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2019年6月30日 (日)

津軽海峡北南20:ル・ブルジョン・開雲堂・大阪屋

特に感銘を受けた個人的弘前スイーツ御三家を別に記すことにする。

【ル・ブルジョン】
オー・ボン・ビュータンで修業された方がやっているというのでアップルパイを買ってみる。開店早々に行ったのでパイはまだじんわり温かく、ほんのりバターが香って食欲をそそる。薄玻璃のようにシャクっと砕けるパイ生地は実に繊細な仕上がりで、中のリンゴのコンフィチュールとの相性もいい。後口さっぱりで口に油っこさが残ることもなくごく軽快な仕上がりで、これなら他の品も間違いないだろうから、あれこれ買えばよかったと後悔した。
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【開雲堂】
土手町の商店街に重厚な店舗を構えていて、一種のランドマークのようになっている。中はほの暗い明かさに保たれていて、日本文化の隠れた功労者である陰翳を大事にしている姿勢が好ましく感じられた。和洋いずれの菓子も手掛けていて目移りしたが、ここは初心貫徹、七夕を題材とした「織姫」と願い笹を模った上生菓子を買って帰る。
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織姫は橙色と桃色を隔てる乳白色の嶺が天の川のように見え、そこにまぶされた砂糖の粒子が無数の星々を、そして金粉がひときわ輝く織姫星ベガを表現していて、二寸たらずの練切に小宇宙が見事に抽象化されているのに驚かされる。そして朝出来の新鮮なものだったようでふっくらとした餡は甘さの調子の品が良く、その口溶けの良さは出色だった。流石はそれと知られた名店の味わいで甚く満足した。

【大阪屋】
和菓子の老舗としては開雲堂と並び称される店だったので、弘前を発つ日に寄ることにした。創業から凡そ400年、京都でもこれに太刀打ちできる店はほぼ無いほどの伝統を重ねてきた店はやはり威容を誇る店構えで、金看板に店の矜持が伺えた。
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中に入ると名高い螺鈿細工の棚が見えて、鈍く放つ光の屈折に目も眩みそうになる。
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↑写真はネットから引用

上生菓子を二つ、それにここでしか買えない銘菓「竹流し」を購入。上生菓子はなんと190円と破格の御値段。雨露に濡れる紫陽花二題は、型取りしたものはしっくりと、きんとんのものはふかふかとした餡の具合でその違いが楽しめるのが嬉しい。
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濃いめに抽出した麦茶と一緒に頂いたら「梅雨空続きも悪くはないな・・・」と思わされたから、流石の仕上がりである。

大名物「竹流し」は、まあ江戸の昔はそうないもので驚かされたかもしれないけれども、蕎麦ぼうろが遍く流通している現代にあってはそうでもないだろう・・・と思ってひとかけ食べてみたら、絶妙の脆さといい、微かに立ち昇る蕎麦の香ばしさといい、ごく穏やかな甘さ加減といい、実に質朴な風味なのだが切ない気持ちにすらなる逸品だった。
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↑純白無垢の缶が高貴さを演出
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北の地の厳しい環境にあっても甘やかなひとときを楽しみたいという切実な思いがこの一菓に結晶したようにも思え、それを数百年と途絶えずに作り続けてきた店の凄味を知ることになった。もう一つの銘菓「冬夏」も素晴らしいということなので、必ず再訪して四百年の星霜を余すところなくこの身に併呑したいと思う。

2019年6月29日 (土)

津軽海峡北南19:弘前和菓子店めぐり

弘前はいい和菓子屋も多くて、その文化的豊穣ぶりが羨ましくさえ思えた。

【観世】
宿から近かったので初日散歩がてら寄ってみるとショウケースにずらっと上生菓子が並んでいて、その下の段にはこれも愛らしい干菓子の数々があり思わず「ほぅ」と感嘆する。

「雨上がり」との銘のきんとんはまさにその情景が眼前に広がるもので、丁寧な造りで美しい。そうしてふんわりとした餡の具合が心地よく、消え様も見事で実に美味しい。
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「爽楓」の心洗われる表現も美的感覚の鋭さを感じさせるもので一遍で気に入った。
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帰京する日に開店一番土産を買いに行くと、ご主人は奥で熱心に餡を丸めていて菓子造りに余念がない様子。朗らかな笑顔がチャーミングな女将さんにお願いして撫子と落とし文、それに干菓子の青紅葉と紫陽花を買って帰る。生菓子はやはりくどみがなく素直な甘さの餡がよく、干菓子も季節が感じられる趣深いもので感心した。
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小体な店でさりげなくこんな美味しい菓子を生み出していることに少し感動すら覚えた次第。

【双味庵】
弘大から土手町へ戻る道すがらに立ち寄って上生菓子を買ってみる。こちらは手広く菓子を揃えたなかなかの店構えで、季節にだけ焼くアップルパイも美味しいとのことだから、少し期待してしまう。しかし「瀧しぶき」「青梅」いずれの餡もねっとり感が強くて甘さが口に残ってしまう。造形は美しいだけに惜しい気がした。
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【三笠屋餅店】
名物の「あさか餅」はあんまり見かけない餅菓子だったのでどんな味わいなのか気になって、少し遠かったが自転車に乗って買いに行った。店内でも楽しめるようにはなっていたが、予定が詰まっていたので買って帰り宿でぱくつく。
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形としては阿闍梨餅に類似しているが、こちらは餅で出来ているからこの形を維持するのはなかなかの技術がいるように思う。そうして中の餡が大変に滑らかでかなり緩めの作りだから「どうやってこの餅の中に入れたのだろうか・・・」と?マークが脳裏をよぎる。

そうした製作の苦労はさておき、周りにまぶされた胡麻とあられ粉の香ばしさがぱっと口に広がった後、滑らかでくちどけの良い餡がするりと流れ込んできて、柔和至極の餅と渾然一体となるのだから、それは旨いに決まっている。もう少しこれを食べる腹を開けておくべきだったと後悔するくらいだった。次に訪問した際は、作り方の秘訣を聞きながらパクパクと何個でも食べてみたい気がする。
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【川越黄金焼店】
土手町の通りで百数十年愛され続けた弘前っ子のソウルフードだというので、ふじやで飲んだ後に寄って買って帰る。二人連れなのを見て「一個ずつ包もうか?」と気遣いをしてくれたが、この辺りのことがさりげなく出来るのが老舗たる所以なのかもしれない。

1個60円の黄金焼は今川焼とそんなに違わないのでは・・・と思ったが、あれとは違う。皮がふんわりもっちりとしていて、しかも白餡が甘やかに香って一口ごとに不思議な幸福感が味わえる。まさか1個100円に満たないもので驚かされるとは思わなかったが、これはいい。実にいい。飲んだ後でも全く響かない。流石は伊達に長く続いている訳ではないと感服させられた。
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2019年6月28日 (金)

津軽海峡北南18:弘前喫茶店めぐり

こちらにも記事を書いたが、それ以外にも弘前にはいい喫茶店が沢山あり、あちこち寄って馨しき珈琲の香りに浸った。

【時代屋】
勝手に「弘前の臍」と命名した青銀前交差点にある三上ビルの一角にあって、朝早くからモーニングをやっているので朝食をとりに行く。中はこじんまりとしていてカウンター4席にテーブルが二卓。カウンターには常連の方がいたのでテーブルに座る。

たっぷりのサラダにハムエッグとトーストがセットになったモーニングはなかなか豪勢で朝から食欲も湧いてくる。
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マダムはカウンターの方々と談笑していて時折「わいはー、わいはー」と聞こえてくる。正調の津軽弁が心地よく耳をくすぐってくれ、珈琲の薫りもあってしゃっきりと目が覚めた。帰りには「どうもありがとうねー」と優しく微笑みながらマダムが出口まで見送ってくれて心温まる。良い一日をスタートさせたいなら、行ってみるべき店だと感じた。

【弘大カフェ】
仁平寿司で昼食をとった後に寄る。キャンパス内に可愛らしい洋館が見えてきてそれが店だった。
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珈琲はバイトの方が淹れるので格段の味わいはなかったが、古い建物の雰囲気を保つ一室で窓から入る爽風に吹かれながら飲むアイスカフェオレは風情があった。
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【ひまわり】
弘前では名喫茶として知られた店とのことで、立ち寄ってみる。二階もあるようだったがこの日はクローズされていたので一階の一隅に席を得る。すると「普段は二階も開げてんだもはー、今日はあたしの足が悪ぃんでぃね」と人懐っこい老マダムに声をかけられる。口には出さない客の気配を読み取る辺り、流石接客が練れている。

ここでは家人が頼んだアップルチーズケーキが美味しかった。チーズの酸味とリンゴの酸味の微かな差が諧調を生み、それが美しい余韻につながっていていい。途中店内のBGMが止まってしまって「ごめんね、止まっちゃった」と屈託なくマダムが呟いたので「お客さんたちの話す津軽弁の旋律を楽しみますよ」と答えたら「いいごというね~お客さん」と褒められ、なんだか嬉しくなる。帰りがけレジで少し話すと、泊っている石場旅館のこともよくご存じで、「これ持って行って」とマッチ箱をくださった。
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この知らずに心に沁み入ってくるマダムの人柄がこの店を支えている柱なんだなぁと得心して店を後にした。
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【ルビアン】
飲み屋街にあって、〆の珈琲が楽しめる店とのことで、ふじやで飲んだ後に行く。店の構えは周りの飲み屋に押されて目立たないが、中に入ると純喫茶度数が高くてそのギャップがいい。
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ご主人は寡黙でカウンターの一人客と二人してだんまり巨人戦を眺めていたので、奥のテーブルに座って玉子サンドと珈琲を頼み、静かに一日を終えることにする。呑んだ〆に出来立てのサンドイッチというのは初めてのような気がするが、腹にもたれることもなく、麺類のように汁の塩分を過剰摂取することもなく、不惑過ぎの酒徒には好都合だった。

それにしても独特の暗さとステンドグラスを多用した装飾は、世間から逃避する場所としては実にいい舞台装置になっていて、そこがこの店が長く支持される所以なのかなとも思う。寝る前の珈琲はご法度と聞いていたが特段問題なく寝付くことが出来たから、弘前で飲んだ暁には是非ルビアンで〆るという弘前らしい夜を再び堪能したいと思う。

2019年6月27日 (木)

津軽海峡北南17:高砂・仁平寿司

弘前での昼食は二日とも立派な普請の店でとった。

【高砂】
門を構える「高砂」は敷地に蔵もある豪壮な屋敷で、奥の座敷では精進落としが開かれるなど土地の人の節目節目にも対応する大店だったが、店の人たちは大らかで特段緊張を強いられることもなかった。
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暑かったのでもりそばを食べようとしたところ、こちらではざるが大盛であると書かれていたので、そちらにする。
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待つこと数分、供された蕎麦はほっそりと白い更科蕎麦で、店の雰囲気によく合っていた。
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汁は甘からず塩辛ずの程よいもので、するりするりと胃の腑に滑り込む。弘前はアップルパイや和菓子など甘いものの宝庫なので、昼を抑えめにしたいという向きも多いと思うが、ここなどその要望にピタリと応えてくれると思う。

【仁平寿司】
九年前に弘前に来たときには情報が少なすぎて躊躇してしまったが、今回は様子が判ったので予約を入れて伺うことにする。弘高下駅からすぐの店は高砂よりもさらに豪奢な造りで、一見では寿司屋であることが判らないかもしれない。
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中に入っても銘材をふんだんに使った見事な柱や梁が壮観で店に品格を与えていたが、不思議と威圧感は感じずに唯々その直線の決まった美しい空間を堪能することが出来た。電話した時にお決まりの3,000円があるとのことだったのでそれを二人前頼んで、座敷から望む窓外の青紅葉を肴に盃を傾ける。
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直に華麗な色絵が施された大皿に盛られて端正な寿司が登場。一瞥しただけで「これは間違いないだろう」と思ったが、果たしてどのネタも申し分なく美味しくて相好が崩れるのを禁じ得ない。
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どのネタも口に入れると、その真味が真っ直ぐに舌に伝わってくるのだがその加減はあくまで優美で厭らしさがまるでない。そうして「ほう、これは・・・」と堪能していると、蜃気楼のように跡形もなく風味が消えていく。だから、続けて食べても前の魚の余韻が混入することなく、毎度毎度きちっとその魚の真味のみが舌にたち昇る。練達の仕込みがなされていることがありありと感じられて、いや実に驚かされた。

まだいけそうな腹具合だったので、追加に鉄火巻をお願いすると「巻物でしたらうちの梅巻は他所にないものだから是非食べて行ってください」とご主人からのお誘いが。もちろんそれも頼んで、これもお勧めという穴子と美味しかった北寄貝を追加で握ってもらう。
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鉄火は勿論美味しいものだったが、お勧めのカリカリ梅を巻いた梅巻はなるほど他にはそうないかもしれない。梅雨前の少し蒸し暑い時だったから、一緒に巻かれた紫蘇の香りとシャキシャキとした梅の歯応えが心地よく感じられて、印象深い一品になった。

女将さんの細やかで心安い接客は気持ちの良いものだったし、大女将もネタの下拵えを手伝ってきっちりその任を果たされているなど家族皆で客をもてなそうという真摯な気持ちが満ちていて、とてもよい時間を過ごすことが出来た。ここは季節を替えて必ず再訪したいと思う。御馳走様でした。
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2019年6月26日 (水)

津軽海峡北南16:ピッツェリア・ダ・サスィーノ、ふじや

弘前最初の夜は自家製のモッツァレラチーズを使ったピッツァが楽しめるというピッツェリア・ダ・サスィーノへ行った。昼は大盛況の店と聞くが夜の早い時間はまだ空いていて、ゆったりと生ビールを呑み自家栽培の野菜を使ったサラダや生ハム・モッツァレラを食べながらピッツァの焼き上がりを待つ。
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すると焼き手の方が「二枚ともマルゲリータのご注文ですが、一枚は何か別のものに致しましょうか?」とテーブルまでやってきたので「マルゲリータが大好物なんです。それでナポリにも行ったぐらいで」と伝えると、勇躍窯の前に戻って焼き始めてくれた。やってきたピッツァは焼けて尚トマトソースに潤いがあって瑞々しく、自家製モッツァレラも気持ちよいぐらいに伸び、その上旨味も充分あって期待通りの美味しさ。
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久々に上出来のマルゲリータにありつけた悦びに浸っていると「もう一枚は今のとは少し違った味わいにしてみますね」と再び焼き手の方が登場。その二枚目、確かにチーズのコクが増して最初のよりもパンチがある感じ。「そうなんです。丁度よく熟成が進んだモッツァレラを使ってみました。」と嬉しそうに仰る。そこからナポリに修業に行ったことや、我々が訪れたことのある店の話でも盛り上がる。

まさか弘前でナポリ仕込みのピッツァに出会えるとは思わなかったので嬉しい驚き。それにしても自家製のモッツァレラでピッツァを焼いているなんて日本ではここぐらいだろうから、弘前に来たなら是非食べに行くべき店だと思う。

【ふじや】
旅行最終日の夜は気の利いた店で旨い酒と魚をやりたいと思い、評判の良いきくやに5日前から予約を入れて行く。店は満席で入口にはその旨の張り紙がしてあって、否が応でも期待が高まる。
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魚をたっぷり食べたかったので刺身の盛り合わせに銀鱈西京焼き、穴子白焼き、とうもろこしの天婦羅などを豊盃で頂く。

刺身の盛り合わせはたっぷりやって来てどれも大ぶりな切り身だったが、如何せん味わいの輪郭が少しぼやけて感じられ、ちょっと残念。それでも鮃と帆立は雲丹と一緒に食べてコクを足してやったら美味しかった。これは昼に仁平寿司でいい魚を随分食べてしまったことによるマイナス補正が働いてしまったのかもしれない。
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一方、銀鱈は味噌の漬かり具合が絶妙で、その風味と脂の乗った身の協奏は得も言われぬものだった。
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穴子白焼きとトウモロコシの天婦羅はまずまずといったところ。期待していた分ハードルを上げ過ぎた感があるが、どうもここはコースでお願いすると満足度が上がるようになっているらしい。次回訪問時はそうしよう・・・と階段を下りながら思った。

2019年6月25日 (火)

津軽海峡北南15:弘前名所めぐり

前川國男は江戸東京たてもの園で旧自宅を訪れた時に直線が生かされた小ざっぱりとした雰囲気に好感を持っていた。その彼が母の故地である弘前に多く作品を残しているというので巡ってみた。デビュー作のこぎん研究所は変哲のない建物に見えたが、それほど普遍性のあるデザインとして日本中で模倣された証左であるようにも感じた。
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ここは二階が前川氏のミニ展示室になっていて、氏の略歴や設計した建物の模型や写真パネルが貼ってあったから、初心者の我々にはうってつけだった。無料ではあるが、寸志として300円寄付しておいた。
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弘前城内には市民会館と博物館が隣り合っている。市民会館に微かな郷愁を覚えたのは、子供の頃に何度か行った桜木町紅葉坂上の神奈川県立青少年センターによく似たデザインだったからだ。似てるのは道理で、これも氏が設計している。
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中に入ると有名なステンドグラスが目を惹くが、これは数年前に作成されて嵌め込まれたものだという。
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こういう建築物だと安易に手を入れようとせず墨守しがちだが、そこに安住せずに沈思黙考を続けて、建物の雰囲気に寄りそう美しい光の景色を生み出す辺り、弘前の人々の美的感覚は相当に優れているように思う。

博物館では昔の弘前の様子を回顧する特別展示がされていて、明治期創業の石場旅館が古地図に載っているのを見つけたりして楽しめた。こちらは後期の作でレンガタイルが前面に出ていて作風の変化がうかがえる。よく雰囲気が似ている東京都美術館も氏の設計と知り納得した。
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ここから至近である城正面の市役所もこの作風を伝えていて、統一感があって好もしい。
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城といえば城内の植物園に白孔雀がいるから見た方がいいと言われ、花々を楽しんで歩いていたら、キューキュー泣き声が聞こえるのでそちらに行くと、純白無垢の美しい姿が見えてハッとした。
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繁殖期が近いので求愛の為に羽根が伸びていて、その優美な姿を見ることが出来たようだ。これはツイていた。

この他最勝院の五重塔も青空を分つように屹立していて見事だったし、その三門の前に樹齢300年近いエドヒガンザクラの樹があって、流石の精気を放っていたのも印象深い。
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宿の隣の日本基督教団弘前教会は真白く気品が感じられ、
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中央弘前駅に隣接する昇天教会はアメリカ開拓時代の素朴な信仰心を彷彿とさせて生垣の薔薇も見事。
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弘前は街のサイズの割に見所が多くて楽しめた。

2019年6月24日 (月)

津軽海峡北南14:大正浪漫喫茶室・喫茶レモン

弘前についてまず向かったのは藤田記念庭園にある大正浪漫喫茶室だ。ホテルのチェックアウトを済ませて観光客が街に繰り出す10時半ごろまでなら落ち着いて雰囲気を楽しめるだろうと思って行ってみたら、果たしてその通りで10時前の入店時には我々のみ。
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しかし退店時には修学旅行生に加え地方視察の地公体関係者もドンドンやって来て、大方予想通りとなった。ここでは市街地から離れていて行きづらい「ピーターパン洋菓子店」のアップルパイをいただく。
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パイ生地の中にしっとりしたスポンジとリンゴのコンポート、それに砕いた胡桃が忍ばせてあって、単純なアップルパイにはない味わいの協奏が楽しめてとてもいい。リンゴの街ならではの凝った一皿にありつけてとても満足した。

この記念館は大正・昭和期に中央財界で名を馳せた藤田翁によって建てられたものだそうだが今は観光の目玉になっていて、弘前に人を誘引する任を立派に担っている。死して尚地元に資するものを遺したあたり、故郷に錦を飾る理想形を見た思いがする。なんでも展示されていた年表によれば藤田翁は大森や荏原に自宅を構えていて、品川区の小学校にも寄進されていたとの由。思わぬ縁も知ることが出来て嬉しくなった。
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↑様々な意匠が美しく保たれていて感服。

【喫茶レモン】
晴れて随分暑くなってきたので、最勝院に立ち寄った際に門前の喫茶レモンで小休止をとった。どことなく昇天教会を思わせる意匠を凝らした外観が洒落ているが、日によってはジャズや室内楽のコンサートも開かれる店なのだそうだ。
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中は天井が高く開放感があって、玄関のドアを開け放していたからとなりを流れる川筋の風がこちらにも入って来て心地いい。店名ゆえにレモンスカッシュを頼んだら、生レモンを絞ってミントの葉も添えてくれた本式のもので嬉しくなる。
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おかげで暑さで減じていた活力が回復して、体の中にも涼風が吹き込んできたようだった。優し気なマダムにレモンスカッシュが美味しかったと告げると「まあ、そうですか。嬉しいです。」と沁み入るような笑顔を見せてくれて、それも元気回復の一助となった。最勝院に来たなら、寄った方がいい店だと思う。
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2019年6月23日 (日)

津軽海峡北南13:リゾートしらかみ・石場旅館

青森から弘前へ向かう時刻表を検索していたら、朝早くに「リゾートしらかみ」が走っている。座席指定券300円を払えば乗れるというので、これで弘前へ向かうことにした。

朝霧に包まれた青森の街は少しひんやりとして、どこか高原にでも来たようなしっとりした肌合い。「クレオパトラ」で朝食を済ませて目の前のバス停から青森駅へ。青森ベイブリッジも霧の中。
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ようやく見られたねぶたに見送られて
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ホームに出るとリゾートしらかみのクマゲラが待っていた。
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現有の三編成(他に樵・青池)の中では一番古い車両とのことだが、広くとられた窓といい、プレミアエコノミー以上のゆとりがあるシートといい、300円でこれなら十分だった。
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その名の通り青い森を抜け、稲の絨毯を眺めていたらもう弘前だった。
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循環バス「ためのぶ号」の始発を待ってまずは宿をとった「石塚旅館」へ荷物を置きにいく。今回の旅は民宿→デザインホテル→ビジネスホテル→旅館と変化に富んで楽しい。

こちらは明治期創業の登録有形文化財で、昔の日本家屋の程よい薄暗さが保たれていて心が鎮まる。
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今回はトイレ・風呂共同の8畳に広縁のついた部屋だったが、恐れていた外国人観光客の乱痴気騒ぎなどはなく、のんびり滞在することが出来た。風呂は男女分かれていて男風呂は4人は入れる大きめの浴槽にカランも4つ並んでいて、混雑期でなければゆったり浸かれる広さがあった。

部屋は布団を敷くとやや手狭に感じるが、広縁にソファーがあるので苦にはならない。そこから綺麗な庭も見下ろせるし、最終日には雲間に月のような太陽を見ることが出来てちょっと拾いものだった。
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朝ご飯もホッケの干物やリンゴジュースが出るなど北を感じさせる美味しいものだったし、控えめながらあれこれ情報をくださるご主人もつかず離れずいい距離で対応してくださって有難かった。9年前、前を通りががって「良さそうだな・・・」と思った直感が間違っていなかったというのも個人的には嬉しかった。古さを承知の上で街の雰囲気に馴染んだ旅籠に泊まってみたいという向きには申し分ない一軒だと思う。
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2019年6月22日 (土)

津軽海峡北南12:シュトラウス・甘精堂・クレオパトラ

【シュトラウス・甘精堂】
青森に行く楽しみの一つは「シュトラウス」に再訪することだった。相変わらず豪奢な雰囲気を保っていて、判っていてもここが青森であることを忘れさせる位のものだから矢張感服する。
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前回の訪問時には品切れだった「アプフェルシュトゥルーデル」があったので迷わずそれを注文する。
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薄手の生地の中には林檎・干し葡萄・ナッツ類のフィリングがぎっちり入っていて、ゲルマン系の律義さを体現しているかのようだった。酸味と甘みと香ばしさ、それにシナモンの香り付けも程よくて絶妙の均衡を保っている。これには生クリームの利いたウィンナーコーヒーの円やかな苦みが丁度よく、ウィーンでの午後のひと時もかくあらんという完成度に甚く満足した。

階下に降りるとお土産用の廉価版シュトゥルーデルがあったので買ってみたが、こちらはアップルパイのスティック版という仕上がりで、青森土産として喜ばれそうな一品だった。
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ここに来て忘れてならないのはそもそもの経営母体である和菓子の甘精堂で、昆布羊羹で名を馳せているが店の片隅に美麗な仕上がりの上生菓子が置いてあったので買って帰った。「清流」は見事な透明感に加え、苔の表現と共に川の匂いを運ぶ青海苔が微かに忍ばせてあって、その心配りにも瞠目させられた。
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「涼風」の淡い色彩と情緒深いグラデーションも美しい。
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いずれも申し分ない出来で揺るぎない老舗の底力を見た思いがした。ここの上生菓子はもっと評判をとってもいいと思う。

【クレオパトラ】
今夜の宿であるアートホテル青森に向かって新町通りを行くと、終点近くにただならぬ雰囲気を放つ喫茶店があったので、当初予定した「マロン」をやめて翌朝その「クレオパトラ」へ行くことにした。

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重厚で装飾的な調度品は純喫茶らしさを感じさせるが、店名からエジプトやアフリカを想起させるオブジェも多数飾ってあって、兼高かおるの家にでも招かれたかのような気持ちになった。
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また京都のイノダ本店のように店内に坪庭があって、そこから採光されているから店構えの印象より随分明るく、朝露に濡れ青々とした草木を眺めて飲む珈琲には清々しさすら漂っていた。

朝食に頼んだミックスサンドは鮮やかな色合いで食欲をそそり、オムレツも固からず柔らかすぎず玄妙な仕上がりで朝から幸福な気持ちになる。
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トイレの装飾も特徴的で印象に残るものだし、そこここに念の入った見事な店だった。余談だがインスタグラムに随分当店の写真が載っていて、ここを放ってはおかない青森女子の成熟ぶりにも感じ入った次第。

2019年6月21日 (金)

津軽海峡北南11:くどうラーメン・嘉一

【くどうラーメン】
青森に着岸早々向かったのは「くどうラーメン」。丁度昼時で食券を買う人、勘定をする人、黙々と麺を啜る人等々、店の面する通りでは感じられなかった人の気配が濃厚で、どこかほっとした気持にもなった。家人は並、自分は大を頼むとすぐに丼がやってくる。
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濃い醤油色のスープは魚介の出汁が強く感じられ、どこかから酸味の雰囲気も漂ってくる。どちらかというとスープではなく「つゆ」と呼びたいくらいのあっさりした味わいで、脂もほとんど浮かんでいない。となると麺との絡みが心配になるが、程よく縮れた麺がその任をきっちり果たしていて物足りなさは感じない。これなら朝から食べる人が多いというのも納得できる。
どうやら近隣の再開発で店舗の移転を余儀なくされるようだが、その場所を探してまた啜りに行きたいと思う。

【嘉一】
5年ほど前に青森へ行った時に立ち寄った際に好印象を持ったので、今回も陸奥湾の幸を楽しもうと出かけた。その望みを存分に果たしてくれたのは刺身の盛り合わせ。
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七点盛でお願いしたところ本鮪脳天、頬肉、アブラメ、マコガレイ、ウマズラハギ、水蛸、ほやの面々が津軽塗の盆に載って登場。カレイには縁側、アブラメには皮の湯引き、ウマズラには肝に真子が添えられているのも心憎い。ぬる燗でお願いした田酒とともに味わうと、本州最果ての地にいることをしみじみと感じる。

小ぶりだが、その分身質が滑らかで良かった甘鯛の塩焼、風味抜群の帆立真丈フライ、菊芋の食感が心地よかったお新香盛り合わせ、ぶつ切りにしてとろっと柔和な身を楽しむ鯛ぶつ、赤だしがかけまわされた焼きおにぎり、それに青森の地酒も四種聞し召して1万1千円ほど。やや値は張ったが、それに見合う味わいに出会えたので良しとしたい。相変わらずの「調製」ぶりを堪能でき、いい気分で店を後にした。
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2019年6月20日 (木)

津軽海峡北南10:青函フェリー

明けて函館を発つ朝。洗い立ての港の景色は澄み切っていて、何よりの餞だった。
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始発の市電に乗って駅まで行き、駅弁を買ってからタクシーで青函フェリーターミナルへ。1,200円ほどかかったが、時間的な余裕を買えたので良しとする。函館から青森に渡るのに味気ないトンネルの景色を見続けるくらいなら、時間がかかってもやはりフェリーの方が旅情があるというもので、ここは迷わず船旅を選んだ。安く済むのも有難い。

乗船する青函フェリーはトラック輸送を主力としているので旅客向けサービスは手薄な分、ライバルの津軽海峡フェリーよりも3割方安くて片道1,800円。所要時間には大差ないのでこちらにしたが、ターミナルは新しく綺麗でこれなら大丈夫そうだなと着くなり不安はかき消された。
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乗船まで時間があったので、駅で買った名物の「鰊みがき弁当」と「かに寿司」を待合で食べる。身欠きにしんの煮付はあの独特のえぐみが抑えられていて、数の子も穏やかな塩加減で品がいい。意外な健闘は切り昆布の煮付で、身欠きにしんと数の子の間の塩加減になっていて、見事に味を結節してくれる。流石その名にし負う駅弁だった。
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かに寿司は期待していなかったが、意外にしっかりとしたかにの身と酢の味わいが寄り添いあってなかなかの美味。
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お腹もくちくなって準備万端、悠然船に乗り込むことにする。乗ったのは「あさかぜ21」で、車の格納庫は流石に大きく目を引く。
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三階に上がって客室へ行くと絨毯敷きの広間があってその一角に陣を据える。
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車もさほどなく、定刻通り出発するとじきに市電の行先でその名をよく見かけた「函館どつく」が見える。
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そこからもう少し進むと、昨日夢のようなひと時を過ごした「ティーショップ夕日」がかすかに見える。昨日は見送る側で、今日は見送られる側になり不思議な心持に。
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と、家人が「イルカ!イルカ!」と叫ぶので航跡の辺りを見ると確かに十数頭イルカが追いかけてきていた。出港して10分足らず、まだ函館湾内で陸地からも直ぐの所だったから驚かされたし、なんだか得した気持にもなる。
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↑この写真の直後のこと。あっという間に遠のいたので写真は撮れず・・・

やがて眠気が襲ってきたのでひと眠りして起きると、下北半島の仏が浦が遠望される。
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そこが舞台の映画「飢餓海峡」のラストシーンを見て、是非連絡船に乗ってみたいものだと思っていたので独り感慨にふける。

そこを過ぎれば遠くに雪を残した八甲田山が見えてきて、予定よりも20分早く青森港に着岸。WiFiもグーグルのアカウントを使って利用できたし、揺れも全くなく3時間40分の航海はあっという間だった。百鬼園先生が怯えた水中機雷も遥か過去のことになったのだし、海峡の横断は時間繰りをつけてでも船旅に限ると個人的には思う。

2019年6月19日 (水)

津軽海峡北南9:函館景観めぐり

函館では山にも上らず、五稜郭にも駅前市場にもいかず、主に元町界隈を巡った。噂通り、坂にまみれることに。
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↑名所の八幡坂では50を優に超える男女が年甲斐もなく道のど真ん中で写真を撮っていて地元の車が迷惑していた。中華系の観光客のことをとやかく言えない。

横浜に住んでいたくせに山手の丘に足を運んだことがないので洋館が新鮮に感じられ、色遣いの巧みさも知ることになった。
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旧イギリス領事館は庭のバラが時期を迎えていて素敵だった。
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中華会館は重厚なレンガ造り。中は煌びやかな関帝廟があるという。
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旧丸井今井函館店はまちづくり地域センターとして活用されていた。古式ゆかしい百貨店建築は伊勢佐木モールにあった松坂屋を彷彿とさせて懐かしい気持ちに。
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それから来る前に鑑賞した「オーバーフェンス」のロケ地も二つほど。
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↑二人が出会う店の前、そして訓練校の喫煙所と蒼井優目線で見たラストシーンの野球場。

市電が走っているので興味深い諸々も目に入る。
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ホテル裏が倉庫街だったので夜ぶらついてみる。ラッキーピエロが不穏に見えて可笑しかった。
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道々見かけた花も印象深い。
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最後の夜には沖の漁火を見ようと五稜郭前から市電に乗って青柳町まで行った。
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海を目指して人気のない真っ暗な道をおそるおそる歩いていったら、突如眼前に見事な月の出が現れる。波に揺らめく月光の道が彼岸迄続くようにも感じられ、年甲斐もなく心を震わせてしまった。
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漁火は見えなかったが、電停付近の坂も「オーバーフェンス」のロケ地だったからそれも拾い見できて満足。
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ティーショップ夕日といい、函館は山の西と東の外れに魅力が潜んでいることを知った。往時の繁栄が偲ばれるあれこれが残っている街はいい街だなと改めて思わされた次第。
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2019年6月18日 (火)

津軽海峡北南8:ティーショップ夕日

函館に来たかったのには三つ理由があった。その内の競馬場に足を運ぶことと大沼へ行くことは果たして、最後の宿願である「ティーショップ夕日」に向かったのは夕方17時前。元町のバス停から船見町行のバスに乗って終点までいくと坂道で苦労することもなく店の至近まで辿り着くことが出来た。少し歩くと薄桃色の平屋が見えてきて、そこが「夕日」だった。
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眼前に函館湾が広がり、夕日を浴びながら水道を行きかう船の様子が眺められる。店内はごく静かで、ゆったりとこの黄金の刻を楽しもうという客が思い思いに窓外を眺めていた。
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家人は嬉野の煎茶、こちらはほうじ茶を頼んだが、家人の緑茶が完璧な抽出によってとてもコク深く、昆布のような旨味が感じられるのには驚かされた。いかに普段雑にお茶を入れているか、自然と反省する気持ちになる。
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それにしても深い味わいの茶を喫しながら飽くまで輝く海を眺めることが、ここまで心に安らぎをもたらすとは思わなかった。どういう状態になるのかといえば、心地よい春風と陽を受けながら、いつまでもいつまでもウトウトと微睡み続ける感じに近い。ひと時地上の極楽に揺蕩うことが出来た悦びは、なかなか得難いものがあった。僅か40分ほどの滞在だったが、私にとっての函館の風景といえばここで見た野の花やきらめく漣や風雪を耐えた建物の風合いということになると思う。幾久しく続いてほしい店だ。
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2019年6月17日 (月)

津軽海峡北南7:函館喫茶・パン・スイーツ

函館の喫茶・パン・スイーツをまとめて。

【美鈴珈琲】
函館にあっては老舗として名が知れているようで、よその喫茶店でも「美鈴珈琲の豆使用」との掛札を見かけたから、その実力は間違いなさそうだと思われ入店。最近新しく改装したらしくドトールやエクセシオールといったチェーン店風の内装で、純喫茶の重厚感はなく明るく清潔な雰囲気。本日のおすすめ「マンデリンオパール」をお願いしたら、なかなかキックのある苦みの後に澄み切ってキーの高い酸味がやってきて、重層的な味わい。流石の一杯で感心した。函館駅からも遠くないので、汽車待ちの際には重宝しそうだ。
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【ひし伊】
その昔石川啄木も通ったという質屋を改装した喫茶店。重厚な蔵造りの店内には考え抜かれた内装が展開していて居心地がいい。
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抹茶と和菓子のセットがあり、近くに名高い「千秋庵」があるからそこの生菓子が頂けるかなと思ったら、なんと店員の方がさささと生菓子を拵えて奉じてきたのには驚かされた。
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味わいと見た目は凡庸だったが、自作の菓子でもてなそうという心意気には感じ入った。
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【タイム】
自由市場で昼ご飯を食べて小休止しようと入ってみたら、席は満席でご主人は調理に忙殺されていたので、頃合いを見て珈琲を頼むと「あ、ランパスじゃなかった?ゴメンナサイ」と声をかけられた。どうやらクーポンで安くランチが食べられるようになっていて、その客が押し寄せていててんやわんやの状況だったらしい。そんな中、丁寧に入れたての珈琲を供してくれて有難かった。
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流石に薫り高く、苦みも丸味を帯びていてひっかりがなく美味しかった。ゆったりするには15時以降に行くといいのだろう。
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【ボンパン】
宿泊した「Hakoba函館」から3分ほどの立地だったので、朝飯用に買いに行った。
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店は朝7時から開店していて、直後に行ったら8割がたのパンは焼けており、実にいい匂いが店内一杯に漂っていて気分がいい。コッペパンに甘い豆の入った「豆パン」は素朴な雰囲気、バターの薫り高い「クロワッサン」はサクッと上出来で、胡桃とチーズのパンは上下がしっかり焼き上げられていてパリッとしていたのが新鮮だった。
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総じて手抜かりなくきちんとした味わいを楽しめて、日差しを浴びての朝食が大変美味しく感じられた。
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↑ホテルの屋上テラスで朝食。眺めも良く気持ち良かった。

なんとなればここでパンを買って、元町公園や倉庫街で港の景色を眺めながら朝食というのは、いかにも函館らしさを感じられて楽しい朝食になること請け合いである。お勧めしたい。

【富士冷菓】
歴史はかなりあるようだがこじんまりとした、しかしよく手入れされた店内にアイスクリームとシャーベットをたくさん並べていて、入るや否やどれにしようか嬉しい悩みに遭遇する仕組になっていた。シャーベットからは白桃を、アイスからはラムレーズンを選んで買って帰る。いずれも甘みがきつくなく穏やかで、さらりとしているので食べ終えた後の口がさっぱりしていい。この品格ある味が夏の短い北の地にあっても長く支持されて店が続いている理由なのだと感じた。
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2019年6月16日 (日)

津軽海峡北南6:阿さ利・いちりき

【阿さ利】
函館での夕食は二晩とも肉にした。第一夜はすき焼きの老舗「阿さ利」。予約の電話を入れたら平日にもかかわらず「17時からでしたらなんとか席を用意できます」と言われたから、大変な人気店のようだ。

西日に輝く入口をくぐると下足番がいたであろう玄関があり、靴を脱いで座敷に通される。古い日本家屋を丁寧に使い込んでいて、陽が沈みかけて部屋に陰翳が忍び込んでくると、使い込まれた木の風合いが次第に闇に馴染んでいって、独特の安らぎを与えてくれる。
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そこに鎮座する黒光りする鍋に仲居さんが野菜と肉を投入して火にかけると、じきにぐらぐらと割り下が煮えて堪らぬ匂いが鼻腔をくすぐる。
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頃合いを見て肉を引き上げると僅かに残る薄桃色がほの暗い夕闇にぽうっと浮かんで、座敷はいつの間にやら心躍る舞台装置に変じていた。さしがかなり入っている肉だったが、口がだれず胃ももたれずに済んだのは、清澄な鶏出汁をふんだんに使うところにあるのかもしれない。また、〆の柚子シャーベットの柚子感が強く、これが口と胃をさっぱりと洗ってくれているのも大きい。
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これだけの雰囲気とこれだけの味わいで二人で8,000円少しというのは随分値頃に感じられ、この辺が人気のゆえんだと感じ入った。
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【いちりき】
二日目は「北海道に来たからには塩ホルモンとジンギスカンは外せない」というこちらの希望に真っすぐに応えてくれる「いちりき」さんに行った。
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塩ホルモンメインの店だが、生ラム肉も置いてあるから一軒でどちらも楽しめるという旅のものには有難いお店だ。
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こちらも平日というのに入店時には満員御礼。肉をもりもり食べてる女子会など、どの席も盛り上がっていて見ていて壮観だった。こちらも負けじと塩ホルモンにジンギスカン、ハツ、ガツを頼んで早速焼き始める。
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↑ビールはやっぱり赤星!

塩ホルモンは実に丁寧に掃除されていて、雑味が全くなくクニクニした食感をいつまでも楽しむことが出来る。ジンギスカンもさっと炙れば十分な身質で、噛めば肉汁がほとばしってこれは旨い。
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旭川の「馬場ホルモン」で塩ホルモンを知った身としては、やっぱりガツを食べないとと思って頼んだのだがこれが白眉で、サクッという信じがたい歯応えと旨味をたたえた肉汁が口いっぱいに広がって、興奮状態に陥る。
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そこにご主人からサービスでフランスパンと溶かしバターが供され、これを炙ってバターを垂らしこんでやると食欲中枢が震えて制御が利かなくなり、あっという間に消え失せてしまった。特に溶かしバターは「魔液」とでも名付けたくなるほどの威力を発揮して、空恐ろしさすら感じた。
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これらに野菜スティック、ビール二本にレモンサワーで5,200円ほどと格安だったが「200円はおまけで5,000円!」と来たものだから、完全に脱帽するよりほかなかった。函館に来て海鮮など食べている場合ではない。そうして函館の塩といったらラーメンではなく「いちりき」のことだと記憶に刻んで店を後にした。本当にご馳走さまでした。

2019年6月15日 (土)

津軽海峡北南5:祐鮨・すし雅

函館での昼ご飯は二日目三日目とも寿司屋にした。最初に行ったのは「祐鮨」でなんでも函館で一番古い寿司屋だという。しかし敷居は高くなく、ランチは1,000円のものがあり、稲荷寿司も美味しいとのことで期待して出かける。

行ってみると暖簾はかかっているものの、入口に「本日只是預訂」と中国語の張り紙がしてあり、拙い中国語力で翻訳するに「本日予約のみ」となっている。念の為と思って引き戸を開けて「二名ですが大丈夫ですか」と聞いたら「どうぞ」と言われたので中に入る。
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品書を見るとランチはなく、並寿司と稲荷寿司の短冊も外されていたので、やむなく上寿司をお願いする。カウンターに座ったので一貫ずつ握って出してくれたのは良かったけれども、シャリがほかほかの状態だったから酢が強く香ってネタの風味が薄く感じられてしまう。これは勿体ない。淡い脂乗りの鰤は良かったが、それ以外は印象が薄くなってしまった。

ここはビジネス街でもないから、ランチをやってもアジア系の観光客ばかり集まってしまって困ってしまったのかもしれない。そうなるとより一層地元の人は寄り付かなくなるし、そこで方針転換をして前述の張り紙を出すようにしたものと推察したがどうだろうか。インバウンドの全部が全部歓迎というわけでもない現実を見た気がした。ちなみに客は我々の他に観光できたシニアの男性一人だった。

翌日は自由市場内にある「すし雅」へ出向いた。
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間口が狭く4-5人座ると一杯の店で、通りかかったら1席しか空いていない。「難しいですかね?」と声をかけたら座っていたお客さんが率先して詰めてくれて、なんとか二人で座ることが出来た。

980円の竹寿司を頼むとこちらも一貫ずつ握って出してくれる。一番端っこの私の所などはレジがあって出しにくいので、なんとカウンターを回り込んで置きに来てくれて、恐縮したので次からは出しやすい家人のところに二貫ずつ置いてもらうことにした。ここは一貫目の鯛の歯応えの良さと皮の裏手の旨味に瞠目して始まり、しっとりと絡むような身質の赤身や香気高い牡丹海老、ツメの風味がよく合う蛸といずれも1,000円でお釣りがくる寿司とは思えない出来で嬉しくなる。
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席を作ってくれた常連さんも「ここのは美味しいでしょう?さっきフグ食べたら絶品だったから食べな」と勧めてくれたので、好印象だった鯛ととらふぐを追加でお願いする。いずれ劣らぬ歯応えと旨味で、北の海の豊穣ぶりを見せつけられた気がした。鯛もフグも一貫180円と質を考えれば大変良心的な価格で、懐が温かいまま存分に寿司を楽しむことが出来た。

ご主人はいかにも北の朴訥な人という感じで、寿司屋にけれん味を求める向きには物足りないかもしれないが、余計なことを言わずきちっとするべき仕事をする雰囲気が好印象だった。次の機会にも是非訪れたい。

2019年6月14日 (金)

津軽海峡北南4:HakoBA函館

大沼公園から乗り込んだ普通列車は国鉄時代のもので、シートといい扇風機といい甚く郷愁を誘うものだった。
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存分に堪能して、新函館北斗で函館ライナーに乗り換えようと3番線で待っていると一向に来ない。おかしい・・・と思って跨線橋に上がったら次発は1時間半後1番線からとの表示が。どうやら函館ライナーは着発ともに1番線からとなっていて、接続するはずの列車はもう出てしまっていた。やむなく1時間ぼんやりして先発の特急で函館に到着。
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函館では元町地区にある「HakoBA函館」に宿をとった。
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元は富士銀行函館支店と隣接する博物館だったものを一体でリノベーションしてホテルとドミトリーを併設し、「シェアホテル」と銘打っている。
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我々はホテルタイプのBANK棟のツインに宿泊した。リノベして2年とのことでまだ新しく、デザインホテルを指向していてなかなかに洒落ている。
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ドミトリーなどが入るDOCK棟最上部には共有キッチンがあり、そこから屋上テラスに出ることが出来るが、景色が綺麗だったので朝な夕な足を運んだ。
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特に近所のパン屋で焼き立てのパンを買ってきて、朝日を浴びながらテラスで朝食をとったのはとても気持ちが良かったので印象深い。

従業員の人たちも懇切丁寧だし、観光には持って来いの立地だし、歩いて3分のところにCOOPもあって便利。それでいて1泊7,000円というのは破格の値段で随分気に入ってしまった。函館再訪の際には真っ先に宿泊を検討したいと考えている。

2019年6月13日 (木)

津軽海峡北南3:ゆったり大沼と大沼公園散策

塩ラーメンで出鼻を挫かれ、失意のまま函館から大沼公園に向かう。
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新函館北斗までは函館ライナー、そこから一駅特急スーパー北斗に乗り大沼公園駅に到着。
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生憎しとしとと雨が降り出したので大沼公園散策は見送って、今日の宿の「ゆっくり大沼」に真っすぐ向かう。

ここは以前はビジネス旅館だったものを民宿に仕立てたようで、部屋は8畳1Rだったのを繋げて片方は寝室、片方は居間として使えるようになっていて、随分ゆったりしている。風呂は部屋にありトイレだけが共有だったが、新式の洗浄器付便座もあって快適だった。

到着して駅前で買ってきた「大沼だんご」を頬張る。ムニュムニュした餅の歯応えがいいし、胡麻とみたらしの二味が楽しめて飽きが来ない。流石の名物だと感心。
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こちらの宿は帆立の養殖業者が運営していて食事は帆立だらけということで期待したが、この日は鶏照焼に鰤の香り揚げ、揚げ出し豆腐と帆立はなかった。
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「帆立ばっかり」という口コミに対応してしまったのかもしれない。ご飯と味噌汁がきちんとしているので夜も朝も美味しくいただけて、二食付きで6,300円ということを考えれば申し分なかった。難点は隣の音がかなり聞こえる点で、これは耳栓を持参したからやり過ごすことが出来た。

翌朝。カーテンを開けるとやはり雨。本来ならば大沼をカヌーで遊覧する予定だったが、風も強く気温も12度ちょっとと悪条件が重なって断念。
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せめてと散策コースを歩いてみたが、雨に煙ってもこれだけの美しさだったから、晴れたらさぞの事だろうと思う。ここは再訪しようと心に決めた。
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2019年6月12日 (水)

津軽海峡北南2:鳳蘭・滋養軒

市電を末広町まで乗って、明日から泊まるHakoba函館に荷物を置いて、さあ昼だと意気込んで至近の西園に行ったら定休日。ではと一駅先の福々亭に行ったら定休でもないのに休み。
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やむなく明後日行こうと考えていた函館駅至近の二軒を先に巡ることにしてまた市電に乗り込む。
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「鳳蘭」はいかにも下町の中華料理屋という雰囲気で、カウンターにシュウマイが高く積まれていたりして気取らぬ感じ。迷わず塩ラーメンを注文すると程なく供される。
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葱メンマ叉焼というごくシンプルな具材のみが透明なスープに浮かんでいて、これこれ感が高い。脂もほとんど浮いておらず、塩加減も穏やかだからするする胃の腑に消えてしまった。なかなかだな函館塩ラーメン・・・と思っていたら、次の滋養軒に向かう間に舌が化学調味料の味で支配されてビリビリする。うーん・・・やはり500円で美味しいスープを作り出すのは至難の業のようだ。

幸い滋養軒では4人ほど待ち、その間に幾らか後味の悪さも後退したので、改めて塩ラーメンと向かい合う。透明度はこちらの方が高く、そのフォトジェニックさからインスタに頻出する一椀だったが、食べている時は感じないもののやはり後味はかなり化調が強く、店を後にしてから「あれれ・・・」という気持ちが沸き上がる。
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本当に塩味を追及すると、昆布や鶏ガラ・豚腿・干し貝柱などふんだんに使わないと「上湯」にはならず、そうすると5~600円で出すことは叶わない。かといって1,000円近くなれば客足は遠のく。誤魔化しが利かない塩味だけに、苦労が偲ばれた。この二軒を巡った結果、家人と「もう塩ラーメンは止めておこう」という結論に至った。
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2019年6月11日 (火)

津軽海峡北南1:函館競馬場

梅雨になるとどうも身体の調子がすっきりしない。だから避梅としゃれこんで、津軽海峡の北と南を旅してみた。この短絡さが災いしたのか、出発の朝には季節外れの爆弾低気圧が八甲田目指して侵攻中。それでもなんとか飛行機は飛んで、大揺れの機内から眼下に競馬場が見えたら函館空港に到着した。
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巡回バスとびっこに乗って20分、今度は眼前に競馬場が現れる。
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入場門脇の場外からもパドックが見えるようになっていて斬新。
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数年前に大改修を行ったからとても美しく、スタンド前の観覧ゾーンも芝生だったから、どこか牧歌的で伸びやかな雰囲気があっていい。
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↑開幕週だったからか、入場者全員に配られたサイコロキャラメル

機内の揺れを引きずって、脳がぐらぐらしてたから、あまり競馬には集中できず2Rほどやったものの家人ともども外れ。それでもJRA全十場制覇にリーチがかかったので良しとして市電に乗って中心街へ向かった。
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