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2020年4月 3日 (金)

春光駘蕩筑豊肥7:檸檬樹・珈琲店ミマツ・カフェBGM・Tan's bar

唐津・大分・由布院で立ち寄った喫茶。

【檸檬樹】
唐津駅から線路沿いに少し行ったところにポツンとあり、近隣の住民の憩いの場としてその任に当たっている様子。
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「欧風」と呼びたい佇まいの店は中に入るとドライフラワーがたくさん下げられており、また窓の外にも季節の花が咲いていて心和ませるものがある。
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器の街だけあって、カップも品の良い優美なもので供されて、馨しい珈琲の香りとともに少しだけリッチな気分になる。
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古き良き喫茶店文化がきちんと動態保存されていることを嬉しく感じた。
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【珈琲店みまつ】
大分まで列車に随分揺られたので、ホテルに行く前に小休止しようと行きがけにあるこちらに伺う。プレスの利いた真っ白なシャツを纏う店主が醸し出す雰囲気もあって、ピンとした空気が店内を覆っている。しかし静かに丁寧に珈琲を入れる様子を見ている内に直に慣れて、時折チンと音を立ててやかんから上る湯気の行先をあてもなく眺めたりして供されるのを待つ。

驚いたのはアイスコーヒーを頼んだ家人にはクラッシュアイスを敷き詰めて保冷された生クリームが、繊細で瀟洒なガラス容器で出されたこと。確かに生クリームの鮮度を保つにはこれ以上の方法は無いように思うが、たかが一杯にここまでする気働きに感服した。こちらが頼んだカフェクレームも、ウィーンのカフェのメランジュもかくあらんと思わせる見事な泡立ち具合で、ごく軽快な味わいの仕上がりに深く満足した。本筋の店を求める向きには申し分ないと思う。
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【カフェBGM】
モーニングをやっているとのことで、朝食をとりに伺う。ビルの二階の店は思ったより本式の造りで壁面には名画がずらりと並び、天井の梁や鉄の柵などを見るにかすかにアールヌーヴォーの風情を漂わせていて好もしい。
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そうしてそういう空間に孫が書いたじいじの画が飾られてるのも妙に馴染んでいてこれも好ましい。モーニングはこれぞモーニングというもので過不足はなく、店内にかかるエヴァ―グリーンなマスターピースも耳に心地よくて、朝からいい空間でゆったりでき満足した。

【Tan's bar】
長湯から明礬に向かう途中、由布院を経由した。それは矢張山荘無量塔のTan's barで暖炉の熾り火を眺めながら、閑雅なひと時を過ごしたいが為だった。

宿に着くと丁度チェックインの時間帯だったので、入口に従業員がずらりと並んでいて少し気後れしたけれど、barへ行ったら誰も居らず貸切状態だったから堂々と暖炉の前に陣取って、大好物のPロールを相方に「赤い翼竜」と勝手に呼んでいるスピーカーから流れるバロックに身を委ねる。
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実に至福の時間で、半醒半睡を揺蕩う心地よさと言ったらない。しかし、後から来た老夫婦のシャッター音の連続と店員同士の喋り声に中断されてしまったのはいかにも口惜しかった。この空間を完全に堪能するにはオフシーズンに泊まって利用するほかなさそうだ。
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↑熾り火具合は申し分なかった。

2020年3月20日 (金)

春光駘蕩筑豊肥6:大分温泉巡り・日乃出食堂

三日目。大分に来たのだからやはり温泉を巡るということになる。朝、大分駅に行きレンタカーを借りていざ出発。
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↑大分駅入口の山口晃作品。少し時間が足りなかったようで・・・

じゃらんのクーポンを使ったとはいえ、48時間で5千円ちょっと。数少ない金融緩和のメリットを享受する。しかも普通車を頼んだら空いていたからかハイブリッド車のアクアにアップグレードしていて実にラッキー。その驚きの低燃費を体感することになった。
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まずは長湯温泉に向かい、その外れにある「ながの湯」へ。天気もよく、九重連山の眺めも申し分ない。
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1時間ちょっと走って到着。
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時間帯によっては混み合うとのことだったが、この日は先客はなく湧出量が凄いという家族風呂をいくつか覗いて、一番激しい右の浴室へ。
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とにかくボコボコともの凄い量がかけ流されていて新鮮な湯であることこの上ない。金臭さが強く、少し茶色がかった見た目から濃ゆい泉質の雰囲気を漂わせていたが、案外さっぱりとした浴感。温度も申し分なく、明るい春の日差しを浴びて第一湯としてはなかなかだった。なお、長湯温泉にほど近いが、泉質は異なり炭酸感は全くなかったことを付言しておく。

続いては前回友人と訪問して驚嘆させられた七里田温泉下ん湯へ。2月に入浴となると寒くて耐えられないかも・・・と思っていたが、幸いなことに季節が2か月進んだかのような陽気でむしろ七理田温泉日和。この幸運に謝して早速入湯。
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男湯は先客2名でスペースは狭め。しかし入ってしまえばそんなことは気にならないくらい見事な泡立ちで、体中の毛という毛に微細な泡がついて、自分がスピッツか雪男にでもなった気分になる。そうして3分もすると泡が連結されて大きくなり、スプライトを注いだ時の様にシュワシュワと水面に立ち昇ってくる。それを飽かずに眺めていると、得も言われぬ無の境地が一瞬訪れて、羊水の中で揺蕩っていた頃の記憶が蘇るのではないか・・・という錯覚すら起きた。いや実に稀有な湯だ。
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↑脱衣所から見た階下の浴槽

初めての家人は後半独占できたようで満足げに上がってきたから、似たような心地を味わったのかもしれない。とろとろとした日差しは相変わらず心地よく、まさに春光駘蕩という良い気分で昼をとることにする。

【日乃出食堂】
近くに定食を頼めば数種類のお惣菜が食べ放題という豪気な店があるというので出かけてみると、そこはハンデを持つ方々が働く授産施設だった。しかし、蔵を改装したと思われる外観や木をふんだんに使った内装は随分洒落ていて、いい意味で予想を裏切られた。
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また食べ放題の惣菜も注文した和風ハンバーグも手をかけてきちんと作っていることがありありと感じ取れ、また実際身体が喜ぶ美味しさで実にいい。
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客に誠実に向かい合い、きびきびと働く店員の方々の姿も清々しく、思わず心の威儀を正すこととなった。こうしたところが広く支持されているようで、昼時を過ぎた時間帯だったが満員御礼。山間の目立たないところで静かな革命が起きていることを知り、大いに嬉しくなった。

2020年3月15日 (日)

春光駘蕩筑豊肥5:キッチンWILL

大分ではホテルマイステイズ大分に宿をとった。水回りがリノベーションされていて全体に清潔な雰囲気。
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武漢騒ぎで中国人の来日が止まっていたからか、これで1泊6千円ちょっとというのはお得に感じた。(ちなみに緊急事態宣言渦中の今は4千円と破格の御値段)

駅から少し遠いここに決めたのは、大分にわざわざ一泊する理由である「キッチンWILL」にほど近いからだ。4年ほど前、恐る恐るスナックビルの一室のドアを開けて入ったら旨い肴と日本酒が揃った良店で、ご主人とも話が盛り上がり「今度は家人を連れてきます。」と再訪を約したのだった。その後、あれよあれよという間に人気店になったようで、今回はかなり早いタイミングで予約を入れて伺った。

開店と同時に伺ったが直にカウンターが埋まり、奥の座敷も宴席が開かれてあっという間の大盛況。皆予約の客のようで、人気の高さがうかがえた。

ここに来たならばとにかく旨い魚を・・・と思って刺盛を頼むと、この日は関鯖・縞鯵・間八・鰤・鮃・鯛と好みの青白を中心とした魚たちが見目麗しく盛り込まれて供された。
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包丁が冴えわたり、惚れ惚れするような身のエッジに見蕩れるのもそこそこにして口に運ぶと、舌をたぶらかす様な婉然ぶりを見せて、その潤みをたたえた身にゾクッとさせられる。おまけに二月初旬と時期が良かったからか、どの魚もごく品の良い脂が延々と口中にこだまするので、思わず目をつむって味わいに集中することになる。この凄艶な魚たちをまた食べることが出来た悦びにほくそ笑みながら「庭のうぐいす」を流し込んでやると、ホーホケキョの一つも言いたくなるぐらいの昂揚感に包まれた。

この他焼き椎茸や白子酒蒸し、数の子西京漬けなどなどをいただき、最後は琉球丼できっちり〆て結願と相成った。ご主人は終始忙しそうだったので、御勘定の時に4年ほど前に伺った話をすると「今日はお愛想なしですみません。」と言われてかえって恐縮した。次回こそは前回訪問時に入荷していなかった盛りの鮎を食べて、大分の山海の幸をまた存分に堪能したいと思う。御馳走様でした。

意気揚々店を出て、ほど近い坂茂設計のOAPMの美しい夜の姿も拝めたし

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連日のカラオケも盛り上がって、個人的には申し分のない大分での一夜となった。
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2020年3月 7日 (土)

春光駘蕩筑豊肥4:牧のうどん・開花堂・まる八ラーメン・川島豆腐店・博多の駅弁

博多と唐津で食べたものを順に。

【牧のうどん】
博多っ子はラーメンよりもうどん好きが多いという話を聞いて、噂のダルダル麺が食べられるという博多バスセンター地下の牧のうどんに行く。昼には少し時間があるタイミングだったが、店内はほぼ満席。なるほど噂通りかもしれないと思わされる。

注文した肉ごぼう天うどんは、ムニュムニュした麺の風合いは面白かったが、出汁が甘だるくていただけない。東京人は無難にラーメンを食べた方が良いように感じた。
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【開花堂】
唐津でも和菓子を・・・と思って訪れたのがこちら。風格ある店構えだが店内はよく手入れがされており、季節柄雛飾りもあったりして実直に御商売に精を出してる雰囲気が漂って好感触。銘菓の「さよ姫」と季節の上生菓子を買って帰る。

生菓子は早蕨に菜の花きんとん。緑の発色に春の日差しを感じさせ、優美な風情もあって好もしい。味わいも春の日向のようにほっとする甘さで心和む。
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落雁である銘菓のさよ姫もパッケージに新味があっていい。
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唐津で束の間甘やかな時間を過ごしたいのなら足を運ぶべき店だと思う。

【まる八ラーメン】
ふじわらで飲んだ帰りの〆に伺う。家系ラーメンで育った身としてはいつも博多で食べる豚骨ラーメンはガツンとしたインパクトに欠けるな・・・と思っていたが、ここのものは野性味あふれるスープでその荒々しさが心地よい。ようやく念願叶う豚骨ラーメンに出会えた気がする。
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また、豚骨系を食べた時に感じる化学調味料の後味の悪さもほとんどなくその点も嬉しく感じた。飲んだ後の〆に是非。
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【川島豆腐店】
朝食は三度目となるこちらで。相変わらずざる豆腐は濃厚だし、厚揚げはサクトロッだし、豆腐のうずめ粥の出汁も程が良く、実に完璧な朝の幕開けとなった。KARAEの目の前だから、ホテルに泊まった際はここでの朝食を見逃す手はないと思う。
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↑豆腐のうずめ粥。粥と言っても押し麦も入っていてさらさら頂ける。

【やま中と折尾のかしわ飯】
時間が無くなって昼食を断念し、博多駅で駅弁を買い込み列車内で食べた。折尾のかしわ飯が食べたかったが、生憎売り切れ。「おかず付きの豪華版ならあります」とのことで、それを頼むと駕籠を模した二段重の仕様。
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ただなりは立派だが、おかず類はお値段相応のもので、かしわ飯単品の方が個人的にはありがたかった。
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「やま中」の寿司の折詰は手堅くまとめてあってなかなかのもの。
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鯖の棒寿司に期待していなかったが、身に厚みもあって酒を用意しなかったことを悔いる出来。次回はそういう失態が無いようにしたい。

2020年2月25日 (火)

春光駘蕩筑豊肥2:季節料理ふじわら

新型コロナウイルスの拡散でくさくさした日々を送っているので、現実逃避すべく春先の旅の記録に逃げ込むことにする。

唐津へわざわざ一泊だけしに来たのは、前回とても好印象だった「一天張」に行ってハタの刺身で万齢の新酒を堪能したいと思ったからだった。しかし、祝日だったからか生憎休み。HPにはそういう記載は無かったが、周りも皆閉まっていたので仕方がない。

そこで建物に風情がある鰻の竹屋にしようかと出かけてみると、閉店間際で炭も落としてしまっている様子。では・・・とグーグルマップで探索していて気になった「季節料理ふじわら」に家人が電話してみると開いているという。「受け答えから言って間違いないと思う。」という家人の直感を信じて店に向かう。

古い建物の奥に通ずるごく細い路地を行くと、以前は茶室か水屋に使っていたかと思われる小ぶりな建物があり、そこが「ふじわら」だった。
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あれこれ食べてみたかったので、4,500円で七品出るというおまかせをお願いする。その際「魚が多い方が有難いです。」と伝えると、先付以外は全部魚介を使った皿にしてくれて嬉しくなる。
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お造りは平目・かわはぎ・あおりいかと白身系が揃ったが、かわはぎにはおぼろ昆布で巻いて旨味を強めたりして変化があり、その味わいの異なる諧調を楽しむことが出来た。
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焼鰆には菜花をマヨネーズで和えたものが載せてあって面白い趣向。春めく頃合いを強く感じることに。
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名残のふぐでちり鍋風が出たと思えば、
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蕗の薹と共に海老の入った揚げ蓮根餅が出たり、
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冬から春に進む季節の端境に今居るのだなとしみじみ感じさせられる皿の数々に唸った。

期待していた「万齢」の超辛口生酒も唐津焼の片口で供されて気分を盛り上げてくれる。
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しっくりとした歯応えが心地よいなまこ酢も申し分なく、もう少しだけ酒を楽しみたいので・・・と無理を言ってお願いした烏賊の塩辛も円やかな味わいで品がよく、どうしても酒が進んでしまって困ってしまった。
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近隣の方からも愛されているようで、注文してないのに定食風のセットが運ばれてくる常連の方がいたりして、なかなか羨ましく思えた。今度唐津に行った際には、こちらと一天張をはしごして存分に唐津の夜を堪能したいと思う。

2020年1月10日 (金)

10年代を振り返る1:食と旅

10年前に00年代を振り返る記事を作成したので、今度も10年代を回顧して記憶にとどめる内容を記載しておこうと思う。

【食事編】
齢も齢なので鮮烈な印象を残す店や一皿は少なくなった。特に東京においてはその傾向が顕著のようで、記憶に残る店の数々は旅に出た際に出会ったものが太宗だった。

●おかや・・・改めて甘鯛に開眼した店。
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●ジンギスカンきっ川・・・10年前だが、もうこの頃のような食欲は戻らないだろうと懐かしい気持ちに
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●一升びん・・・平日の昼、捌きたてのホルモンの旨さは比類絶無。
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●大甚・・・東日本大震災で名古屋に逃れた時に、ここで飲んでようやく胸のつかえが下りてその晩はよく眠れた。個人的には一番好きな居酒屋
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●民宿みずうみ・・・訪れた翌々年には営業を止めてしまわれた。天然鴨の妖艶な身は忘れがたい。
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●キッチンウィル・・・外見と中身のギャップに嬉しい驚き
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●添記焼臘と上海緑楊邨酒家・・・少ない情報を手繰り寄せて辿り着いた充足感
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●惣門・・・季節ごとに行くことを決めている。残すは春と冬。
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●仁平寿司・・・威風堂々の店構えに魚の真味と接遇の妙を兼ね備える。
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また、店は特に挙げないが、この10年では和菓子と純喫茶の店に行く機会が大幅に増えた。消えゆくものへの判官贔屓がその根底にある。

【旅編】
●18きっぷの旅・・・弾丸ワンテーマ旅を安価に。
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●大阪・神戸弾丸・・・18きっぷにはまるきっかけは新幹線開業50周年を記念した往復5,000円切符を活用したこの旅から。
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●北木島・・・2度訪問。のんびりゆったりして、鱈腹旨い魚を食べる幸福。
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●香港2017・・・はじめての長期滞在で世界が拡がった。
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●江南・・・日本文化のオリジンに触れる。
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●明礬温泉・・・二度訪問。泊った豊前屋の湯は白濁硫黄なのにPH中性で身体に優しく、宿の雰囲気も馴染む。
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2020年1月 5日 (日)

アラジン

暮れも押し迫り、家庭内忘年会でもしようかという話になって、信用している人の評価が高い天現寺橋のアラジンへ行ってみることにした。恵比寿からテクテク歩いて10分以上と決して立地は良いとは思われないけれど、ランチタイムはほぼ満席の状況で根強い人気を伺わせた。

プリフィックスのランチの内、前菜二品にメイン・デザートが付くコースにして、前菜は鶏白レバーのプリン仕立てと鴨肉のサラダ、メインは季節だから鹿肉の赤ワイン煮込みをお願いする。

30代から尿酸値がボーダーを超えている身としては、そろそろこういうプリン体の凝集したような一品は食べられなくなるだろうと注文した白レバーのプリンは背徳の味。こってりしすぎず、さりとてあっさりしすぎず絶妙なもので次の皿への期待も高まる。
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が、鴨肉のサラダはサラダの底に鴨肉が妙に整然と並べられており、出来合い感が強くて少し興醒め。しかも極薄切だったから肉の旨味に厚みがなく拍子抜けした。
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ではメインで挽回を・・・と期待した鹿肉の煮込みは「ストーヴに入ってサーブされる」と見かけたのでさぞやたっぷりの量なのかと思いきや、ご飯茶碗ほどの大きさで、しかもそこに付け合わせの野菜も入っているから、肉を喰らう醍醐味は望むべくもなかった。
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全体にポーションが小さく、よく言えば品の良い、悪く言えば物足らない感じが残った。それでもデザートのリンゴの薄焼きパイは、卒業旅行で出かけたパリでの最後の夜、奮発して入ったレストランのものを彷彿とさせたので、悪い印象は残らずに済んだ。人件費高騰の中、手練れのギャルソンを配して細やかな接遇を供しており、束の間優雅な雰囲気に浸ることは出来るから、女性目線では優秀な店なのかもしれない。

2019年12月11日 (水)

東急バス一日乗車券で師走に紅葉と名建築を楽しむ

代々木上原にある駒場公園内に旧前田家の豪奢な邸宅が残っていて、紅葉も楽しめるというので色々調べると東急バスを乗り継いでいけることが判明したので、例によって1日乗車券をチャージして出かけてみることにした。

駒場というだけあって、東大の施設が散在する通りを行くとその名も「代々木上原」というバス停があって、降りて1分ほどで公園に着く。森閑とした道を行くと、車寄せも備えた見事な洋館が現れる。
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昨年整備されて一般公開され、あちこちで取り上げられていたがブームは一段落したようで、全然人を見かけない状態であちこちの部屋を覗く。
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この建物の建築費はどこから来たのか興味が湧くほど造りは本式で、いかにも貴族の館という風格を兼ね備えている。さすがは重要文化財に指定されているだけのことはある。
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その建物を独り占めしている時間がかなり長くて、大変贅沢な時を過ごせた。

隣には和館があって、そこは見事な紅葉の景色を備えていて、付書院はぼんやりと紅に染まっていて情緒深い。この環境なら一句詠んでも、上出来のものが誂えられるだろうと思う。
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満足して近くの岬屋に向かう途中で、共にマスクのカップルとすれ違う。「俳優の青木某氏では?随分地味な奥さんだな・・・妊娠しているみたいだけど。」との感想が脳裏をよぎり、帰宅して調べたら相手は優香だということだった。

岬屋は細い路地にあるが、暖簾が揺れていてようやくそこだと気づく位小体な店でちょっと意外。元々工場がメインで、そこに直売できるスペースを作ったような雰囲気だった。

初霜は餡の中に栗餡と思われるものが包まれているが、味わいの諧調がほぼ変わらないのでその効果は判然としなかった。
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枯露柿は大福を柿に模したもの。中の餡の滑らかさと軽い口当たりは出色だった。
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黄身時雨はきんとんの様にも見えるが、かっちりとした造り。しかし餡はふんわりしていて、この辺りは最近評価が高い店に共通する仕上がりで人気があるのも頷ける。
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再び渋谷に戻って大井町行のバスに乗り、大崎広小路で降りて五反田の「亜細亜」へ。昼から少し奢って五目そばを頼む。「うちのは塩味ですが宜しいですか?」とミャンマー出身と見受ける店員が確認してくるあたり、よくしつけが施されていて安心感を覚える。そこまで気働きが行き届いているから、五目そばも良かった。
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凡百の店では火の通りが甘い人参や白菜がたんまり載っていて幻滅してしまうこともあるが、ここのはきちんと味が染みこんでいて、確かな具材にきちんと下拵えしてあるからそれぞれの味わいが際立っていていい。巻繊のような面白い具材もあって、値段相応の一杯だったからとても満足した。

食後、一旦帰宅した後、夜になって川崎までバスで出てGUの超大型店限定のブーツを2千円で買う。こういう機会がないとなかなか来れないから、GUには是非都内城南地区にも超大型店を開設して欲しいものだ。凡そ所期の目的は達成したので、駅に隣接したつばめグリルで一献。
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中々の距離を移動して(総移動距離41km)歴史ある建物に紅葉と和菓子、それから老舗中華に買い出しまで済ませて、満足感に浸りながら傾ける黄金色の液体は、思っていた通りの旨さでするりと胃の腑に流れ込んでいった。

最後に一句。 ”紅葉を 師走に愛でる 時来たり ”
・・・あの付書院の効果はそんなには無いようだ。

2019年11月25日 (月)

呂万寿

【2019.11追記】
引き続いて通っている。手頃な価格で季節ごとにとりどりの菓子を揃えてくれていて頼りにしている。


新春には寿ぐ意匠の菓子が揃う。
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正月菓子の花びら餅もちゃんとそろえているのが心憎い。ふわふわの餅と白味噌餡が古式ゆかしい味わい。
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春は萌黄の浮島に始まり百花繚乱。
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夏は麩饅頭の爽味で暑気払い。蚕豆は姿形が愛らしい。
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秋になると定番の黄身しぐれには焼き目が入って雰囲気を醸し出す。
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春の萌黄は秋の黄葉に。
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その内に栗きんとんが並ぶと朝夕めっきりひんやりしてくる。
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垣根に山茶花が咲き、徐々に進む紅葉に「冬来たりなば、春遠からじ」との思いも募る。
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↑大のお気に入りで冬の愉しみニッキ入り浮島。今年は栗羊羹との組み合わせ。落ち葉がないので勝手に「木枯」との銘を授ける。

年中販売のカステラは乾燥防止のPET容器に入っている。パサつかずに美味しさが長続きする工夫がされていて、予想外のことだっただけに驚いた。最近の砂糖過多のねっとりした生地ではなく、さらりとした古風な風合いが保たれていて美味しかった。
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これからも四季折々の菓子で楽しませてもらえれば幸い。

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↑これが直近購入したものの盛り合わせ。この日は餡の具合が抜群で、絹のように滑らかな舌触りと春のさざ波のように嫋やかで高貴な甘みがこだまの様に舌に幾度も響き渡って、実に甘党で良かった・・・と感慨に耽ってしまった。

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昭和の中頃までに開発された名のある住宅街の近くには細々ながら本筋の和菓子屋が残っている、というのがこの数年和菓子屋探訪を続けて得た法則だ。

田園調布が社長の街なら久が原・御嶽山界隈は部長の街と昭和の頃には言われていたようで、この辺りには確かになかなかの邸宅が立ち並んでいて、そこに店を構える「呂万寿」には見込んだ通り季節ごとに心惹かれる菓子が並ぶ。
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最初に伺った秋口にはふかふかの食感と鮮やかな黄色が特徴的な芋羊羹と艶めかしい肌の薯蕷饅頭に心を奪われた。

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晩秋の頃には「落葉」との銘の菓子を買ってみたが、浮島に一筋入った線のところにニッキが仕込んであって、その薫りにいかにも冬が到来するのだなという心持にさせられた。

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春になると彩りを増した菓子の数々が愛らしく咲き、

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端午の節句には粽が並ぶとのことで出かけたら、店頭一杯に笹巻の粽が並んでいてちょっと壮観だった。

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仄甘くむっちりとした歯応えが奥ゆかしく、笹の爽香に胸がすく想いがした。


これならば水無月も申し分ないだろうと6月下旬に出向いてみたが、見当たらず。しかし替わりに買って帰った水羊羹が良かった。甘みの深度があるにもかかわらず後口の消え具合が鮮やかで、しかも塩漬けの桜葉に巻かれているからそれが後口をさっぱりとしてくれるし、暑い盛りの塩分補給にもなって理にもかなっている。
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↑右下は蛍火を模ったもの

きんとん製の向日葵は少し不格好かなと思ったが、偶々見かけた伊藤若冲が描いたそれに似ていて、古典的な表現方法に則ったものなのかも知れないと思い直した。また芥子の実による種の表現が心憎い。
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↑若冲の向日葵


行く度に色々な発見があるので、ちょくちょく覗いてとりあえずは季節を一回りすることと、店頭に大きな賞状が二つも掲げられているカステラを試してみることとしたい。

呂万寿和菓子 / 御嶽山駅久が原駅雪が谷大塚駅

昼総合点★★★☆☆ 3.7

 

2019年9月22日 (日)

白露冷涼那須湯治3:黒磯明治屋・那須烏山矢沢のヤナ

行きには黒磯界隈で喫茶と買い出しをした。

【カフェイリス】
本当は二日目の昼を買おうと隣のパン屋の方を覗いたが、「おふっ」と息が漏れる値段だったので購入は見合わせ、バスが来るまで隣のカフェで時間を潰す。生まれて初めてラテアートが施されたカフェラテを飲むことになったが、オジサンには照れ臭いだけだった。酪農が盛んな那須の麓だけにもう少し牛乳のクリーミーさが利いていてほしかったところ。
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【明治屋】
春に購入して上生菓子が良かったので今回も宿で食べようと「桔梗」と「萩の花」を購入。いずれもしっとりふかふかの餡で口どけもよく品がいい。こちらは是非温泉饅頭だけでなく上生菓子も味わってほしい店だ。
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帰りは那須烏山まで赴き、ヤナで鮎を食べて帰った。去年行ったひのきやは簗が設置されていなかったので、今度はそれが眺められるところがいいと探したところ、烏山駅11時22分着の列車に乗れば、30分発の市営バスですぐ近くの「滝田」まで行ける矢沢のヤナへ赴く。
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↑烏山駅前のロータリー。緑のバスが乗車した市営バス「馬頭烏山線」

まだ昼時には少し早い時間だからだいぶ余裕だろうと思ったら大甘で、食券を買う長蛇の列が出来ていて驚嘆するとともに覚悟を決める。
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押し寄せる客に人員が不足しているようで、入店して食券購入迄に25分、ビールは走り回る店員に直談判して30分、枝豆が来るまで45分、刺身は60分と全く遅々として進まないが、周りの地元民は慣れたもので根気強く待っている。
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それほどまでに旨いのかな・・・と思って食べた鮎の刺身は今しがたまで活きていたようで卓に到着と同時に口をぱくりと開けたくらいだった。そうして9月に入っているから魚体も大きく、身に厚みがあってなるほど今まで食べた中では一番の歯応えで旨味も強い。人気の訳はこれか・・・と思って、遂に店内の自販機のビールを買ってきて塩焼を待つ体制に。

この辺りから帰りの列車の時間との戦いも始まる。13時15分のバスに乗って13時39分発の列車に乗らないと、3時間半近く待ちぼうけを喰らう。焦る我々の前に鮎飯の焼きおにぎりが来たのは入店から70分後の12時55分。
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逸る気持ちを抑えつつかぶりつくと香ばしく焦げた米の薫りの深奥に焼鮎の香ばしさが忍んでいて、ごく品のよい出汁の風味と相俟ってすこぶる旨い。これは普通の鮎飯ではなくてこちらの方がずっと美味しい。

ここから焦れて焦れて堪らない時間が過ぎていき、遂に焼鮎が届いたのは入店から凡そ1時間半、13時12分過ぎ。
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もはやバスは諦めてタクシー会社に配車を依頼してから鮎にかぶりつくと、1匹ずつ串にさして炭火で丁寧に焼かれたものだから、皮はパリッとしていて身はふんわり。そこにじんわりと鮎の旨味と微かな脂の風味が漂って思わず家人と顔を見合わすほどに旨い。ハフハフとかじりついては温くなりかけたビールで流し込み、あっという間に胃の腑に収めた。これが食べられるから、皆じっと我慢の子で待っているのだなと得心する味わいで甚く感じ入った。なんとかタクシーに乗って列車にも間に合ったし、なかなか記憶に残る一食になった。
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那須は涼しく鮎が旨い秋分前後に行くのが一番だと改めて思わされた小旅行だった。
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