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2010年1月20日 (水)

00年代のまとめ(2)

食事と旅行編。
【一皿】
・御弁当/あと村(内幸町)
京料理の粋が折の中で見事に結晶。
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・八重山そば/来夏世(石垣島)
あの青い空のような清澄な出汁と店を吹き抜ける風。
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・牛ランプ肉のロースト/北島亭(四谷)
薄桃色に輝く肉の断面、奔出する肉汁の官能的なこと。

・鳩のロースト/金山海鮮酒家(香港)
肉の旨味の凝縮感と皮の香ばしさの相乗効果が堪らない。
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【料理店】
・余志屋(先斗町)
活気あふれる板場から供される馳走の数々とご主人のお人柄に惹かれて、京都行の際には必ず入れたい店。レシピ本も自宅で活躍している。

・近松(薬院)
ただでさえ質の高い九州の魚に磨きをかけて、工芸品のような逸品に仕上げる。店内の雰囲気もあって、ご主人の寿司の個展に足を運んだような心持になる。

・のがみ(四谷三丁目)
実直なご主人のお人柄と女将さんの朗らかな接客が見事に寛げる空間を作っている。手をかけた良い素材の寿司を納得の価格で頂ける良店。

【閉店・物故】
・松風(浅草)
70年続いた名酒場にも終わりの時はやってきた。生まれて初めて通って馴染みになった店だけに惜別の情はひとしおだった。注文を通す独特の声色とぬる燗の「田酒」の味は忘れない。
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・とら寿司(長崎)
初めて行った時に食べた鯵の見事な歯応えと口中に広がっていく風味が忘れられない。美しく枯れたご主人の佇まいも味わい深かった。
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・よつやこくている(荒木町)の先代
にこにこと笑いながら豪快にシェーカーを振る姿がついこの間のように思える。ご子息が継がれて店は大繁盛だから、どうか安らかにお眠りください。

【菓子】
・山椒あられ/船はし屋(三条大橋)
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・水羊羹/甘泉堂(祇園)
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・Pロール/B-speak(湯布院)

・ブラックサンダー


【旅行】
・竹富島(2004年・2006年
この島の1泊2食5,000円の宿に泊ってから旅行のスタイルが変わった。高い旅館、豪勢な食事、場に合わせた服装・・・そうした気取った旅をするのがつまらなく感じるようになった。宿の皆で夕日を眺め、酒盛りをし、流れ星を桟橋に横たわって数える。そんなささやかなことがいつまでも記憶に残る。それが旅なんだと教えてくれた場所。
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・鳴子(2009年)
温泉に対する考え方を変えてくれた。色・臭い・肌ざわり・浴感がこうも違うのかと短い滞在で思い知らされた。湯守をされている方々の素朴ながら温かい接遇も心に残る。
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・バイブリー(2002年)
「英国一美しい村」はとても静かで、自然と歩みがゆったりしたものになった。情報が少なく、イギリスのサイトをさまよって行き方を探し出したのも良い思い出。午後の日差しが眩しいスワンホテルのテラスで呑んだバス・ペールエールは長く記憶に残る一杯。
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・ポジターノ(2002年)
海岸まで急峻な崖が迫っていて、そこに張り付くように色とりどりの家が連なっている風景。憧れていたイタリアがそこにあることに軽い感動を覚えた。海を眺める最上階のスイートでのシエスタは最高の贅沢だった。コーヴォ・ディ・サラチェーニで食べたアクアパッツァも素晴らしかった。
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2007年1月 6日 (土)

訪問店備忘録(12月)

【蟹工船】東京・有楽町 ★★+

義父の還暦祝いに訪問。雰囲気は確かに良いと思われるが、如何せん高い。肝腎の蟹も、刺身やメインの蟹シャブでは身に熱が入っていないので、甘みや旨味を存分に味わうとまではいかず、これは見栄え優先の料理であることを悟った。余程のことがなければ再訪はないだろう。

【鮨与志】東京・秋葉原 ★★★+

ラオックスのコン館地下という厳しい立地ながら、気軽にお値打ちな鮨が頂けるので結構足を運んでいる。今回はランチに伺ったが、松ちらしが1,000円で頂けるとのことで、それをお願いする。美味しいと定評のある鮪の赤身、中トロが盛り込まれた上に小肌や煮帆立など手間を施した素材も入り、更に奈良漬や蒲鉾といった名脇役も揃っていて、これぞ本筋のちらしといった観がある。海老殻でだしをとった味噌汁も文句なく、これで1,000円というのは嬉しい限り。Cimg1230

【つばめグリル】横浜・横浜駅 ★★★

へそ曲がりな性格なので、牡蠣が大騒ぎになっていた頃合に牡蠣フライが食べたくなって、どこに行くか迷ったのだが、ここならあるだろうと思って行ったら、果してあったのでほっとした。何故だか牡蠣は値段設定が高いと常々思っているが、そんなところで拘泥していては始まらないので、ここは一つ素直になって牡蠣フライと黒ビールをお願いする。

つばめグリルはどこの店に行っても味・接客とも安定していて落ち着く。ついでに内装もコージーな点で統一感があり、この点も好ましいと思っている。牡蠣フライはザクッとかぶりつくと、ぶるるんと身の震えを感じる良い出来のものだった。マヨネーズの酸味の具合も丁度良く、黒ビールが進んで困った。Cimg1232

【THITHI】東京・蒲田 ★★★+

ベトナム料理といえば、「ミ・レイ」が都下随一の名店と謳われているが、如何せん予約も取りにくい人気店となって久しく、突発的に湧き上がってくる「越南病」を処置するには適さなくなっていたところ、近くに親戚がやっている店があるとの情報を得てから此の方、発病した際にはこちらに足を運ぶことになっている。

生春巻き、青パパイヤのサラダ、ブンティットヌン、ブンボーフエetc、どれもミ・レイに遜色はない。内装が素っ気無いきらいもあるが、自分は実質本位を旨とするし、何よりたらふく食べても安く上がるところが嬉しい。旨いバインミーティットを土産にしてもらって、翌朝にかぶりつくのもこの店に行く楽しみの一つになっている。Cimg1233

2006年12月12日 (火)

訪問店備忘録(11月)

11月はあまり出歩かなかったので、1軒のみ。

わかな】横浜・関内 ★★★+

子供の頃は鰻屋でうなぎを食べることなど想像も出来なかったが、稼ぐようになった今では鰻屋でしか食べなくなった。(偉くなったものだ、と自嘲気味に思うが。)あちらこちら色々な店を試してみたが、この数年こちらの鰻が美味しいとおもうようになって、横浜に出かけた際には足を向ける店の一つになった。

甘だるいタレが苦手なので、こちらのキリッとしたタレの仕上がりは小気味良くって好きだ。鰻自身もみっしりとした脂乗りではなく、あっさりと肌理細やかな風味で、その点も好ましい。加えて固めに炊かれた飯、丼で供されて食べやすい点も良い。かなりの量であるのも頼もしく、未だ食い気の盛んな自分にとってはありがたい。

こう書き上げてみると、随分とこの店が好きである自分に気が付いた。ひょいと行ける距離にないのが惜しいが、奢った気分を高めつつ、店に向かう気持ちを忘れてはならないと思うので、これぐらいの関係が良いのかもしれない。Cimg1194

2006年12月 5日 (火)

讃岐うどん巡礼’06(3)

うどん巡礼以外の記録を少々。

【津田】高松・瓦町★★★★

巡礼の夜は必ずこちらに伺う。かれこれ8年通ったことになる。年に一回しか行けないけれど、行けば何くれとなく美味しいものを出してもらえるのがありがたい。今回も香箱蟹、明石の鯛、焼穴子、揚げだし豆腐等々をご主人の快活な喋りとともに楽しんだ。料理の後半には、市場で売っていたというあこや貝から真珠を取り出してのプレゼントがあって吃驚。来年店を大きくされるとのこと、益々のご繁盛をお祈りする。Cimg1210

【銀座サロン】高松・兵庫町★★+

「津田」の後、ホテルへの帰りに立ち寄った。小奇麗な店構えで、昼はカフェ、夜はバーとして営業しているようだ。「地鶏のタルタル」とジントニックを頼んだのだが、地鶏は「タルタルステーキ」ではなく、「唐揚のタルタルソース」だったのが予想外だったけれども、酸味が利いていて案外サクサクと腹に収まったので結果的には良かった。高松にあっては雰囲気を楽しめる希少な店だと思う。Cimg1211

【サイレント・スミス】高松・古馬場町★★★

口開けの店として立ち寄った。煌々と明るい商店街のアーケード内にあるのだが、一歩中に入れば通りのざわめきとは隔絶されて、薄暗闇の店内で心を落ち着かせることができる。カウンターやバックバーにはモルトやラムは勿論のこと、アブサンやグラッパ、黒糖焼酎と種々雑多な酒が並んでいて、酒への探究心を忘れない客にとっては好都合だろう。バーテンダー氏も興味深くボトルのラベルを覗き込めば、厭味なく自然に説明をしてくれるし、周辺の店に関する情報も豊富だし、遠来の一見客としては大いに助かった。更に言えば、出勤前のホステスが独りビールで景気づけする様子も見れたりして、それが違和感を感じさせないあたり、中々に興味深い店だ。Cimg1209

【心惹かれる讃岐の風景】

「彦江」近くの路地に干された大根。Cimg1199

ガレージを流用した「兵郷」の客席。Cimg1201

うらぶれた屋島の頂上でそぼ立つ犬。Cimg1204

曇天鈍色の瀬戸内海。Cimg1206

何故にくぐって参拝するのか。

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製麺所の面目躍如。Cimg1223

地産地消の現場。Cimg1226

讃岐うどん巡礼’06(2)

【池上】★★★+

一昨年に初めて行った時にはおよそ150Mもの行列が出来ていて、麺にありつくのに40分はかかったが、今回は用心して早めの時間にしたからか、待ち時間ゼロで入れてしまい拍子抜けした。悪いことではないのだが。

「るみばあちゃん」は流石に歳相応になったのか、ちんまりと静かに座って注文聞きとお勘定場の仕事に専念していて、以前のように手下の若い者やおばちゃん連に大音声で指図することは無かった。あの生命力溢れる存在感もここのうどんの風味の一助だと思っていたから、ここでも拍子抜けした。少し物哀しいものではあったが。

そんな感傷などに関係なく、うどんは上出来だった。茹で上がったばかりの熱々の麺を卵に乗っかぶせるように混ぜ込んで、白濁した白身と一緒に口に放り込むと、後から後から麺が喉に殺到してくる。この直線的な突破力がここの麺の身上だ。だが、増すばかりのその力強さがばあちゃんの音量と反比例していて、やっぱり寂しい。我々客は麺を介してばあちゃんの精気を掠め取っているのではないか、という暗然とした気持ちがもたげたが、そんなら本望だね、とばあちゃんが軽く笑った気がして、少し救われた気持ちになって店を後にした。Cimg1218

【田村神社】★★+

神社の境内でこじんまりとした日曜市が開かれていて、それに集まる参詣客に振る舞われるうどん。社務所にその日だけ開かれるのだから、麺は近所の製麺所から運んできた作り置きだし、味はいたって平凡だ。東京でも食べられる。

だけれども、かしましいおばちゃん達の楽しげな笑い声や、一点を凝視したまま微動だにしない天ぷら売りの老爺の枯れた風合いが心にしっくり馴染んで、この場を離れがたい気持ちになる。こういう味わいは決して東京にはない。来て良かったと思う。Cimg1219

【谷川製麺所】★★+

冬になると近所で取れた猪の肉やら狸の肉やらが入ったしっぽくうどんが食べられるというので足を運んだ。かなり僻地にあるけれども、客は多い。昼時にさしかかっていたこともあるかもしれないが一寸驚く。

しっぽくの汁を自分ですくってうどんにかけまわすのだが、具は底に沈んでいるので、玉じゃくしでそおっと底をさらって、浮かんだところを上手く掬ってこなければならない。鍋底までの視界ゼロ、順番待ちの客の無言の重圧に抗しながら、である。私は上手いことやり抜けて写真のようにたんまりと具にありついたが、家人はいかにも貧相な具合だったので、いくらか分けてやる。しかし、結果はそれが正解だったようで、味がしみこんだ実は思った以上に塩辛く、程々の量で丁度良い加減になる。なるほど、夫婦とは上手く出来ているものだ、と思いつつ麺を啜る。少し出汁に負け加減かなとも思うが、あまりのたくるような麺では具や汁が飛び散って収拾がつかなくなるだろうから、これが現実的な線なのだろうと思う。Cimg1224

【もり家】★★★★

最後は近時評判の高いこちらへ。空港からも近く、〆にはもってこいの立地だ。となれば混み合うのは必定で、寒風吹く中二十分ほど外で待って店内へ。天ぷらが良いと聞いていたので、冷天ぶっかけをまず頼み、しばしの別れの名残を惜しむべく、しょうゆうどんも頼む。

まずしょうゆうどんが来たのでそちらから取りかかる。やや太目の麺は思った以上にしなやかで喉越しが心地よい。これは良いやと思っているうちに冷天ぶっかけが来る。揚げたての海老天とちくわ天が堂々鎮座している。評判どおりさっくりした衣を纏っていて、うどんのむっちりとした食感と良いコントラストだ。さくっ、じゅどぅどぅどぅぅを繰り返しているうちに瞬く間に平らげてしまった。これは良い店を知ってしまった。Cimg1225

新しい店も大分開拓できたし、今までの店も変わらずに旨かったし、存分にうどんを堪能した巡礼だった。

2006年12月 4日 (月)

讃岐うどん巡礼’06(1)

今年もうどんを食べることを主目的として讃岐の地に向かった。映画の影響で人気の頂点を迎えているかと思いきや、意外に人出は少なく、もうそろそろ数年来の熱狂はおさまってきた感があった。しかし個人的には一向にそんな気配はなく、今回も2日で9軒、計11杯のうどんが胃の腑に滑り込んでいき、結果3Kgも肥えて帰京と相成った。まずは1日目の記録から。

【長田】★★★+

釜揚げの名店として早くから知られていたこの店も、3年ほど前に職人の独立(現:長田in香のか)で窮地に立たされ、ここのところやっと本来の力を取り戻しつつある、という話を聞いていたので久方ぶりに訪問する。雨がそぼ降るとは言え、土曜日の11時に客は我々という以前では信じがたい状況に一瞬たじろいだが、運ばれてきた麺を見て安心した。ぞくっとするような艶のある麺。惚れ惚れする。Cimg1196

冷やしを釜揚げの出汁で食べたが、むっちりとした麺にいりこの勝った出汁がじんわりと染みて旨い。まろやかな風味が堪能できるので、この食べ方がこの店では一番好きだ。色々あったのだろうが、これなら当面大丈夫だと安心する。

【日の出製麺所】★★★

毎日僅か1時間しか食べることが出来ないという希少価値のせいか、最近は随分と人気があるとのことで初めて足を運ぶ。久方ぶりに「釜たま」を試してみたが、渾然となった卵と麺がするっと入ってくるのに合わせて醤油の香りも口に広がって、淡い余韻がなかなかに旨い。釜揚げだけに麺の輪郭はぼやけてはいたけれども、芯のうねりは感じられたので、水で締めたピンピンのものを食べたらさぞや良いだろうなと思う。Cimg1197

【彦江】★★★+

毎回必ず立ち寄る店。静かな細い路地の先に何のかざりもなく店があって、近所の方がうどん玉を器に入れて持ち帰る様子が今でも当たり前の風景として見られる。商売っ気が薄く、来る客もどこかひっそりとしていて、この地の日常に自分も潜り込んだ気になれるところに魅かれている。もちろん麺は旨い。以前に比べてしなやかさが心持減ったかなとも思われたが、それは昨年店の前まで来て食べられなかったことが影響しているのだろう。Cimg1198

【兵郷】★★★

こちらも以前は普通の民家であっただろうと想像される佇まい。親類一同総出で切り盛りしている感じが伝わってきて、なんだか嬉しい気持ちになる。寒さがこたえそうな元ガレージでの一食なので、かけを頼む。1杯120円也。くどみのない控えめないりこ出汁がじんわりと胃に沁みる。細めの麺もするすると喉を通る。じきに体全体が温まってくる。近所にこういう店があって欲しいと思わせる、素朴でけれんみのない一杯だった。Cimg1200

【讃岐の里】★★★★+

最も愛してやまない店。いつ行っても確実に旨い麺が待っていてくれる心強さといったらない。麺は弾力に富んで、しかもその表面は研ぎ澄ましたように滑らか。玉の肌を持つ美女、という喩えがあるが、それを己の舌で味わえる機会がここにはある。しかも僅か数百円で、である。妖艶この上ない麺の柳腰に唇を撫でつけ、舌をからませては飲み下し、忘我陶然、気付けばぶっかけとしょうゆの二杯を味わい尽くした。素晴らしいの一語に尽きる。Cimg1202

2006年11月24日 (金)

東京饂飩巡礼(1)

来週末、毎年恒例の讃岐うどん巡礼の旅に出かける。その準備を進めているうちに、うどん熱が高まってどうしようもなくなった。結果、胃袋の求めるままに東京のうどんを食べ歩いたので、その記録をしておく。まずは武蔵野うどんから。

【とき】東京・東村山★★★

そもそも武蔵野うどんの存在を知ったのは、サワサキヨシヒロ!氏のブログだった。地粉を使った素朴な風合いが持ち味であるというのに加え、武蔵野の原風景に触れることが出来るという点に魅力を感じた。

その氏がお勧めしている店を3つばかり巡ろうとまず降り立ったのは東村山。高田馬場から30分程度と意外に近い。まずは斯界では知られた店であるという「とき」に向かう。

駅からほんの5分歩いたところにあるのだが、近くに小川が流れているし、畑には立派な大根が実っているし、のんびりとした空気が流れていて、実に気分が良い。目当ての店は通りから少し入ったところにあって、看板はあるのだが、最早その機能を失っていた。この感じが讃岐を髣髴とさせて、なんだか嬉しくなる。Cimg1178

店に入ると三つ並んだ大きな釜が出迎えてくれる。頼もしいことこの上なく、これはなかなかに良さそうだ。早速、武蔵野うどんの定番と聞いている「肉つけうどん」をお願いする。Cimg1176

思ったよりも短時間で茹で上がったうどんが供される。麺は確かに薄褐色で、土の香りが立ち上ってくる錯覚を覚える。などと感想を述べる間もなく、箸でぐいと捕まえて、麺を口に放る。ぐっぐっと力をこめて噛みしめる。想像以上の麺の豪勢に驚いた。噛むことを拒むかの如きコシ。しかし、慣れればこの噛み応えが心地よい。更には、つけ汁の葱の甘みと豚肉の脂のコク味が麺に負けず、野趣溢れる風味を添えるので、食べ飽きることがない。入門編としては実に旨い麺にありつけた。Cimg1177

【たかはし】東京・花小金井

次に目指したのは畑の中の一軒屋でうどんを食べさせてくれるというこちら。風趣溢れる中での一杯はさぞ旨かろうと期待して向かう。道中、畑の一本道を通り、出荷前のパンジーの群れを抜ける。無人の野菜販売所もあちこちにあり、山手線の雑踏から僅か30分の所にこんなに伸びやかな心持の人々が住んでいることに驚く。Cimg1179 Cimg1181

驚きはこれにとどまらない。目指す「たかはし」は休業日だった。不定休とは聞いていたが、ここまでの道程で気持ちが高まっていたので、失望感は一層だ。しかし、致し方ない。捲土重来を期す。Cimg1182_1

【茂七】東京・東大和市 ★★★

何故だか複雑に入り組んでいる西武鉄道を乗りこなして、「剛勇無比なる麺」と誉れの高いこちらに向かう。ごくありふれた小体な店構えで、知らなければまず入ることはないだろう。少し外れた時分となっていたので、すんなりと席につく事が出来た。メニューはもりうどんと肉つけうどんのみ。こういう店は頼もしい。麺に敢然と挑むべく、もりうどんをお願いする。Cimg1183

出てきた麺がこれ。何たる偉丈夫。奮然として取りかかる。そう、取りかかるという心持だ。麺を口に入れると、淡い芳ばしさがほんのりと漂って、地粉の香りを確かに感じる。しかし甘美な瞬間はこのときばかりで、あとはのたくる麺を押さえつけては噛みしめるのに必死だ。むっちりとした噛み応えが堪らない。こちらの麺はパン好きの方にも試していただきたい。小麦の旨さに通底するものがあると思う。

かくして武蔵野うどんに心を奪われてしまった。本格的に寒くなる前に、晩秋の武蔵野の風情を楽しみながら、あちらこちらもう少し巡ってみたい。

【根の津】東京・根津 ★★★

そうは言っても武蔵野うどんを食べに行くのは遠い。高ぶるうどん熱を抑えるべく、意外と都心から近い根津に旨い讃岐うどんの店があると知人に聞いて足を運んだ。

小奇麗な店は音楽といい、店員といい、飾られた写真といい、ロコな雰囲気が漂う。暖かいのと冷たいのが同時に楽しめるメニューを頼む。

温かい方から取りかかる。むっちりとした麺が歯に絡みついてくる。細めの麺ながらゆるゆると腰砕けとなっていないのは、丁寧な仕込みのお陰なのだろう。冷たい麺で更に麺の旨さを実感する。ずるるとすすりこむと麺が柔らかく跳ねて、内頬にふるふると触れるのが心地よいし、第一、艶かしい。

麺は東京で食べたどんな讃岐うどんよりも旨い。惜しむらくは出汁と醤油。温かい方は出汁の甘みが強すぎたし、冷たい方は「生醤油」と謳いながら、明らかにだし醤油で、かつ化調が目立つものだった。次回は「生醤油うどん、普通の醤油で」と注文して、存分に麺を堪能したい。Images_1

2006年11月 5日 (日)

訪問店備忘録(10月)

【エリオ・ロカンダ】東京・半蔵門 ★★★

初めて夜に訪問。季節のフレッシュポルチーニのローストが目当てだったが、これは素晴らしい香気と歯ざわりで大満足。それ以外の料理はウェイター氏のお勧めを中心に頼んだが、安定的に美味しいけれども、求めていた南イタリアならではの力強い品にはお目にかかれなかった。値段も相応にかかったので、まぁ納得できるレベルというところか。Cimg1045

【イ・ビスケロ】★★★+ 東京・木場

知人が結婚をするので、彼の新居から近いこちらでフィアンセとともに昼食をとった。前から良い評判を聞いていたが、それに違わず美味しい料理を頂いた。

特にシラスのトマトソースパスタが出色で、シラスのくど味とトマトの酸味が非常に上手く矯めこまれていて、旨味のみが全面に出た、それはそれは美味しいパスタだった。白金豚のローストも火の入り具合が良く、デザートも色々選べて一人3,000円は抜群のCPだ。テーブルチャージやサービス料が無いのも好感が持てる。少し遠いが今度は夜に伺ってみたい。

【よつやこくている】★★★+ 東京・荒木町

もう大分長く通っている店。バーというよりは洋酒酒場という表現がぴたりとくる、この界隈の顔とも言える店だろう。古い設えの店内はやや雑然としているが、星霜を経た木材が所々鈍く輝き、不思議と落ち着く。ご主人の柔らかな笑顔と軽妙な会話が何よりの楽しみだが、簡単なおつまみも安いのにしっかりしている。たこ燻製や烏賊ボールなどは築地に足繁く通って見つけてきたものだそうだが、小腹にぴたりとおさまる良いつまみだ。季節には自家製のラッキョウもあり、これを黒ビールで流し込むのが、晩夏の楽しみの一つである。

ご家族の皆さんで力を合わせて切り盛りしているのも好ましく、これからも末永くお付合いしていきたいお店の一つだ。Cimg1015

2006年10月24日 (火)

2006京都菊花賞観覧記(2)

旅行中食べたあちらこちらを。

山ふく】祇園 ★★★★

京都のお店で最も多く足を運んでいるのがこちら。祇園の真っ只中にあって、小芋、子持鮎煮、温泉卵、鯛の子、焼穴子、菜っ葉煮といったところをちょこちょこと摘んで呑んで、季節の炊き込みを食べて・・・という具合にざっかけなく使えるのが嬉しい。今回はお目当ての松茸ご飯が売り切れだったが、菜っ葉煮がやはり良く、出合いもんの妙を存分に味わった。アルバイトの女の子もきびきび立ち回る子で、女将さんのご機嫌も麗しく、京都第一食としては順調な滑り出し。Cimg1090

【まとの】建仁寺 ★★★

この10月からこちらに移られたばかり。かなり立派な建物を構えられた。場所は四条通から大和大路を下って一つ目の交差点を過ぎて100Mほどいったところ。「きんなべ」さんのお隣だ。Cimg1109

お願いしたコースは以前のお店の3,500円コースとほぼ変わらない内容で4,500円。1,000円アップしたが、北区までの足代と労力を考えれば、我々観光客にとってはほぼ同じコストと言えよう。柿膾の胡麻和えから始まったコースでは、松茸しんじょ椀が最も印象に残った。松茸の香りが出汁の隅々まで行き渡っていて、嘆息を漏らしてしまったし、その嘆息さえ風味を感じる有様だった。Cimg1106

前回食べて大変美味しかったミニクリームコロッケや海老の玄米衣揚げもついていたし、〆にこちらのスペシャリテ「青紫蘇のシャーベット」を食べることもできて、味に関しては大満足。しかし、最後のお勘定で予想を上回るお足だったのがちょっと残念。サービス料その他が入るようになったようだ。不満、まではいかなかったが、あれれ、という気分になったことは付言しておこう。

ホホエミ】荒神口 ★★

「FIGARO」の京都特集に載っていたパンのお店。天然酵母パンが売りのようだが、信州上田の「ルヴァン」で食べたもののような力強さは皆無。鴨川縁に遊びに行く際のおやつを買おうか・・・くらいのお店だと思われる。お店は大繁盛であったが。Cimg1112

せせらぎすへら】三条 ★★

家人からの再三の和菓子処要求を受け、手近なところにあるこちらで「嘯月」さんという有名和菓子店の生菓子を食べられることを知って訪問。正直な感想を申せば、全く感ずるところが無かった。あまりに繊細な味わいすぎて、舌の錬度に欠く私には理解できなかったのかも知れない。Cimg1121

【余志屋】先斗町 ★★★★

久々の訪問。一番楽しみにしていたお店だったが、やはり期待は裏切られなかった。

よこわと蛸の造り、鱧炙り、出汁湯葉、茄子田楽、牡蠣フライ、貝柱と枝豆の釜飯。こう書き出すとなんてことの無い品書きのようになってしまうが、いざ食べてみれば、様々に趣向を凝らしてあって、どれもこれも実に旨い。

今回鱧炙りを初めて食べたが、梅肉たれにたっぷりの山葵を混ぜ込んで食べるこの炙りの旨さといったらない。鱧は淡く口中でとけ、辛味をいい具合に梅に矯めこまれた山葵が最後の味わいをぐっと引き締める。何個でもいけそう・・・とでも表現すれば良いのか。かぼすの酸味と塩でいただく蛸の造りも東京ではお目にかかれない素晴らしいもので、ふるふるとしたやわこい身と爽やかな酸味が得も言われぬ味わい。

いつもはオススメの野菜の湯葉あんかけを食べていたのだが、今回はあっさりと出汁湯葉にしてみた。どこまでも奥行きを感じる出汁の真骨頂が味わえ、軽い歯応えの湯葉も申し分なく、ほっこりとした気分になる逸品だった。

存分に美味しいものを頂き、ご主人をはじめ皆さんがいきいきと立ち振る舞う姿を見て、一生懸命の大切さを改めて感じて店を後にした。食味以外の味わいも楽しめる、素晴らしいお店だ。

いづ重】祇園 ★★★

鯖寿司には目が無い。京都滞在中には朝ご飯用としてこちらの鯖寿司をよく買っている。小さいサイズが朝のお腹に丁度良く、「花折」のような重厚な味わいではなく、昆布の風味を生かしたあっさりした味わいが、これまた朝に丁度良い。今の季節は鯖が良いから、細やかな脂乗りの大層美味しい鯖寿司を頂くことが出来た。

【甘泉堂】祇園 ★★★+

京都のお店の情報で最も参考にしているのは「アスクU」のレビュアー、「黒木志乃」さんであって、その黒木さんがお勧めしていたこちらを通りがかりに思い出して、栗むしようかんを一竿購入。Cimg1164

栗が沢山入っているのはともかく、その不思議な食感にやられた。餡でもなく、ゼリーでもなく、餅でもない。いわく言いがたいのだが、とにかく美味しい。竹皮からそこはかとなく香りも移って、それも風味を増すのに一役買っている。夏の水羊羹も素晴らしいそうで、こんどはそちらを頂こう。

【朝日屋】八幡市 ★★★

京阪八幡駅前にあり、観光客相手の「何でも屋」風に見えて、実は地元の方に愛されている気取らない良店だった。Cimg1156

「鯖寿司地方発送承ります」と書かれた看板を見て「きずし」と弘法市で見かけて以来食べたくてしょうがなかった「どて煮」をアテにビールを飲む。いずれもキチンと自作されているようで、妙な調味料の風味は感じず、真っ当な美味しさで嬉しくなる。どて煮のテラテラしたつやと香ばしい甘味噌の香りが食欲を誘う。ビールが進んで困った。地元の方の丁々発止のやり取りも楽しめたし、実に寛いだ昼食を取ることが出来た。Cimg1155_1

あと村】木屋町 ★★★+

愛馬の活躍を見越して、今までなかなか頼めなかった5,000円の御弁当をお願いする。美味しく見目麗しいのは変わらないが、満足度では3,500円のものに軍配が上がる。スペシャリテとして強調されている「うに茄子田楽」は、正直うにのくど味を感じてしまったが、しかし、この辺りの華やかさで価格の差が出ているようだ。個人的には鰆の西京焼きの、身のほどけ具合や絶妙な味加減であったり、潤いを失わない出汁巻の美味しさなどに魅力を感じているから、やはり3,500円のものの方が合っているようだ。Cimg1163

ここまで書いてきて思うことは唯一つ。「早いところ、また京都に行きたい。」全く困ったものだ。

2006年10月 4日 (水)

訪問店備忘録(9月)

今月も良く食べた。夏の暑さの名残で、辛い料理が多かった。ただ、カプサイシン効果は薄く、天高く腹肥ゆる秋になりつつある。

松の樹】川崎・川崎駅★★★★

四川料理を中心とした店。見かけはごく普通の店だが、本場を想起させるメニューが豊富。特に「正宗」(=元祖、本場の意)と銘打った四川名菜は、骨太な旨味にキックのある花山椒をふんだんに使われていて、刺激にあふれている。

今回は「回鍋肉」と「汁なし坦々麺」の正宗スタイルを食したが、いずれも辛味は軽く、どちらかといえば、山椒の「麻味」による舌の痺れ具合が良かった。後味もこちらの方が唐辛子よりもスッキリしていて、その点も好みだ。花韮の冷菜や砂肝の燻製冷製も食したが、丁寧な仕込みと調理を感じさせる味わいで、頷くことしきり。

この料理の水準で一人三千円程度で収まるというのは素晴らしい。ひっきりなしにお客さんがやってくるのも納得。

天丹】東京・銀座★★+

暑気払いに火鍋でも・・・と思って、以前からチェックしていたこちらを訪問。

何でもコースが50%OFFということで、これを注文。ぐらぐらと煮え立つ二色の鍋が運ばれてくると、八角や山椒の匂いが入れ替わりたちかわり鼻をくすぐってきて、食欲のランプが赤く灯る。つけダレは胡麻ベースのいわゆる「しゃぶしゃぶタレ」。これににんにくのすりおろしと刻んだ香菜を混ぜ込んで食べるのだが、ごまダレと香菜の相性の良さが発見で、これは旨い。ただ鍋の素材は種類はあるものの、ものは良いとは言えずその点が残念。

ラベファーナ】東京・下北沢★★★

ナポリピッツァが好きだ。好きが高じて新婚旅行の行き先にナポリを選んだのも、ピッツァの本当の味を知りたいと思ったからだ。だから、結構あちこちで食べている。今のところ日本の最上位は「サヴォイ」だと思っている。

こちらには二回ともランチの時間に伺った。いすれも大盛況。店員の応対が行き届いているし、明るしし、気持ちよく食事が出来るからだろう。肝腎のピッツァだが、最初はそれでも空いている時間に入店したので、生地はもっちりと香ばしく、具材はじゅるると濃醇で申し分なかったが、今回は立て込んでいる時間だったので、少し雑な作り。ソースの水分が飛んでしまっていたのは残念。オリーブオイルの量を見誤ったのかも知れない。

しかし、セットのサラダは新鮮そのもので手抜きはないし、気分良く食事ができるし、近くに行った際の店としては重宝しそうだ。Cimg0890

RAJ】東京・荏原町★★★

自宅から至近のインド料理店。今月だけで訪問四回。カレーの辛さは淡いが、後引く旨味があって、何故だか周期的に食べたくなる。更にはまったのはナンの出来映えと価格の安さだ。注文を受けてから生地を釜で焼くナンは、小麦の持つ香ばしさとモチモチした歯応えが存分に楽しめる逸品。熱々のところを頬張れば、カレーにはもちろんビールにも合うので、酒飲みにはありがたい。

驚くのはその安さだ。ナンとルーだけのものだと、600円で様々な具材のカレーが選べる。タンドリーチキンも2Pで300円、シシケバブも30cm近くあって、これも300円。腹いっぱいしっかりとした食事をとって、ビールを飲んでも二人ならひとり1,000円で納まる。驚異のCP。素晴らしい。危うく「インド人もびっくり」と言いそうになったことを付記しておこう。Cimg0881 Cimg0882