2019年9月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30          
無料ブログはココログ

2019年4月20日 (土)

東京から18きっぷで行く日帰り旅:東海道中花見酒3

愈々この春の旅も終幕の頃合となり、無事を祝して一献始めようと思う。口開けは新蒲原駅前の酒場岩科に決めていたが開店には少し早く、駅前のロータリーで漫然と時を過ごす。
Dscn7379_1
この瞬間こそ百鬼園先生がいうところの神聖な空白というもので、なんともいい心持だった。遠望される店先に暖簾が翻ったようだから、腰をあげて店に入る。
Dscn7382
コの字カウンターの一隅に席を得て、最近の静岡銘酒では一番との話もある「英君」の純米吟醸に地蛸ぶつ、ポテトサラダ、それに納豆・とろろ・オクラのネバネバ和えで口開けとする。四十がらみと見える主人は厳粛な雰囲気を纏っていて、名酒場ならではの神経質な人柄かなと思ったら、「桜見物の帰り?」と気さくに声をかけられて緊張も解れる。

蛸は滋味あふれる良質なもので、ねっとり感のあるポテサラもいい。
Dscn7380
何が良いと言って「英君」がいい。濃醇旨口でありながら後口がさっぱりしていて品がある。これが1合もっきりで500円を切るというのだから恐れ入る。その後頼んだ磯自慢の本醸造など歯牙にもかけない見事な酒質で、一遍で贔屓になってしまった。次に静岡に来る暁には由比の山の方にあるという酒蔵に行くことに決めた。

酔いが全身に廻り始めた所で、さっき駅で列車は15分遅れだと言ってたから、乗れないと思っていた25分発がいい具合に滑り込んでくるかもしれないと思い、急ぎ勘定をして駅に行ってみる。
Dscn7369_1
果たして丁度列車が到着ということになり、時刻表には載っていない列車に乗るという百鬼園先生欣喜雀躍の体験を同じ東海道線で実現するに至って、独り感無量となる。

日も長くなって17時過ぎに静岡駅に着いた時はまだ随分明るい。20時20分のホームライナー沼津の切符を買って、去年の夏に空振りを喰らった駅至近の「こばやし」に行ったら、シャッターが閉まっている。しかし、換気扇は回っていたので開くだろうと思って、パルコで時間を潰して半過ぎに行ったら暖簾がかかっていて安堵した。
Dscn7383
前と同じく串焼きのたんはつにねぎま、串揚げのアスパラと蓮、それにお新香とビールで久闊を叙する。相変わらず肉は荒々しい感じがあり、串揚げも見事な仕上がりで美味しい。
Dscn3383
じきに客が立て込んできたから、早々に店を後にする。勘定は二年前に比べると一割増といったところだが、諸色高直の御時世だけに止むを得ない。

そろそろ頬も上気してきて足取りも軽い。「こばやし」から西北に進むと風情あるネオンが見えてくる。予備店として当りをつけていた「大村バー」だ。
Dscn7386
随分良さそうだったが初志貫徹して門前を素通りし、しばらく行くと目当ての「鹿島屋」の看板が見えてきた。
Dscn7388
宵の口、まだ日の名残で街に赤みがさしている時分に暖簾をくぐる気分は堪らない。まして旅路とあれば猶更だ。
Dscn7396
期待に胸膨らませ、カウンター席に陣取る。ここに来たのは名代と謳うかつおの刺身で静岡銘酒に耽溺するためだから、かつおの注文がまずは通って一安心する。酒は静岡の酒蔵が各種揃い踏みになっていて懊悩したが、先程清見寺で見かけた臥竜梅を思い出してそれの吟醸にしてみる。
Dscn7389
早々に供されたかつおの刺身は流石の迫力で胸が高鳴る。そうしてその分厚い身にかぶりつくと、もちっとした歯応えとかすかな血の香気が堪らなく旨い。
Dscn7391
やや軽めの調子の臥竜梅がそれをさっぱりと洗い流してくれ、それでいて微かに血の余韻を舌に漂わせるのが心憎い。ここに生しらすと桜海老があれば春の静岡の満漢全席とでも呼べようが、今年は不漁で二将は参陣ならず。些か心残りだったのだが、御大将鰹の旨さにそんなことはどうでもよくなった。

春といえば突き出しに出た筍と蕗と蛍烏賊の炊き合わせが淡い味わいでなんとも旨く、無理を承知で御替わりを所望したら「どうぞどうぞ」と持ってきてくれて有難かった。勿論お代はかかるが、小品の追加を嫌がることもなく出してくれる度量がこの店の繁盛の根幹にあるのだと思う。

いい酒場に巡り合えた悦びを胸に店を後にし、北東に針路をとる。
Dscn7398
やがて駿府城の堀端が現れ場内に入ると「静岡まつり」が賑々しく開かれていた。
Dscn7401
この春の旅は終始人のいないところを遅歩してきたが有終を飾るのにはうってつけの賑わいで、夜桜も美しく我が旅の終着を「まずは祝着」と寿いでいるかに見えた。
Dscn7402
これに気を良くして駅前の「蒼苑」で玉子サンドとビール、また「ホームライナー沼津」でチップスターとビールという豪華リレーで独宴会をぴしゃりと締めくくった。
Dscn7408
Dscn7409
列車の方も「ホームライナー沼津」→熱海まで普通列車→「快速アクティ」と見事な継投で20時20分に静岡を出て、23時には大井町に着くという快速ぶり。これまた18きっぷの旅の締めくくりとしては会心の乗り継ぎだった。

大きなトラブルもなく8か所にも亘る日帰り旅が無事大団円を迎えた充足感に包まれ、その日はよく眠れた。ただ布団の中に入っても、列車に揺られている感覚がついて回り独りで可笑しかった。

2019年4月15日 (月)

東京から18きっぷで行く日帰り旅:東海道中花見酒2

昼からビールを呑み、うららかな春の日差しを浴びて微睡んでいる内に興津に着く。愛想のない合理一辺倒の駅舎がJR東海らしくて可笑しい。
Dscn7352
駅から南へ少し行ったところを走る東海道は整備されていて、昔日の面影は少ない。
Dscn7353
ただ目当ての水口屋址は塀が高く聳えていて、わずかに往時を偲ばせる。今はギャラリーとして縁の品々を展示しているが、流石皇室も宿泊するだけあって抱一や探幽の掛け軸があり、明治の顕官達の揮毫も数多ある。岩倉具視の書は素人でも達筆であることが感ぜられた。

阿房列車で宿の名を挙げるほど気に入りだった内田百閒のものもあるだろうとずっと探索したが縁の著名人にもその名はなく、偏屈な性格を忌み嫌われていたのか、全く形跡が残っていない。山の上ホテルが檀一雄の名を避けるのに似たようなことなのだろう。泉下の先生も「止むを得ないものは止むを得ない」としかめっ面でぼやいているやも知れぬ。
Dscn7354
さらに西に進んで西園寺公望終の棲家である坐漁荘も覗いてみる。百鬼園先生は何の感興も催さないと書いているが、名勝清見潟が埋め立てられた今となっては、猶更その感が強い。
Dscn7359
元々の建物は明治村に移築されて重要文化財に指定され、そこはよく考えたもので眼前に水景を臨める立地にしている。だから往時を偲ぶには犬山まで行かないといけない。まとまりのない中学生の自由研究のような資料展示にも些か気が引けてしまい、早々に辞去する。

帰りがけに揚げはんぺんが有名だという魚屋に寄ったら売切と不運が重なる。それでも最後の目的地、家康が人質時代を過ごした清見寺には立ち寄ってみる。
Dscn7355
Dscn7368
Dscn7363
Dscn7365

門前を東海道線が横切っていることで有名な寺だが、全く人の気配がせず少し気味が悪かったので、庭をぐるりとしただけで帰ることにする。なお、柑橘類の名に「清見」とあるのはこの地に由来するとのことだった。

興津の街は御多分に漏れず閑散としているが、それでも街道筋に1軒、駅前に2軒和菓子屋があったので、その名も名物家で練り切りを買って帰る。数種あるとのことだったが、この日は桜しかなく少し寂しい。太陽の光が燦燦と降る土地柄だから発色が強い。造りはごくごく一般的なものだった。
Dscn7413
不完全燃焼のまま興津を後にし、百鬼園先生宜しくスイッチバックして新蒲原へ向かおうとしたところ、構内放送で「沿線火災によりダイヤが乱れ遅れが出ている」と流れてきた。こちらとは違って燃えるとこでは燃えているようだ。ここまでなんとか事故の類は逃れてきていたが、最後になって捕まってしまったかと諦め気分でホームに降りたら、すぐに列車が来て吃驚する。しかも朝夕並みに混雑していたのでより驚かされる。

遅れで各駅に溜まっていた客をたっぷり孕んだ列車は10分ほど行くと新蒲原に着いた。
Dscn7369
ここにある御殿山は桜山として知られているとのことで、時間つぶし方々花見をしようと思う。

誘導看板はあるものの、人通りはなく不安な気持ちのまま5-6分ほど行くと麓の神社に着く。
Dscn7370
そこには桜祭りの準備をする人が大勢集まっていて、その頭上にはほぼ満開を迎えた桜が咲き誇っていて安堵した。
Dscn7371
裏山を登っていくと海と街と桜が見えてなかなかの景色だったが、相当の難路だったので名物の吊り橋に行くことは断念して、途中の腰掛で済ます。誰も居らず閑静で、そよそよと風が吹き、木漏れ日も心地よく、まったく気持ちのいい春の日だ。この一瞬を求めて先月来、彼方此方を彷徨ってきたような気にもなる。
Dscn7373
Dscn7376
Dscn7378
長居すると桜の精に取り込まれてしまいそうだったので、下山して駅前まで戻る。ホームから拡声器の案内が漏れてきて、まだ列車の遅れは続いているらしかった。

2019年3月24日 (日)

東京から18きっぷで行く日帰り旅:焼津酒蔵巡礼(下)

まずもっての目的である磯自慢の酒蔵を見物して、昼飯を調達しに南西にある「サスエ前田魚店」へ向かう。磯自慢の蔵から南下して川にぶつかったら西へ進むという道順をとったが、川沿いの西行きは川筋を抜ける強い西風が吹き付けて思ったよりも前に進まず、しかも乾いた冷たいものだったので痛いくらいに額を撲っていくので相当に骨が折れた。観光協会のご婦人の憂慮の訳をここで初めて知らされることになる。
Dscn7012
それでもようやく到着したサスエは刺身が抜群であることで名を馳せていて、そこが作る寿司や丼だから絶品だというので足を運んだ。12時にならないと弁当類は出てこないというので15分前に行ったらやはり陳列されていなかったので、近くの公園で寒風にやられた身体を陽にあてて養生してから戻ると、賑やかなネギトロ丼といった感じのものが一種類、5点ほど置かれただけだった。

その後も出てくる気配はなかったのでやむなくこれと、これもお勧めというびんちょう鮪の刺身を買って海沿いのふぃしゅーなを目指そうと思ったが、寒風によるダメージが大きく次第に偏頭痛がしてきたので、これ以上風に吹かれるような場所にいるのは困難と判断して、先程陽に当たった公園に向かい、「ここを食卓とする」と宣して午餐を摂ることにする。
Dscn7015
Dscn7016 Dscn7017
Dscn7014
何とはなしに女子向けの雰囲気がするネギトロ丼はいくらや賽の目切りの玉子焼きも載って、目には楽しいが鮪の旨味や醍醐味はどこに隠れたのか一向に現れない。びんちょう鮪も、立ち食い寿司で食べるあれとさして差異はない。どうも予約をして誂えてもらうようなものでないと、その実力は味わえないものらしい。

結構な空振りをしてしまい、しかも酒を口にしてしまったので自転車に跨りトボトボ歩くことになり、その怪しげな風体から通報されて事案化しないかびくびくしながらようやく駅まで戻るはめに。我ながら閉口した。

ここからバスに乗って北に向かうとすぐに菜花が一面咲き乱れている堤に出ていかにも気持ちが良さそうだったから、こっちで飯を食えばよかったと恨めしく思う。その後も菜花は間断なく、庭先に畔に川端に路地に隙間を見つけては咲いていて心を和ませてくれる。
Dscn7024
目的の岡部宿には初亀の蔵と昔の旅籠の建物が残っているという。そこに向かう旧東海道沿いに小川が流れ、河畔には菜花が咲き早咲きの桜が流れを覆うような景色があって、いかにも春めいていて心が弾む。
Dscn7048
野辺の花を愛した荷風をストリートビューの黄色い彼のようにここに召喚したならば、満足げに下駄を鳴らしてテクテク歩き続けるように思えた。

直に初亀の酒蔵が見えてきた。先程飲んだ限りでは最後の後口に今少し品格があればという出来だったが、次の機会では小川の景色を思い出しながらの一献となるだろうから一味増して旨かろうと思う。
Dscn7030
Dscn7031
さらに行くと岡部宿の旅籠「柏屋」に着く。なんとか観光の目玉にと意気込んだようだが、資金が足りなかったのか本陣跡は簡素な立札があるだけで往時を偲ぶよすがもなくて肩透かし。
Dscn7037
Dscn7043
広場でぼんやり花を眺めてから、近くのいやし庵なる白飯が売りの店で夕飯用の握り飯を買って、早々に立ち去ることに。これで春の小川の景がなければ連続して肩透かしを食らうところだった。
Dscn7035
Dscn7045
Dscn7046
無駄に立派なバス亭でも寒風に曝され、
Dscn7051
いよいよ偏頭痛が気分を支配してしまう仕儀になり、どうにか緩和しようと駅前の温泉施設へ行って入浴するが、塩気のある泉質で妙に温まりすぎて、今度はどくどくと脳を脈打つのが煩くてしかたない。
Dscn7052
それがあるから午睡もかなわず這う這うの体で電車に乗り込む。
Dscn7054
前回随分楽をさせてもらったホームライナー沼津に今度もお世話になる算段で、静岡の駅ビルでビールのアテを物色することにしたが、どこにでもある店ばかりで面白みがない。

ようやく見つけた練り物屋は地元の店のようであんまり賑わっていなかったが、好物の薩摩芋天(ここでは”おいもさん”といった)があったので買い込んで、悠然ふかふかの座席につきささやかなる夕餉の時間に。少しぽそぽそするが、混じりっ気のない素朴な味わいがいい”おいもさん”は腹持ちもいいし、ビールにも合う。
Dscn7056
丸めて串にさしたりすれば、随分見栄えも良くなって売れそうな気がするが、どうだろうか。岡部で買った握り飯はきちんと塩気が利いた握り飯で、美味しかったが吃驚するほどのこともなかった。
Dscn7060
たちまち沼津まで走り抜けて、熱海を出て小田原に差し掛かった頃、座席下のヒーターの熱気が増してくる。そこには焼津で買う時に「冷蔵保存でね」と店の方に念を押された喜久酔の四合瓶が保冷剤と共に簡易な冷蔵パックに入っている。そのシールドは薄く、熱風をどれくらい持ちこたえられるものか・・・・知らぬ間に第三新東京市下でヤシマ作戦的なものが展開しはじめていて、シンジ君にでもなったつもりでエントリープラグにも似た冷蔵パックを開けて「キクヨイ!」と声を掛けたら、まだ十分冷たくてニコっと笑いかけてきたから安堵した。
Dscn7080
↑無事自宅に辿り着いた喜久酔と磯自慢。県内向けの磯自慢は1升2千円と格安で、帰京する強者サラリーマンが3本購入していた。但し、その酒質は馴染んだ磯自慢のものには程遠く、ごくあっさりとした味わいで別物に近い。

そういえば、静岡の練り物屋も蒲「菊」だし、和菓子の「白喜久」といい菜花の季節によく菊に出会った不思議な旅だった。

2019年3月22日 (金)

東京から18きっぷで行く日帰り旅:焼津酒蔵巡礼(上)

掛川で飲んだ「開運」のあまりの旨さに、静岡が日本酒王国であることを再認識させられた。それで調べてみたら、酒蔵が意外と至便なところにあることが判ったので、その中心地となる焼津に行ってどんなところで醸しているのか見てみようという事になった。

この日は座席運が良く、根府川手前で海沿いのボックスシートを独占できたので、朝日に輝く新鮮な海の表情を余すところなく楽しめて上々の滑り出し。
Dscn7008
沼津以西も眼前の富士の峰が右から左から入れ替わり立ち替わり現れては消えて、都度都度愛想を振りまいてくれるので飽きることがない。静岡を越えて少し行くと無事焼津に到着。
Dscn7022
早速観光案内所へ行ってレンタサイクルを借りる。「今日は西風が強くて寒いから生憎ね」と係の方に心配されたが、電動だしさほどの事もないだろうと安穏に構えて出発進行。まずは駅近の「仲野富士男商店」に立ち寄って酒の在庫を確認すると、目当ての磯自慢も喜久酔も揃っていたので、帰りにここで土産を買うことにし、昼飯用に「初亀」の生酒の一合瓶を買う。

ここから南下して、ストリートビューでその店構えに惹かれた「白喜久」へ立ち寄る。思った通り店は清潔で整然としており、商いをする矜持が溌溂と感じられ期待できそうな雰囲気に満ちていた。なので土地の名物らしい味噌饅頭に季節のうぐいす餅、それに銘菓「亀寶」と色々買うことになる。多品種少量でお願いしたので、包装に少し手間をとらせてしまったら、「お待たせして申し訳ございません。」と言われ、とても丁寧な客あしらいで感心したけど、却って恐縮頻りだった。

「亀寶」は鰹節を模した最中で、しっとり気味の皮とほこほこと豆の味わいが前面に出た餡の相性が良く美味しい。その説明書きがいかにも古風かつ丁重で、昔気質の遺風が感ぜられて好ましい。
Dscn7076
Dscn7078
家人と共に感心したのは「うぐいす餅」で、餅は柔らかさがありながら歯切れよく、滑らかな餡と薄くまぶされたきな粉の風味と相俟ってとても品がいい。店先には「京きなこ」版のものもあってこだわりが感じられたが、なるほど念の入った一品だった。
Dscn7070
ここから海沿いの道を通ってさらに南下していくと、通りの小さな工場から鰹節の香りが漂ってきたりして、いかにも焼津に来ている雰囲気があって良かった。
Dscn7011
と思っているうちに目当ての「磯自慢」の酒蔵に着く。駐車場には無造作に箱詰めが積み上げられていて、プレミア価格だったり、抱き合わせ販売が当たり前の酒とは思えぬ扱いで少し苦笑。
Dscn7009
中が覗けない障子戸の向こうが直売所となるようで恐る恐る開いて入ると、ご当主の奥様らしき方が現れる。
Dscn7010
山本富士子似のやや圧を感じるいで立ちで、いかにも磯自慢御殿の主という風格がありなかなかに味わい深い。二三言、在庫に関しての何かを仰ったようだけども、現れてすぐ咄嗟のことだったので、何と言ったのかは判然としない。しかし、手頃な四合瓶は見当たらず、やはり帰りに仲野酒店で買えばいいやという結論となり、そそくさと外に出ることにした。

改めて蔵の周りを見ると、目の前には小さな川が流れているが、海と目鼻のところだから潮の干満で水位が上下するような運河のようなもので、運搬には役立ったとしても酒造りには用をなさないだろう。ここまで海に近いとは想像しておらず、そしてまた水に恵まれたようにも思えないこの立地で(住所は鰯ケ島町!)あれだけの美酒を安定して醸し出すというのだから、なんだか手品のようにさえ感じた。何事も一見するに限るなと改めて実感した次第。

2019年3月 9日 (土)

東京から18きっぷで行く日帰り旅:掛川春色耽美行(下)

二俣城跡から歩いて少し行くと「二俣本町駅」に着く。

ここで次の電車を30分待つことになったが、古い駅舎のベンチに腰かけて柔らかい春の午後の日差しを浴びながら読書をしていると、日頃味わえないしみじみとした幸福感が沸き上がってきて、これぞ旅の醍醐味という気持ちになる。
Dscn6791_1
Dscn6792_1
Dscn6795_1
特にこの駅は線路脇が切通の藪になっており、そのアプローチが得もいえぬ鄙びを添えていて郷愁を誘う。
Dscn6801_1
Dscn6799_1
自分の他には誰も来なかったホームに電車が滑り込んできた時、一瞬「一本見送ろうかな・・・」とすら思われたが、後の予定が詰まっているので後ろ髪をひかれる思いで掛川に戻る。

だんだん日が暮れてきた掛川駅はそれなりに人も歩いていて、後に訪れる焼津や銚子の駅前を思えばまずまず繁華していた。
Dscn6824
Dscn6825
↑JR東海らしからぬ人情味あふれるホワイトボードが印象的。

まずは土産をと思い、商店街の兎月堂へ。上生菓子が揃っているとのことで足を運んだのだが、その通り数種並んでいたので4つ買い求める。特に梅に鶯を模った初音は、鶯の羽根を思わせる大胆な造形が楽しませてくれた。
Dscn6837
また「こうらい」との銘の菓子は、村雨・軽羹・羊羹の三層となっていて、軽羹の真白が凛としていて美しい。いずれも申し分なく美味しくて満足した。
Dscn6838
店番のご婦人に「掛川城の桜は随分咲いたわね」と言われたので、行ければと思っていた城へ行ってみると、随分どころか盛大に花を咲かせていて、桃色の幕を河畔にたなびかせている様は、予想外だっただけに殊更美しく見えた。
Dscn6804
Dscn6814
しかも、花見に来ている人はほとんどおらず、ドイツ人らしき家族連れの観光客と自分とで石段に座って景色を独占する贅沢に恵まれた。早咲きの掛川桜というそうだが、春爛漫の風趣を存分に味わう僥倖に恵まれて、目当ての酒場に運ぶ足も軽やかになる。

城からも駅からもさして遠くない「酒楽」は14時開店という旅のものにとっては誠に好都合な店で、16時半に店に入るとご常連が二つのテーブルに密集して、あれこれ穏やかに話しながら楽しげに盃を傾けている。
Dscn6815
こちらは入口右手の卓に陣取り、まずは生ビールで喉を潤す。品書を見ると、初鰹が入っているようなので、それとフルーツトマト、それにレバー炭火焼きをアテにする。いずれもワンコイン以下なので、こじんまりとした盛りだろうと見込んでいたら、どれもたっぷりあって嬉しい驚き。トマトは都合3つ分はあったと思うので、スーパーで買うよりも安いくらいだ。その上、質が高いから舌を巻く。
Dscn6816
Dscn6818
特に鰹は雑味・えぐみが皆無で、ただただむっちりと舌と歯に絡みつく身が妖艶ですらあり、慌てて日本酒を頼む事態に。それも御膝下で醸す「開運」のしぼりたて生だというのだから、馨しき薫りと淡い泡が口中をさっぱりと洗い、終いに甘美な余韻を残すばかりで、全くもって旨い。危うく「流石静岡!」と声をあげてしまうところだった。もう少し呑みたかったが、この後はご常連タイムだろうし、電車の時間があるから万やむを得ず店を出る。ここは是非再訪したい。

掛川を17時過ぎに出て、18時静岡発の「ホームライナー沼津」に初めて乗ってみたら、暗くなった車窓がどんどん流れて行って随分楽だったし、座席は座り心地よく、途中ビールも楽しめてとても良かった。
Dscn6829
Dscn6830
久々の長駆に一抹の不安を覚えての始まりだったが、全く問題なく充実した旅となって甚く満足した。掛川は是非とも再訪したい。
Dscn6827
Dscn6819

2019年3月 8日 (金)

東京から18きっぷで行く日帰り旅:掛川春色耽美行(上)

今年の春は暖かく、また家人は仕事が沸騰していて寄ると噴火しかねないから、三十六計逃げるに如かずと思い立ち二年ぶりで春の18きっぷ巡礼に出た。最初に選んだのは静岡掛川。そこからローカル線に乗ってかねがねいつかはと期していた秋野不矩美術館を目指す。久々に4時間近い乗車はなかなか骨が折れたが、小田原手前の酒匂川が朝日に煌く様子や田子の浦辺りの優美な富士の峰に励まされてなんとか掛川に着く。

まずは南口から市が運行するバスに乗り「資生堂アートハウス」へ。予想していた新幹線沿いの道ではなく、建物裏手に降ろされたので少し不安に思ったが、難なく敷地内に辿り着く。琳派様のうねる丘を挟んで企業資料館とアートハウスが並立していて、直線がピシリと決まった清潔な佇まいはやはり谷口吉生らしく、感銘を受けた「せとうち東山魁夷美術館」との相似も感じる。展示は社花である椿をモチーフとした作品群で、山口蓬春のものが流石の出来栄えで目を引いた。
1_1
(沢山写真を撮ったが、途中で不具合が起き消えてしまった為、画像はネットから引用)

静謐な時が流れ、しかも無料という点も好ましく、この日は開いていなかった企業資料館の見学も充実の展示だというから、是非とも再訪したいと感じた。
新幹線の線路下の隧道を抜けて資生堂の向かいにある掛川市役所にも足を運ぶ。パラボラが突き刺さったような外観が特徴の建物は、中に入ると各フロアが階段状に現れるという凝った作りで、下から見上げると巨大な雛段のように見える。
Dscn6745_1
Dscn6747
その壮大さに「新掛川城だな・・・」との感慨を抱いてから、役所の立つ丘を下ると天竜浜名湖鉄道の市役所前駅に。この格差がなかなか味わい深い。
Dscn6749
電車が来るまで、駅のベンチで掛川駅で買い込んだ「パンの郷」のクラウンメロンパンなどで腹を満たす。メロンパンは中にメロンクリームが入っていて意表を突かれたが、淡くメロンの薫りが漂う品の良いものでなかなかに美味しかった。
Dscn6754
そうこうしているうちに12時となったが、流石茶所、茶摘みの歌が流れて旅情を誘う。この路線は1両編成で、里山から里山へ進んでいくから、茶畑や畔の菜花、それに柴山や路地脇にぽつりぽつりと咲く早咲きの桜が次々と現れては消えて目を楽しませてくれる。
Dscn6751
Dscn6758
Dscn6756
その上、戦前からの駅舎が数多く残っていて、これもあって停車が苦にならない。ある駅などでは駅舎に子供の習字がずらりと並んでいて微笑ましい気持ちにすらなった。目的の天竜二俣駅はそれらの駅の総本山のようなもので、星霜を感じさせるホームや駅舎、それに現役の転車台もあってその道の好事家には堪らない聖地であるようだった。
Dscn6755
Dscn6762
Dscn6763
ここから川沿いの土手の春の花を愛でたりしている内に15分ほどでお目当ての秋野不矩美術館が見えてきた。そのアプローチは長くくねる急坂で、館は難攻不落の城のようにも見える。
Dscn6768
Dscn6778
息を切らして上り詰めると、一目見たかった美術館の全景が広がる。
Dscn6775
ここは秋野女史が度々訪れたインドの土塊で作られた建物を模したもので、確かに異世界感があって心揺さぶるものがあった。この雰囲気を出すために、藁を混ぜ込んだ土を塗ったようで、近づいてみるとそれがよく判る。
Dscn6774
Dscn6773
女史直々に建築家の藤森照信さんに依頼したというが、この出来には深い満足を得たろうと思う。展示は女史の作品を中心としたものだったが、展示スペースがさほど大きくないので数は少な目。それでも裸足で展示室に入ってもらい、土の雰囲気を足裏からも感じさせて、作品にシンクロしやすい趣向を凝らしていることから臨場感はかなり高く、なかなかの工夫に感じ入った。

この後、この町で生まれたという本田宗一郎の資料館に足を運ぶも休館とのことで、
Dscn6780
隣の清瀧寺で信長により切腹させられた家康の長男信康の悲運に思いを馳せ合掌してから、
Dscn6781
その幽閉先であった二俣城址へ。戦国時代の山城だったこともあって、急峻な階段を二度登る。城下公園脇の階段は生家近くにあった大階段を彷彿とさせて懐かしかったが、感傷に浸っていると足を踏み外しそうになるので、昇降に集中して難は逃れた。
Dscn6785
天守台から下を覗くと崖下に暴れ川で名高い天竜川がかなりの水量で下っていて、それを越えてもなお断崖絶壁になっているから、こちら側からの侵攻は事実上不可能であろう。その堅牢ぶりを窺い知ることが出来た。
Dscn6789
誰もいない城址を歩いているうちにふいに小学校五年生の頃に山岡荘八の「徳川家康」全26巻を踏破し、この二俣での信康と母築山殿の悲劇の場面では気が塞がった記憶が甦る。初めての地なのに妙に懐かしい感慨にふけりながら、恐る恐る階段を下って街に戻った。社宅で過ごしていた幼少の頃は飛ぶように階段を降りられたが、今はとてもできなくなっていた。随分老いたものだと少し寂しい思いがした。
Dscn6782

2018年8月10日 (金)

東京から18きっぷで行く日帰り旅:夏の大三角形武甲駿ぐるり

家人との旅の際に購入した18きっぷの残りを使ってどこかに行くかと・・・案を練り、甲府から身延線で東海道に出る三角ルートに辿り着いた。旅の目的は以下の通り

①甲府の酷暑を体感②甲府駅近くの粟大福購入③古風な六曜館珈琲店で涼む④名駅弁を輩出する丸政の駅弁を食べる⑤富士川沿いの車窓を楽しむ⑥静岡「こばやし」で飲んで〆る。

ややゆっくり目に家を出て新宿経由で中央線に。高尾到着時にはすでに35℃超えの体感。天狗の鼻もうなだれて見える。
Dscn5716
甲府までは音楽を聴いて過ごす。ミシェル・ルグランの「夏の歌」の燦燦たる陽光のようなイントロが流れてきた途端に視界が開けた時には、あまりにも完全な夏が現出したからか脳が甘く痺れ、
Dscn5723
長いトンネル内でシンバルズの「ハイウェイスター・スピードスター」が流れた際には、中央線内でも疾走感を味わえることを知った。

出発から3時間半で甲府到着。改札を出たくらいではさほど暑さを感じなかったが、駅ビルからロータリーへ出る階段の最後の三段では一段毎に2℃近く体感温度が上がり、外に出た瞬間に酷暑に包囲された。
Dscn5733
特に甲府城址横の日陰のない道を歩いている際には、体中にエアコンの室外機の排気を浴びているかのような有様で、呼吸をすればドライヤーの風を口に当てられているような状態。流石に身の危険を感じて折り畳み雨傘を用いて人生で初めて日傘使用と相成る。
Dscn5729
にもかかわらず、粟大福目当てで向かった五味餅菓子店はまさかの店舗建て替え工事で営業しておらず・・・恨みがましく思いながら、六曜館珈琲店まで命からがら歩く。

あとで調べるとこの時間気温は38度内外。この後39度手前まで上がるが、とにかく普通に歩くのも辛い。だから六曜館に滑り込んだ時には、砂漠のオアシスに辿り着いたかの悦びがあった。
Dscn5730
店内は外の熱波からは隔絶されていて、涼やかにステンドグラスは輝き、かっつんかっつん振り子を揺らす時代がかった時計が暑さで昂進した身体のリズムを整えてくれる。わざわざ豆を挽くところから作ってくれた珈琲はやや薄くさっぱりしていて夏に合う風味だった。
Dscn5731
駅へ取って返して改札内の駅弁屋を覗いたところ、丸政の本拠地ではないからか種類も少なく名の知れたものも置いていない。やむなくふんわり玉子サンドを買って身延線に乗り込む。
Dscn5734
これがふんわりとは真逆のぎちっとした玉子焼きにパンが張り付いているという極端なシロモノで、甘い玉子を鱈腹というのは胃もたれするし、第一味に飽きてしまう。せめてチリトマトソースやからしマヨネーズなどをつけて欲しかった。
Dscn5736
身延線は信玄の駿河侵攻ルートと記憶しているが、川に丸太舟を浮かべて下ったら速攻も可能だったのかな・・・と思ったりしながらぼんやり車窓をただただ眺める。下部温泉を過ぎたあたりから富士川の流れがよく見えるようになり、甲府盆地では見かけた桃や葡萄の実がなる様子は消えて、代わりに茶畑がぽつぽつ見えてきて静岡に入ったことを知る。
Dscn5742_2
終点富士駅から東海道線で静岡駅まで行くと、すでに宵の口。いよいよこの度の主目的ともいえるこばやしへ向かうと、看板の灯が消えている・・・
Dscn5748
入口のシャッターには「本日臨時休業」との張り紙が・・・今日という今日に休みとはツイてない。やむなく鍛冶町界隈を汗だくになりながらさまよい歩き、さっぱりとした店構えの「たけい」さんへ入る。

メニューはこばやしとほぼ同じで串揚げと串焼き、静岡おでんが三本柱。こちらはさらに静岡の地酒と魚が揃っていたが、気持ちは串焼きと串揚げに傾いていたので何本かをビールで流し込む。いずれも水準の出来ではあるが、こばやしで感じた軽い感動のようなものはなくて、あっさり引き揚げることとする。
Dscn5750
1年ぶりの18きっぷ旅だったが、〆が締まらないと帰京する電車がとてもつらいことになることを知った。今度は浜松方面へ出かけた帰りに、静岡のリベンジをしようと心に誓った次第。
Dscn5747

六曜館珈琲店 本店喫茶店 / 甲府駅)  
昼総合点★★★☆☆ 3.5

駅弁屋 甲州弁当 / 甲府駅金手駅
昼総合点★★★☆☆ 3.0

2017年5月20日 (土)

東京から18きっぷで行く日帰り旅5:続・静岡地獄経由蒲郡行

蒲郡からの帰り道、また来た路線をただただ5時間半も乗り続けるのはなかなかしんどいと思い、どこかで途中下車して夕食を取ろうと考えた。県都静岡の駿府城に行けば、そこは城だから桜の名所になっているだろうし、その後一杯飲んで帰京すれば、酔っ払いの特権である速い時間の流れに乗って帰りの辛さも減るだろうと見込んで、途中下車することにした。

夜にはまだ早く夜桜とはいかないかな…と思いながら駅から歩いていくと10分ほどで堀に到着。期待通りに石垣を覆うような桜が咲いていたが、思ったよりは本数が少ない。
Dscn3372
では、と本丸跡の公園に入るが、逆に桜はポツポツとあるくらいであまり目立たない。
Dscn3373
少し肩透かしを喰らったけれども、公園で楽しそうに青春を謳歌している女子高生の姿や立派な葵御紋の植栽も見られたので良しとして、飲み屋街へ足を向ける。
Dscn3374
当初目当てにしていた「七福」へ行ったら生憎予約で一杯と断られ、では至近にある静岡では高名な「多可能」へ行くかと暖簾をくぐる。

17時過ぎと早い時間だが店内はほぼ満席の盛況ぶり。人いきれに押されながら、あさりの酒蒸しと鮪中落ち、セロリを頼む。しかし鮪は凍ったフレーク状態だったし、あさりは砂抜きが不完全でじゃりじゃりするしで飲む気を削がれてしまった。
Dscn3375
Dscn3376
またセロリは30分経っても来ないのでキャンセルして店を出た。名が知られ過ぎて客の数と店のキャパのアンマッチが起こっているようで残念。

このままの不完全燃焼では帰れないと思い、先程店に入る前に通りかかって気になった隣の「こばやし」で飲み直すことにする。
Dscn3384
ここは串揚げ・串焼き・静岡おでんの三本柱に特化していて、メニューが潔く期待が高まる。串焼きのタンとハツを頼んだら、かなりの大串で迫力ある肉が供された。かぶりつくとぎゅっと肉汁が溢れ出し、微かな焦げみが風味を添えて荒ぶる旨さがある。
Dscn3382
付け合わせと思い頼んだお新香は漬かりが深く酸味が効いているので、このパンチが利いた串の脂を洗い流して口をさっぱりさせるのには好都合でこのコンビはとても良かった。
Dscn3377
串揚げでは蓮根と玉ねぎを頼んだが、蓮根のサクホク感といい玉ねぎの濃い甘みといいとても美味しかった。

ふと目をカウンターに転じると見事なアスパラガスが見えたので、ご主人に「アスパラは焼くのと揚げるのとどっちがいいですか」と聞いたら、揚げた方が良いとのことでお願いする。
Dscn3381
自信をもってお勧めされただけあって、カリッとした衣と、奔出するアスパラの香気と汁気のコントラストが絶妙で、揚げ物なのに清々しさすら感じた。
Dscn3383
これにおでんの厚揚げとビール・日本酒各1本で3,000円というのは個人的にはとても安く感じた。これからは静岡方面に来たら必ずこちらに立ち寄ろうと思う。

駅まで上機嫌で歩いて静岡駅から始発のロングシート車両に乗り、案に相違して時間が早く流れてくれず最後は疲労困憊となったものの、なんとか無事に帰宅して18きっぷの旅の締めくくりは大団円を迎えた。

今回が最も遠い距離まで出かけた回となったが、正規料金10,800円のところ2,400円で済んだのだから食事代諸々が浮いた分で十分足りる勘定。ケチな性分なので、これだけ節約できると旅の達成感とともに別の喜びも感じる。今は来年の春のルートを色々夢想して楽しんでいる。

多可能居酒屋 / 静岡駅新静岡駅日吉町駅)  
夜総合点★★★☆☆ 3.0

こばやしおでん / 静岡駅新静岡駅日吉町駅)  
夜総合点★★★☆☆ 3.7

2017年5月15日 (月)

東京から18きっぷで行く日帰り旅4:静岡地獄経由蒲郡行

クラシックホテルは風雅の残り香があるところが良く、奈良ホテルには宿泊したし、山の上ホテルでは結婚式を挙げた。軽井沢の万平ホテルで飲んだアイスコーヒーの味わいも鮮明に覚えている。

ほとんどの場合、観光地にあるから行きやすいけれども愛知県は蒲郡にある蒲郡クラッシックホテルだけは特段の用事も見当たらず、行く機会はほとんどないだろうと思っていた。それならば、このホテルを見に行くことを用事にしてしまえば良いと思い立ち、百鬼園先生宜しく東海道をただただ西へ西へ進む旅を18きっぷの最後として選んだ。

早朝西大井から横須賀線に乗り込み戸塚でいよいよ東海道線に乗り換える。
Dscn3336
ホームには小学生とそれを送り届ける親たちの一群がわんさといて、かなりの混みよう。さらに終点平塚で乗り換えたのは5両編成と短い車両だったから、思わぬ激混みに遭遇して先が思いやられる。それでも小田原でようやく座れて熱海の乗り換えでは特急用車両がお出ましと相成り少し機嫌も持ち直す。
Dscn3337
この先のトイレ事情を鑑み、この車内でそそくさと用を足して沼津でいよいよ静岡地獄名物のロングシート車両に乗り込む。眼前には18きっぷ仙人のような御仁が数名座っていて、各々大きなサックから思い思いの暇つぶしを出しては自分の世界に没していて、なにやら先達感があった。

清水付近で海が見えたくらいで車窓は田舎の街並みが続き確かに倦みやすい。そんなだから大井川を渡る際の見渡しが良くて随分せいせいした。乗り継ぎとなった島田駅はシンメトリーな感じが良く、トイレも跨線橋を上ったところにあって助かる。
Dscn3338
同じく乗り換えした天竜川駅だが、川から離れていて無機質な街があるのみで少し残念。
Dscn3339
沼津→島田→天竜川→豊橋→蒲郡と乗り継ぎ5時間半かけて到着。まずは閑散とした駅前をうろついてみる。どちらも今後厳しそうな不思議な書店。
Dscn3341
風格ある酒場で心惹かれる。
Dscn3342
骨酒売りの店は初めて見た。何の魚の骨酒なのだろうか。
Dscn3344
なかなかの閑散ぶりを桜が一人盛り上げていた。
Dscn3346
駅に戻ってタクシーでいよいよホテルに向かう。海沿いの小高い丘の上にホテルは鎮座していて、その様子から竜宮城のようにも見える。
Dscn3365
入口のドアボーイが慇懃に迎えてくれ、ラウンジに行きたいと話すと古式ゆかしきエレベーターに誘導してくれ、しかもインカムでラウンジの係りに連絡を取ってくれたから、2階でエレベーターを降りたらまたも慇懃にお辞儀をされてすんなりと席に誘導してくれた。
Dscn3358
ここの経営は色々と変遷していると聞いているが、少なくともプリンスホテルから譲り受けた今の運営は、この建物にふさわしいスマートさを保とうという矜持を持っているらしかった。

ベランダ沿いの淡く日が差し込む席に座って、海を眺めながら物憂げに黒ラベルを飲むというのは至福の時だった。
Dscn3349_2
Dscn3355
眼前には絶妙のバランスで空中に停止するとんびが数羽、その向こうを白鷲が優雅に羽ばたき、それらの合間をぬって燕が放物線を縦横無尽に描く。薄曇りでほんのり霞む竹島も何やら夢の中のように見え、酔いも回って独り静かにうっとりとしてただただぼんやりと景色を眺めた。
Dscn3362  
帰りがけ庭園を散歩して帰ったが、もみじの木が多く、またつつじの植栽もあちこちにこんもりと見られたから、季節ごとに花鳥を愛でることが出来る段取りとなっているようだ。疲れ気味の日々が続いたら2-3日逗留するにはもってこいの場所だと思う。
Dscn3357
Dscn3359

帰りは歩いて駅まで行く。道すがら気になるものもちらほら。
Dscn3367
Dscn3368
Dscn3369
駅前まで戻ると、土産を買いに「梅月園」へ。近隣商店のどんよりさはここにはなく、店構えも清潔で、商品ケースにもずらりと美味しそうな菓子が並んでいて心が逸る。帰りが晩くなった際、電車内でも食べられるようににと思い薯蕷饅頭と季節限定の桜薯蕷饅頭を購入。
Dscn3387
結局自宅まで持ち帰って食べたが、むっちりした皮の具合といい、餡のしっくりとした歯応えといい、滑らかな舌触りといい、品のよい甘みといい、かなり上出来の饅頭だった。特に桜
薯蕷は桜花の塩気が甘みに陰翳を与えて、さらにそれを際立たせる逸品で、これは4-5個買っておけばと後悔した。今度蒲郡ホテルに泊まる時には大量に買い込んで、美しい風景を愛でながらぱくつきたいと思う。


滞在二時間ほどで14時半には蒲郡を後にした。
Dscn3370

蒲郡クラシックホテル旅館・オーベルジュ(その他) / 蒲郡駅三河三谷駅)  
昼総合点★★★☆☆ 3.7

梅月園 六花和菓子 / 蒲郡駅)  
昼総合点★★★☆☆ 3.7

2015年11月22日 (日)

立冬閑寂美濃近江7:中津川の店々

【すや】
その昔は「酢」を扱う店だったから「すや」なのそうだが、店構えが大層立派で和菓子屋には見えない。中に入ると日本家屋特有の薄暗さがあり、ひっそりとしていて老舗感が漂っていた。そのほの暗いところをこざっぱりとした店員が行き来していて、声をかけると小さな声でひそひそと注文を受け、奥に行って品を持ってくる。この密やかさがなんだか心地よく、恭しい挙措がこちらの心をくすぐる。

前夜「長多喜」で川上屋のものをご馳走になったのだが、それよりもやや粗い感じで鄙の素朴さがある。個人的にはこちらの方が中津川らしくて気に入った。
Dscn2253
【佐和家】
長多喜の女中さんに勧められてこの地方独特の菓子であるという「からすみ」を買いに行く。店はとても小体で、からすみが数種と栗粉餅が並んでいるばかりだった。少し迷ったがよもぎのからすみと栗粉餅を買ってみる。

からすみは餅よりもねっちりとしていて、ういろうほど柔らかくない感じ。不思議なことに香ばしさと脂っ気を感じたが、なにか木の実を混ぜてあるのだろうか。目立った味ではないが不思議と後を引く一品で、固くなってから炙っても楽しめた。栗粉餅はたしかに栗が粉末状になっていて、きなこよりあっさりしていて口どけが良く、これもなかなか楽しめた。
Dscn2254
Dscn2258
【二葉軒】
中津川でしか手に入らないものは何かないか・・・と調べていてこちらの店に辿り着いた。店はなんと酒蒸し饅頭しかなく、それも地元の方々が大量に買い付けていくので午前中にはなくなってしまうのが常だという。前日に10個取り置きしてもらうよう電話を入れておき、昼前に店に行くと確かに残った折詰は数個だった。

買いたての時は少し温かい程度の状況で、早く食べてしまった方がいいだろうと思い、名古屋へ向かう電車でむしゃりとやってみると、ごくごく普通の饅頭で少しがっかりした。しかし、帰京後自宅で蒸し直したところ、生地のふっくら感が復活しあっさりと滑らかな漉し餡との相性がとてもいい。これなら人気があるのも納得だ。出来れば朝早く行って蒸籠からふかしたてのものを手に入れればその真味が堪能できるだろう。
Dscn2257
【平和軒】
駅前食堂を思わせる古風な店構えだが、ショーケースのサンプルたちは色褪せておらず、ドアを入ると「いらっしゃいませ」とはつらつとした声がすぐさま聞こえてくる。店内は清潔で、席に着くとすぐにお茶が急須ごと出てくる。とても行き届いていて、商売を楽しんでいる雰囲気が伝わってくる。草臥れた感じがない。

かつ丼が支持されているようだが、夜が早い予定だったのでラーメンをお願いする。肉の仕入れがいいのか、ラーメンのチャーシューはロースとバラ肉の二種が乗っていて、少し得した気分になる。あっさりとしたスープは昔気質を感じさせるこの店らしく、やや柔らかい麺と合っていた。食べ終えてほっとするような穏やかな一杯だった。
Dscn2255

//////////////////////////////////////////////////////
今回の旅は深まる秋の静けさが感じられる旅となった。今度は米原の伊吹山ハイキングも取り入れて、同じルートを辿ってみたいと思う。
Dscn2209
多治見の永保寺で見かけた山茶花

栗きんとん本家 すや 本店和菓子 / 中津川駅
昼総合点★★★☆☆ 3.7

伝統銘菓 佐和家和菓子 / 中津川駅
昼総合点★★★☆☆ 3.4

二葉軒和菓子 / 中津川駅
昼総合点★★★☆☆ 3.5

平和定食・食堂 / 中津川駅
昼総合点★★★☆☆ 3.5