休めとなった。その辺りが地元で知れ渡っているのか、日帰りに温泉を開放している時間帯はこの湯を目当てにした客がかなり多く見られた。

食事は地のものを中心にしみじみと美味しい品が並び、鮑の火炙りなどこれ見よがしの品が無かったのでほっとした。新米の季節でもあり、白い飯が旨かったのも印象的だ。
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宿の方も明るい働き者の方が多くて見ていて気分が良かったし、不明な点は親切に教えてもらったりして滞在中はすっかり寛いで過ごすことが出来た。トイレが共同という点で若い世代からは敬遠されるかもしれないが、そのお蔭で旅慣れた客筋が中心の静かに過ごせる穴場的旅館だと思う。

唯一気になったのは柱に亀裂が入っているのが散見されたことで、これはなんらかの対処を施してもらえればと思う。宿のマスコット、柴犬のココア君との触れ合いの時間が取れなかったので、それはまた今度の時に取っておこうと思う。

2016年10月17日 (月)

錦秋琥珀岩手行3:雫石YU-YUファーム

鶯宿温泉に泊まると決めた後、なにかアクティビティはないか探したところ、御所湖でカヤックが格安で楽しめることが判明したが、今年は国体で使用するとのことで早めにシーズンが終わっていた。そこで温泉街のすぐ近くに最近できたという「YU-YUふぁーむ」に行って初めての乗馬をすることにした。

場内には馬場が4つ(芝生・屋内・角馬場・場内トレッキング)あって50分の体験コースではその4つを順番に巡ったのだが、目先が変わるし馬場によって馬の歩き方も変わるので変化に富んで面白い。
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最初に屋内馬場で基本を5分ほど教えてもらうと馬の動きにも段々に慣れ、10分もすると教えてもらった馬の御し方に従って手綱でこちらの指示を馬に伝えて場内を闊歩できるようになった。


芝生馬場では係りの方に轡の綱を持ってもらいながら、そのまわりを速歩で数秒間駆けるというのをやったが、大した速度でもないのに遠心力で身体が外に持っていかれる。久々のメリーゴーランド感を味わったし、改めて騎手の凄さを感じることが出来た。

また角馬場を柵に沿わせて歩かせたり、場内馬場で八の字に歩かせたりしたが、うまく意思が伝わった時は素直に嬉しいし、タイミングが悪いと馬にそっぽを向かれてしまうので、馬との敏感なコミュニケーションも楽しめた。
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ご主人も奥さんもいかにも動物好きというやさしい方々で、料金もプロテクターとヘルメットを無料で貸し出してくれて5,500円と良心的でありがたかった。この日は天候も良く我々の前後にもお客さんの予約が入っていてなかなか盛況ぶり。ポニーも何頭かいたので子供連れでも楽しめるし、盛岡から車で30分とかからないし、非常にいいところだった。

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↑馬のほかにも飼い猫や四国犬がいて、皆のびのび過ごしていた。

2016年10月16日 (日)

錦秋琥珀岩手行2:車門・クラムボン

【車門】
車門はナナック裏手の商店街にある古風な白い蔵造りの店で、どっしりとした風格ある店構えに安心感を覚えた。
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二階席に上がったが立派な梁が目を引くもののそれほど圧迫感はなく、屋根裏のひそやかさも残っていてなかなか居心地が良かった。昼時だったのでテーブルはすぐに一杯になりやや喧騒ではあったものの、地元の人達ばかりでそのお国言葉が丸く耳を転がるのは心地よく、さほど嫌な気にはならなかった。
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聞き覚えのあるクラシックの曲を耳にしながらさっぱりとした味わいのミルクティーを飲み、店内を見渡すと高校生くらいの女の子たちが頼んでいた分厚いパンのピザトーストがやけに美味しそうだ。しかし、今しがた六分儀でホットサンドを食べたばかりだったのでここは我慢する。

帰京してみて今思うにあれ位の年代の子がこういう古風な喫茶店に連れだって来るのも珍しいから、もしかしたらあのピザトーストを食べに来ていたのかも知れない。少し後悔の念があるので美味しいのかどうか、次に行った時には試してみたいと思う。
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【クラムボン】
こういう店名を目にすると、宮澤賢治を生んだ岩手に来ているのだナという気分が高まる。店はこじんまりとしていて、カウンターが3-4席、テーブルも3つほど。

壁に個展風に絵を展示したりしてるし、随分趣味性が高そうだけどもこれでやっていけるのかな・・・と余計なことを思っていたら、ひっきりなしに自家焙煎した珈琲豆を買いに来るお客が来るし、ご主人らしき人は注文の品を送る伝票書きに精を出していたから、それは杞憂だとすぐにわかった。(余談だが使い込んだ焙煎機を背にしてご主人が鼻先に老眼鏡をかけ、節だった指で一心に宛先を書きつける様子は、一つの景色となっていてとても好ましく感じた。)
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ブレンドコーヒーとチーズケーキを頼んだが、いずれも強い味でぶつかり合う感じではなく、珈琲の苦みをチーズケーキの程よい甘みが丸くし、一方チーズの後味を珈琲の軽い渋味が上手にさらっていく案配で、その持ちつ持たれつな具合がいい。なんとなくほんわかと柔らかい物腰の奥さんと職人気質を感じさせるご主人との関係を見る思いがして、それがより一層店の印象深くさせたようにも思う。

愛らしい珈琲豆があしらわれたカップや豆を入れる麻袋で版取りしたと思われる壁などそこここに細かな工夫が見られて、流石に盛岡でそれと知られた店だと感じさせられた。

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2016年10月15日 (土)

錦秋琥珀岩手行1:六分儀

紅葉を愛で温泉で心身を伸びやかにし、古風な喫茶店で落ち着いた時間を過ごしたい。そう思って旅に出たのは岩手だった。以前と変わらず清々しい空気と人々の誠実な気風が感じられて良い旅となった。

【六分儀】
東京から2時間、盛岡に午前中についてまず目指したのは六分儀だった。木彫りの看板は手作り感たっぷりで、どこか純朴な雰囲気を感じさせる。
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船のハッチを思わせる重いドアを開けると、木を多用した琥珀色の空間が現れ、時間と人々のざわめきが醸し出したのであろうその風合いがこちらの心を和ませてくれる。開店から朝11時までやっているモーニングに間に合ったので、チーズのホットサンドとブレンドコーヒーを注文する。
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店内に流れるシャンソンが店の雰囲気によく合っていて、合間合間に新聞をめくる音、壁の振り子時計の針の音が聞こえる。じきに挽かれた珈琲の薫りが漂ってくる。そのいずれもが心を鎮めてくれて、テーブルにホットサンドと珈琲が運ばれて来るころにはすっかり良い心持になっていた。
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丁寧に仕上げられたサンドをほお張り、かぐわしい珈琲を啜っては入口に差し込んでいる柔らかい秋の陽射しをぼんやり眺める。心身のスイッチが日常の忙しなさからカチリと切り替わって、入店わずか10分で安息の地を得た思いに満ちた。

家人曰く、この旅で訪れた数店の中では一番居心地が良かったとのことだが、私もそれに同意する。盛岡に住む人が羨ましいと思える店にいきなり出会えたのは幸せなことだった。


2016年10月10日 (月)

岡崎体育に見る京都らしさ

ある日。ゴッドタンで「フライ揚げる」っていう曲があったナ・・・と思って検索したところ、「あなたへのおすすめ」で岡崎体育の「Music Video」が出てきて視聴したところ、久々に爆笑した。

冒頭の奇妙な”カワイイ”キャラはきゃりーぱみゅぱみゅ、横からメンバー出てきて、二分割の男女を最終的に出会わせるのはゲスの極みのMVを揶揄していると思われ、あまりの巧妙な突っ込みぶりに両名から「この曲、面白い」と事実上の敗北宣言を引き出したのも小気味よい。これだけのものをたった6万円で作り上げることが出来る世の中になっているんだということを強烈に知らしめてくれることになった。

そういえば彼の姿はこのCMで見ていて、商品が商品なだけに「江南スタイル」でブレイクしたPSYの二番煎じを狙う韓国人アーティストだとばかり思っていた。

上の二曲でも明らかだがかなり曲調に振り幅があるのも面白い。特に同郷のくるり調の「鴨川等間隔」「手元不如意」はなにも知らずに見たら「工夫がないボッチの独りよがり」風なのだが、よく聴くと「見下ろしながら見下されてる」「あいつはいいや→あいつはいいな」など僅かな違いでまるで意味合いが異なる日本語の面白さをずばり射抜いていて、爽快だし凄味も感じる。

京都サバービア在住で地元に愛着を持ち、日常をオープンにしながらユーモアと反骨をまぜ込み凝った曲を作るあたり、halfbyとの近似性を感じたがなにかそういう土壌があるのだろうか。

最近井上章一の「京都ぎらい」を読んだので、その影響で個人的に関連性を見出したいだけかもしれないが。そういえば、彼のツイートでくるりの岸田氏に住んでいる場所について特定されるほど細かく聞かれて「警察か!」とおどけていたが、これなど洛中による洛外へのマウンティングの好例のようにも思えて苦い笑いがこみ上げた。

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今のところ一人っ子で育った気質が良いように出ていると思うが、自分の世界に没頭しすぎるあまり視野狭窄に陥り他人からの理解が得られにくいという諸刃の刃を抱えているかと思うので、その辺りをうまくコントロールしてくれるパートナーと出会って、ニヤリとヒヤリが同居するようなキックのある曲を引き続き聴かせて欲しい。

また、今までは世に出たアーティストの作風を下敷きにして精巧なイミテーションを作ることに長けていたゆえ、自分らしさの開拓を怠っていたように思えるので、そのあたりがどのように醸成されていくのか、注目していきたい。

2016年10月 1日 (土)

tweedees!

沖井礼二の曲は時々聞きたくなる誘引力があるが、最近は聞いているとロリコンに思われてしまうようなアイドルたちへの曲提供が多く、youtubeで聞く度にどこか後ろめたさがあった。

そんなある日、「あなたへのおすすめ」として上がってきたMVをクリックしてみたら、久々に胸を射抜かれたような素晴らしい曲が流れてきて衝撃を受けた。しばらくウォッチをしていない内に沖井氏は新たなバンド「tweedees」を結成していたのだった。

”ツイードの者たち”と名乗るだけあって、そこはかとなく漂う英国や欧州の雰囲気がアラフォーの自分に心地よく、チューブラーベルを使うあたりにピチカートファイヴの残り香も感じられて、一時期は暇さえあれば聴くようになった。相方の清浦夏実はそのビジュアルイメージがデビュー当時のコーネリアス風にも見えたが、コロンビアレコードに渋谷系の残党でもいるのだろうか。
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丁度セカンドアルバムを発売するタイミングだったので、インストアライブにも足を運んでみた。清浦嬢はヘタすると親子ほど離れている沖井氏を上手に転がして微笑ましい凸凹感を醸し出していたし、甘すぎず太すぎず囁き過ぎない声が素直に耳に入ってきてとてもいい。
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ファーストアルバムでは前出の「KLING!KLANG!」に加え「月とテーブルクロスの女王」を良く聴いた。清浦嬢の甘ったるい歌詞をどう引き締まった味わいの曲に昇華するか、沖井氏の工夫が随所に見られるし、その結果歌詞と曲のベクトルの相反ががいい意味でのコントラストを生んでいて不思議な魅力に溢れている。

セカンドアルバムでは「PHILIPS」だろう。ゲストボーカルのイックバルは日本のAORにインスパイアされた楽曲を作っているとのことだが、この曲はその雰囲気を濃厚に伝えながら蜘蛛の同居人フィリップを描写していて、歌詞の日常感と曲の艶っぽさのギャップが奇妙な、それでいて不思議な心地よさを与えてくれる。歌詞の世界観はシンバルズの「egg」、AメロはFPMの「city light」の出だしに親和性を感じる。

ネットでは「沖井節に欠ける」との評もあったようだが(たぶん声優やアイドルの曲から聞き始めた層によるものだと思われるが)制作時点における音楽の真善美を追及しようとする沖井氏の姿勢にブレは無く感じられ、「シンバルズを忘れさせてあげる」と健気にも宣言した清浦嬢の心意気に応えている出来栄えだったと思う。

二人なら新たな水平を開くことが出来ると期待している。
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(画像はすべてネットから引用)


2016年9月20日 (火)

(食)越南

蒲田のthithiは孤独のグルメに出て以来、大変な人気店になってしまってベトナム料理を食べたいなと思い立って電話しても予約がほとんどとれないようになってしまった。そこでその代替として(元々thithiもミ・レイの代替だったのだが・・・)武蔵新城の越南に行った。一度食べに行った時はスペアリブが美味しかったので良い印象があったが、今回は宜しくなかった。

夫婦二人でやっているので、客で混み合っていたこの日は最初の生春巻きが出てくるまで25分ほどかかった。しかもハーブ類がほとんど入っていないので、味わいにパンチがない。定番の青パパイヤのサラダも今日はないと言う。隣席は店の子供が陣取っていたが、親が忙しくて厨房に入ったきりなので傍若無人に大声で暴れまわる。ふーむ・・・前は小さくてかわいらしく見送りをしてくれたのだが。

その後出てきたブンもやっつけ感たっぷりだったのであきらめてかっこんで店を後にした。ご近所の人が空いているのを見計らっていく店で、わざわざ足を運ぶ店ではないと感じた。

(食)越南ベトナム料理 / 武蔵新城駅
夜総合点★★☆☆☆ 2.7

2016年9月15日 (木)

梅菜っぽいものを作って食べる

テレビでコウ・ケンテツ氏が台湾を旅していたら、客家料理を教わっていて、そこに香港などで食べたことのある梅菜が出てきた。高菜のような葉を塩漬けして乳酸発酵させたものだということを知り(それで酸っぱくなるので梅菜というそうだ)、それではぬか床に小松菜を入れて放っておけば似たようなものが出来るのでは・・・と思って試してみたら、1か月ほどであめ色になったそれが出来た。
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台湾の人がしているように、これを細かく刻んで豚のばら肉と一緒に八角も入れて甘辛く煮たら梅菜扣肉に近いものが出来上がった。梅菜の穏やかな酸味が甘さと脂のくどさを矯めてくれてとても美味しい。このときは生憎紹興酒を切らしていたが、次は是非ちびりちびりやりながら、これを摘まんで魯迅にでもなった気分を味わってみたい。

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2016年9月10日 (土)

フロランタンみたいなケーキとじゃこ天

商品名に惹かれて買うということは殆ど無い性格なのだが、この「フロランタンみたいなケーキ」はその微妙なネーミングを一体どうやって社内稟議で通したのだろう・・・という興味とともに手に取ってしまった。食べてみると、表面のアーモンドのキャラメル部分は程よく香ばしく、ケーキ部分はしっとりとしていて非常に美味しい。これだけのものを「みたいな」と名付けるPASCOの肝の据わった感じはなかなかこのましく思う。確かにこれは表面は「フロランタンみたいな」のだが、土台部分は「ケーキ」なのだ。嘘はない。そこがいい。
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それからこのじゃこ天もなんだか買ってしまう一品。八幡浜で作られている本格派で、妙なうまみ調味料の味はせず小魚の自然な味わいがして美味しい。オーブントースターで炙って朝食に、ビールのアテに、すりおろしたしょうがと食べれば日本酒にもよく合う。三枚入って100円しないというのも心強い。
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2016年8月31日 (水)

品川区民が見たシン・ゴジラ

シン・ゴジラは当初全く興味が無かったが、政治群像劇と聞き、また洋光台、釜利谷、武蔵小杉と個人的にゆかりの深い街が出てくるとのことだったので、襲ってくる恐怖を実感できる二子玉川の109シネマで見ることにした。

 

もちろんとても楽しめたのだが、よく言えばセルフオマージュの多様、悪く言えば「庵野さん、変わんないな~」という印象だった。ラーメンのチャーシュー抜きやヤシオリ作戦の指揮台、尾頭女史の最後の微笑み、ラミエルを思わせるゴジラ背面からの全方位光線など、それと思わせるものが多用されていて、普通なら陳腐だとか手抜きだとか言われそうだが、なぜかニヤリとさせられて嫌な気がしない。この辺の匙加減が庵野監督の持ち味なのかもしれない。

 

結局彼の興味・手法の範囲は限定されていて、何度もそれの繰り返しをやっているだけなはずなのに、どういう訳か引き込まれてしまう。震災の映像を嫌という程見せられた我々にとっては、そこを下敷きにしたストーリーは既にリアリティの根幹が植え付けられているだけあって、多少の飛躍も納得させられてしまう。それはまさに初代ゴジラが先の大戦のリアリティが植え付けられている人々に大いに恐怖を与えた図式と一緒なのだろう。この辺の勘所は流石という他ない。
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(↑ゲリラ豪雨すらゴジラによる汚染地域に見えてしまう始末)

品川区民としてはゴジラの侵攻ルートにも大いに興味を持った。というのも旗の台にある錦湯前からの遠望でゴジラがマンションを倒壊させる画面が映ったからだ。

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(写真はネットから引用)
一般にゴジラは蒲田上陸後、京急線沿いを北上したと言われているが、劇中の放射能汚染マップでは大岡山近辺が汚染区域として映っていた。先の錦湯前の道は大岡山の東工大まで一直線に繋がっているから、実は大岡山に襲来というストーリーも伏線としてはあったのかなと推察された。
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東工大は原発推進の一角を担っていたものであり、また近隣は洗足など戦後のエスタブリッシュメントが住み暮らす住宅街だ。既存権威の破壊というメタファーが込められているようにも思うが、どうだろうか。東京中心三区を火の海にし、多摩川を渡って田園調布界隈を踏み壊し、バブル経済の泡沫を象徴するように疲弊しきったニュータウンである桂台や上郷を薙ぎ倒していったゴジラを描いたのだから、あながち外れた推測ではないと思っている。
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(↑桂台付近を破壊するゴジラ。ネットから引用)

もちろん鷺巣さんの音楽は堪らないものがあったし、熾り火が透けて見えるゴジラの身体は溶け落ちた燃料デブリを想起させるものだったし、MM9に出ていた松尾諭と高橋一生の使い方は見事だったし・・・と語るに尽きない。
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(ネットから引用)

いずれにしろ、久々に迫力と多層的な解釈を与えてくれる邦画に出会えて喜ばしい限りだ。

2016年8月 5日 (金)

平井のホットケーキと和菓子

【ワンモア】

上野から乗ったバスは浅草の言問橋を通ってスカイツリーの麓を横切り、親水公園や巨大な煙突の清掃工場、それに江戸切子を作っているだろうガラス工場など下町らしい風景を抜けて平井駅に着いた。

ロータリーから少し行くと目当ての喫茶店「ワンモア」が見えてきた。ごくありふれた街の喫茶店だったが、このところ名が売れて有名人のサインがいくつか飾られていた。常連には「ようやく落ち着いてきたから、お母さんにそう言っといて。」などと話していたので、我々のように遠くから来る客で嬉しい悲鳴をあげるような日々が続いていたようだ。

今日は混むこともなくのんびりとした空気が漂っていて、テーブルに運ばれてきたホットケーキの甘やかな香りが鼻をくすぐり、平穏で幸せなひと時を迎えることが出来た。過剰に厚くなく、かといって薄くて心もとないこともなく、ざっかけない様子のそれはしっとりとしながらふかふかで、なるほど旨い。小ぶりだからおやつに丁度いい感じだと思われた。

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【林家】
平井の駅の南側の商店街はなかなか賑わっていて、その中にある和菓子の「林家」は店頭にいろいろな菓子がずらりと並び、入口横のガラス張りのショーケースにもあれこれと陳列してあって、全体に活気が感じられた。中に入ると上生菓子も何種か揃っていて、桔梗と杏玉が季節を感じさせたのでそれを頂くことにした。

店はかなりのご高齢と見えるご婦人が一人で取り仕切っていたがその接遇のまろやかなこと、耳がくすぐったくなるくらいで、下町の和菓子屋とは思えぬ品の良さを感じた。上記二品はその雰囲気にたがわず丁寧な作りと淡い甘みが良く、冷たい緑茶によく合った。


菓子のうまさだけでなく、いくつになっても一所懸命に仕事に打ち込む人というのは得も言えぬ気品を纏うものだと知らしめてくれる良店だと思う。
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ワンモア喫茶店 / 平井駅東あずま駅)  
昼総合点★★★☆☆ 3.5

林家和菓子 / 平井駅
昼総合点★★★☆☆ 3.6

2016年8月 1日 (月)

不忍池の蓮

休みにどこに行こうかと家人と相談したところ、私は盛りを迎えた蓮が見たいと思い、妻は斯界で著名なホット―ケーキを食べに平井に行きたいという。調べたら上手い具合に上野から平井へ行くバスがあったので、それを利用して両方回ることにした。

不忍池の蓮は年々有名になってきているようで、数年前に足を運んだ際より人出が増えており、また蓮を見渡せるように池の中に遊歩道が作られたりしていた。この遊歩道のお蔭で一面是蓮という素敵な時を過ごせるようになっていて、海外からの観光客も嘆息を洩らす。ハノイにも杭州にも引けを取らぬ見事な景色で、川瀬巴水に版画に仕上げてもらいたいとも思った。
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2016年7月15日 (金)

ランチマネー・ルイスのbills

深夜の「内村てらす」は自分にピントが合っていて楽しみな番組だが、その出囃子が耳にとても残るので調べてみたら「ランチマネー・ルイス」の「bills」という曲だった。(ランチマネー・ルイスというのは日本語で言えば”昼飯代健太”くらいのところか)

黒人のラッパー風なので「世の中、札束(bills)だぜ!」みたいな歌詞かと思ったら「請求書(bills)がたんまりやってくるので働き続けなきゃなんない…」という侘しい内容だったので心惹かれた。

歌っている本人は恰幅がよくチャーミングな顔をしているので、そういう悲壮感は漂ってこないが、MVを見ていくと稼ぐためになんでもやる男の頑張りが垣間見えてどこか微笑ましくも哀しみを誘う。「実際、アメリカの低所得者層はこんな生活なのかもしれないな」と思うとやるせない感もあったが、曲調や映像が「泣くが嫌さで笑って候」という風情なので、深刻な同情というより「この人生、大変ダヨナ」といシンパシーに似た思いを抱いた。

そしてドタバタと生きていく悲哀という共通点でビートルズの「lady Madonna」を思い出して、いくら人の世が変わっても悩みは同じようなものなのだなという思いに至り、いくらか安心した。

2016年7月13日 (水)

徳太楼

こちらが和菓子を好むようになったのを家人が覚えてくれるようになり、あちこちでかけた際には土産として買ってきてくれるようになって大変ありがたく思う。こちらの徳太楼も、知人との会食に行きがてら土産に買ってきてくれたものだ。

夏らしく涼やかな「豆錦玉」は小豆と鶯豆が川底の石という見立て。鶯豆で苔むす石を表しているのがなんとも心憎い演出だ。この種のものにしては、寒天がぼろぼろと崩れることなく食べやすかったし、何より季節を勘案して甘さが抑えらえており、舌がだるくならないのがありがたい。冷やした麦茶と一緒に食べたが、身体に涼風がそよいで気持ちが良かった。
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徳太樓和菓子 / 浅草駅(つくばEXP)浅草駅(東武・都営・メトロ)田原町駅)  
昼総合点★★★☆☆ 3.5

2016年7月11日 (月)

ささま

昨年ぐらいから和菓子に惑溺し始めていて、図書館で本を借りてきて季節ごとに茶会で出される上生菓子の写真を愛でては嘆息していたが、その内「これは・・・」と思う菓子がいずれも「ささま」という店で作られていることに気づいた。店は駿河台下にあるというが、見当がつかない。偶々神保町シアターに行った時に思い出して、交差点近辺を歩いていたらひっそりとした和の店構えが見えてきて、はたしてそれが「ささま」だった。

季節は師走にさしかかっており、生菓子は「冬菊」と「薄氷」を買ったのだが、そのいずれもが精妙な美しさを湛えていていて「ふうむ・・・」とやはり嘆息が洩れた。

「薄氷」は個人的に思い出深い円山応挙の「氷図」に着想を得たであろうと推察されて、尚の事気持ちが昂った。味わいも甘みが軽やかで、丁寧に低温で淹れた緑茶の旨味と反響し合って大変おいしいものだった。
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↓こちらが応挙の氷図(ネットから引用)
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なかなか行く機会がないが、東京にあってこれだけの上生菓子を手に入れられる店はそうはないと思われるので、機会を見て足を運びたいと思う。

御菓子処 さゝま和菓子 / 神保町駅新御茶ノ水駅小川町駅)  
昼総合点★★★☆☆ 3.8

2016年7月 9日 (土)

風林堂

返す返すも残念なのは洗足池近くの「あかつき」が店を閉めてしまったことだ。そうなってみると急に和菓子が食べたいと思い立っていく店がないことに気づき、近隣を探したところこちらに行きついた。駅からは遠いが、坂上の洗足あたりのお得意様の贔屓もあってか、立地の割には立派でイキイキとした店構えで少しほっとする。

季節の生菓子を買ったところ、先客があって少し待たせたのをわびて、名物の鼓餅をおまけで入れてくれた。八十を過ぎてなお店先に立つ女将さんの人柄と商売人としての心意気も店を継続させている原動力なのかもしれない。

淡い色彩の生菓子はしっとりした餡の具合と仄かに舌に伸びていく品の良い甘さがとても良かった。後日買い求めたみたらし団子も、いい具合の甘じょっぱさとみっちりとした餅の粘りが調和していて後を引く味わいで嬉しくなった。今後とも季節ごとに足を運びたいと思う。
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風林堂和菓子 / 西小山駅洗足駅)  
昼総合点★★★☆☆ 3.6

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