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2017年12月16日 (土)

初冬瀬戸内鱈腹記6:宇多津からフェリーで北木島へ

土曜日だけは香川県側から岡山県側へフェリーで渡れるという記事を目にして、ならば目指す北木島まで船で渡ろうと坂出でレンタカーを返却し宇多津まで電車に乗って、そこからはフェリーターミナルまで腹ごなしに歩いてみた。

駅には蒸気機関車の給水塔と思われるレンガ造りの旧跡があって、なかなか浪漫を感じさせる。
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駅前から続く大通りには人っ子一人歩いておらず少し不安になる。
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宇多津は戦災を逃れたらしく、しばらく行くと古びた木造の建物がどんどん出てきて、往時は輝いていただろう喫茶店の廃墟じみたショウケースを見つけたころには、なにやら異世界へ紛れ込んでしまったかのようにも思われた。
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なに、こちらには山彦という神様がついているのだから、と意に介さずズンズン行くと港が見えてきて、そこにポップな絵が大きく書かれたフェリーが停泊していて一安心。
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船はひとまず佐柳島まで行き、そこから真鍋島までをつなぐ船が土曜だけ走り、さらに笠岡への定期船に乗って北木島へと向かうおよそ2時間ほどの船旅。
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↑航跡が船内ディスプレイで確認できる最新鋭船だった

曇天ながら波光煌く瀬戸内海は静謐な美しさがあって心が鎮まる。
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しかし、佐柳島での連絡船との乗り継ぎは時刻表上同時刻となっていて、果たして無事乗り継げるのかと幾らか不安になって、到着時には船から身を乗り出してその姿を確認してしまう。
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↑あれだ!

わざわざ四国から本州まで船で渡ろうとする酔狂な人は稀有なようで、真鍋島への連絡船は我々三名のみの乗船。
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10分ほどで真鍋島に到着して、定期船が来るまでしばし港で待機する。この島は今は猫の島として有名で、船着き場に大勢観光客がいてそれを目当てに猫も集っていた。
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しかしそこまで人懐っこい訳ではなく、触れ合うことはできなかったが、それらしい雰囲気の写真を撮ることができて思わぬ拾い物。
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心もほぐれたところで日も傾き柔らかな日差しがたまっていた北木島大浦港に到着したのは16時前。以前と変わらず、連絡船が去っていくと物音一つしない静かなままの島の様子が保たれていて、旅のものとしてはほっとする。

一方、家人と山彦先輩は上陸早々釣り人魂に火がついて、港周辺の岸壁沿いを歩いて魚影をくまなく探す。その眼光だけは一端の漁師のようであった。お世話になる天野屋さんも何も変わらぬままあってホッとして荷解きをし、防波堤へ急ぐ。
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2017年12月15日 (金)

初冬瀬戸内鱈腹記5:兵郷・讃岐の里

【兵郷】
うどん巡礼二日目は午後宇多津から船に乗って北木島へ渡る予定となっていたことから、坂出・多度津近辺を巡ることにした。時あたかも素朴系の雄ともいえる兵郷が年内をもって店じまいするというので、まずは足を運ぶ。
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この店は二度目となるが、昔ながらの普通の家の軒下で出来立てのうどんを啜ることができ、いかにも讃岐の情景という感じが印象に残っていた。あと数週間で閉店だから混み合うかな・・・と思ったが、近所の人が朝飯代わりにうどんを啜りに来ている程度で、別れに殺伐とした雰囲気にならずに良かったとほっとする。

少し薄暗い厨房に入って出来立てのうどんをどんぶりに入れてもらい、隣室に行って給湯サイロの古びた蛇口をひねって黄金色の出汁をかけまわすと、なんともいえぬいりこ出汁の香りがぷんと鼻をくすぐる。すりおろしたしょうがをちょっと乗せ、青ねぎと胡麻を散らすとうっとりするよな一杯が出来上がる。
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優しい出汁が少し肌寒かった身体に沁みわたっていかにも旨い。強すぎず、かといって緩すぎない柔和な麺が出汁と寄り添って胃の腑に納まると、ぽっと心の火が点る感じがある。

飾らぬ普段着のようなこの雰囲気と一杯の安らぎこそ讃岐うどんの醍醐味だと思うが、ここも無くなり、またよく行っていた彦江も無くなって、原初の風景はどんどん消えていき、物寂しく思う。ともあれしみじみ旨い、思い出深い一杯を味わうことができて嬉しかった。御馳走様でした。

【讃岐の里】
前回の巡礼では痛恨の定休日だった心のベストテン第一位、讃岐の里。今回は是が非でも行こうと決めていただけに、店が開いているだけで歓声を上げんばかりに嬉しい。11時半を過ぎて混んでいるかな・・・と思ったが適度の入りで一安心。ここはどういうわけか地元民がほとんどで、昔ながらのうどん屋の空気が感じられて好ましい。

早速にあの素晴らしい麺を堪能しようとぶっかけうどんの冷を頼む。間髪入れず供されたそれは、透き通る乳白色の肌を煌かせて降臨した。
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↑欲張って下足天も載せる

美しいエッジが優美な曲線を描き、私を誘い込む。待ちきれずにずずずと啜ると、絹よりもなお滑らか舌触りと官能的で打ち震えるような麺の腰が口の中に殺到してきて、食欲なのか色欲なのかは判然としないが、しかし強烈な情動が身体に沸き起こり軽い興奮状態に陥る。「最後の最後にこの麺にありつけたわが身の僥倖を自ら祝してやりたいな・・・」などと思っているうちに、あっけなく丼は空となる。

「この麺ならば!」と思い、続いてはおばちゃんに「冷たいうどん玉だけ欲しいのですが」相談すると「それじゃしょうゆうどんの冷にして、おろしとレモンは外すわな」と柔軟に応じてもらう。

レジ前で生卵を買い、うどんの入った丼の手前にスペースを作って割入れ、入念に溶いでいく。頃合いを見てしょうゆを垂らしてから麺と混ぜ合わせると、食べる前から事をなし終えたことがありありと判る景色が現出してまたも興奮。
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↑要するに卵かけうどん

見よこのてらてら感!と店内中に叫びたいくらいだったが、隣の家人に見せびらかすに留めた後、喰らいつく。玉の肌に極上の乳液をすりこんでやったようなものだから滑らかさがさらに高まり、卵の黄身のコクをまとって濃艶たること西施もかくあらんという具合。やっぱり讃岐うどんはこの店にトドメを刺すなぁと改めて感じ入った。

家人も目の色を変えていたし、山彦先輩も「麺といい出汁といい、うまいね~しかし」とご満悦。「わし今日は蕎麦」という常連さんの大らかさなども含めた店の佇まいといい、優し気なおばちゃんといい、完璧な麺がいつ行っても味わえることといい、個人的には「讃岐の至宝」と崇めたいくらいだ。末永くのご繁盛を祈念して店を後にした。

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↑家人が頼んだしょうゆうどんも結局一口頂くことに

2017年12月14日 (木)

初冬瀬戸内鱈腹記4:三友堂・せとうち東山魁夷美術館

【三友堂】
明けて旅行二日目。前日津田に行く前に寄った「三友堂」で買った生菓子を酔った勢いで食い散らかしたようなのだが記憶に残っておらず・・・
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↑ピンぼけの写真のみがカメラに残置

なんとも心残りだったので、うどん巡礼に出る前に再び店に寄る。和菓子屋の良いところは早朝からやっていて、こういう事態に陥ってもリカバリーできる点だ、と酒徒としては強弁してみる。

店のある通りには瓦せんべいの「久つ和堂」やこれもお茶席では名高いという「富久ろ屋」といった格式高い和菓子屋が何軒か連なっていて、風趣あふれる栗林公園がある上に特産の和三盆もあるから、高松には和菓子文化が根強く残っているらしい。
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店に入るとひっそりとして薄暗く、そうしてしばらくすると気持ちが落ち着いてくるので、日本文化の陰の功労者である陰翳の効果を体感することができる。季節の上生菓子と名物「木守」、この時期らしい「木守柿」を買ってみる。

生菓子は色が鮮明なものが多く、なるほど高松は雨が少ない太陽の国であったなと感づかされた。一方外郎の銀杏は軸にあたる部分に細切昆布を使うなど芸の細かさも随所に。
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名物の木守はふのやきに柿と黒糖の餡が入っているが、ふのやきの、最中の皮より厚みがあり歯ざわりがしっくりとしているところと、餡の甘みの凝縮感がうまく調和していて、なるほどお茶が欲しくなる一品。
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これは東京に帰ってから新橋の「せとうち物産館」で改めて購入するほど気に入った。

名前の似ている「木守柿」は干し柿に見立てた求肥で柿入り白あんを包んだもの。
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白あんと混ぜることで柿の甘さのくどみを矯めて野趣をそぎ落とし、ごく品よく仕上げてある一品。いずれもさすがの老舗の底力が感ぜられて甚く満足した。

別のホテルに宿泊した山彦先輩とはこの店の前で落ち合う。遠目からも眠たげで、昨晩も持病の睡眠時無呼吸症候群に一晩中なぶられていたのかもしれない。卸売市場前の岸本釣具で島での釣り道具と餌を買って一路進路を西へとり、30分ほどで「せとうち東山魁夷美術館」へ到着。

【せとうち東山魁夷美術館】
ここは鑑賞しなくてもカフェだけの利用ができるとのことで朝の一服をしようという算段。海に面した建物は直線がぴしりと決まり、画伯の絵を彷彿とさせる緑青の外壁が海とシンクロして美しい。
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カフェからの眺めも申し分なく、静かに時を過ごした。
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↑この後地元の人が目の前を犬の散歩で横切ってちょっとびっくり

ここは銘菓かまどが運営していて、青のりが入った薯蕷饅頭と抹茶のセットをお願いしたが、饅頭はかすかな塩気が利いているところが良く、抹茶にもよく合った。望むらくは皮の生気が感じられれば・・・というところ。うどん巡礼の時間調整に申し分ない場所が発見できてとても良かった。

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三友堂和菓子 / 片原町駅(高松)高松築港駅高松駅)  
昼総合点★★★☆☆ 3.8

なぎさカフェ・喫茶(その他) / 坂出)
昼総合点★★★☆☆ 3.5

2017年12月13日 (水)

初冬瀬戸内鱈腹記3:小料理・割烹津田/鶴丸

【割烹津田】
高松で夜を過ごすとなれば、瓦町にある「津田」に行くことになるのが我々夫婦の決まりで、この慣わしに山彦先輩にも従っていただくこととなった。
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初めて伺ってからもう二十年近く時が過ぎ、改築をなされてからは往年の一杯飲み屋の風情は薄くなって粋筋が集う店になりつつあるが、相変わらずご主人は快活で数年ぶりの訪問でも温かく歓待してくれてとても嬉しい。

とにかく瀬戸内の海の幸が食べたかったので、刺身の盛り合わせと穴子の白焼きを各々に出してもらう。見栄えの大変美しい刺盛では生簀で先ほどまで泳いでいたカワハギの身の清冽さと肝の清々しいコクが出色。
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これも生簀にいた穴子も肉厚でふかふかとしていて滋味深く、ラインナップが強化された日本酒が進んでしまって困惑するぐらいだった。
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注文したら「それ正解!」とご主人が太鼓判を押した鰤しゃぶは、なんと鱧松茸の鍋仕立にくぐらせていただくという贅沢なもの。味が混じってしまうかな・・・と危惧したが、ややあっさり目の脂乗りの鰤を霜降り程度にくぐらせて食べると、松茸がふわりと香り、名残りの鱧の脂が風味を添えて悶絶の美味しさ。
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御馳走続きで私と山彦先輩の鯨飲スイッチが入って、鍋島や飛露喜がうどんをすすりこむがごとく胃の腑に消えていく。また家人もいつになく杯が進んで笑みが絶えない。この他に手羽先焼などなどを堪能していると、お隣の席から日高見の限定酒の振る舞い酒まで頂いて、すっかり寛いだ時を過ごした。

今までになく飲んだのでお会計はそれなりになったが、楽しい高松の一夜となったので個人的には納得の水準。

【鶴丸】
すっかり勢いがついて延長戦の気分になっていたので、歩いてすぐの鶴丸で〆のうどんを啜っていくことにした。今は夜に並ぶくらいの人気だそうで、表には行列の仕方についての注意書きが出ていてちょっとびっくり。
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幸いすぐに席にありつくと、あのうどんを断ち切るドンドンドンという重低音が店内に鳴り響いていて、否が応にも期待が高まる。往年は海老天ぶっかけでも行けただろうが、胃の負担を考慮して肉ぶっかけにしたところ、山彦先輩は果敢にも海老天ぶっかけに挑戦。腹囲推定130㎝は伊達ではない。

しばらくしてやってきた肉ぶっかけの姿たるや、実に食欲をそそる見事なもので、見ていて惚れ惚れする。
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無心になって貪ると、ちゅるんとした滑らかな肌とぎゅんとはね返る見事なコシが相まって素晴らしい出来。もりやもでも小縣家でも少し物足りなさを感じていたので、「これこれ!」感が身体の奥からこみ上げてきて、なんとも言えない幸福感すら覚えた。


山彦先輩というと「なにこれ、揚げたてサクサクじゃないの!」と海老天の出来の良さに瞠目して、やはり喜色満面の笑みとともにいともあっさりと平らげていた。最後に鶴丸があって良かったと思える、素晴らしい一杯だった。

津田割烹・小料理 / 瓦町駅片原町駅(高松)今橋駅)  
夜総合点★★★☆☆ 3.7

手打ちうどん 鶴丸うどん / 瓦町駅片原町駅(高松)今橋駅
夜総合点★★★☆☆ 3.8

2017年12月12日 (火)

初冬瀬戸内鱈腹記2:仏生山温泉・高松シンボルタワー

腹もうどんで満たされて落ち着いたのでうどん巡礼はまた明日にして、前回入ってなかなか良かった仏生山温泉へ向かう。

当初山彦先輩は「俺は入らずに待っていようかな」と言っていたが、いざ入ってみると「いつもシャワーで済ませてるから、湯船に浸かるの気持ちいいわー」と甚くご満悦の様子。結局、我々夫婦が美しい休憩所でお待ちすることになり、やがて頬を上気させて福々しい恵比須顔でご登場。お誘いした甲斐があったと実感した良い表情だった。

それもそのはずで、美しい設えもさることながら、
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つるすべ感極上の湯質はなかなかないものだし、その上季節は晩秋で露天の中庭にあるもみじは見事に紅葉して、柔らかい日差しに照らされ殊の外美しい。
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どこか山間の温泉宿にでもいるように錯覚させる仕掛けになっていて、風呂に入る気分もより伸びやかになるというもの。先輩の仏生山の記憶を塗り替えることができて一安心。

その後、そろそろ夕日が沈む時間に差し掛かったので、以前行った庵治の喫茶店に行き、瀬戸内海に沈む夕日を見ようかと思っていたところ、山彦先輩「さっき遅刻して高松駅をうろうろしてたら、港沿いにすごい高いタワーがあって、そこからの眺めが良さそうだったよ」と珍道中のさなか拾ったネタを開陳されたので、元手のかかった千金の提案に我々夫妻ともに首肯して高松駅へ急ぐ。

知らなかったが、いつの間にか「高松シンボルタワー」という立派なタワーが聳えていて確かにかなり高そうだ。エレベーターホールに「展望台」と書かれていたので上ってみると、「おおー」と三人がどよめく景色が展開。
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しかもレストラン営業前はそちらにも入れるということで、クイーンアリス内にも入って高松市街と瀬戸内海を望む。
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この建物が唯一といっていい高層なので見晴らしは抜群で、胸のすく思いがする。じきに夕暮れとなり、美しい茜色を三人でただだんまりとして眺めた。
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日の出や日の入りは日常にあっては忘却の彼方にあるけれど、旅に来るとこの忙しないい時間帯を自分の思う様に使っているのだと実感したくて、どういうものかずっと見ていたくなる。その意味で大変旅情あふれる登楼だった。山彦先輩のウロウロも捨てたものではなかった。

2017年12月11日 (月)

初冬瀬戸内鱈腹記1:もり家・小縣家

一昨年の春に北木島に行った際、宿のご主人に「冬のワタリガニもいいですよ」と言われたことが頭に残っていたし、またしばらく讃岐うどん巡礼にも出ていなかったので、両所を巡る旅に出ることにした。

前回北木島にご一緒した、宮崎出身現在は広島に単身赴任中であるハクション大魔王似の山彦先輩(仮称)をお誘いしたところ「是非にも」とのことだったので、高松空港で落ち合うことにして機上の人となった。

冬晴れで窓からは薄桃色に輝く相模湾が見え、その後冠雪した富士山火口直上を通過すると、

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(↑写真はネットから引用)
先日訪れたばかりの京都の町の碁盤の目が眼下に見えてじきに高松空港へ着陸。

到着口を出たところでで山彦先輩から数通メールが届いていることに気づく。案の定、バスに乗り遅れて遅延しているとのメールが。そこで我々夫妻だけで「もりや」へ行き、山彦先輩には高松築港駅から琴電に乗って仏生山駅に来てもらいそこで落ち合うことにした。

この調整でやや出遅れ、借りたデイズルークス
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↑もはや軽ではない車内の広さで驚く
を急がせてもりやに到着したのは12時10分前。それでも10人待ちほどで済んで、NHKの昼のニュースを見ながら待望の第一食となる。
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時間がよいのでもち肌のうまい麺にありつけたが、以前より麺の鋭敏さや剛毅さは影を潜めているように感じた。それでも東京の讃岐うどんとは雲泥の差で、早々に平らげて未知の地で心細く我々を待つ山彦先輩を拾いに仏生山駅へ急ぐ。

駅前のロータリーに平日の昼、しかも内陸の駅にも関わらず、パンパンのリュックを背負い、竿を肩にかけた釣り人スタイルで独り所在なさげに佇む山彦先輩を発見。その姿を見て哀れさを伴った可笑しみがこみ上げ、早々に車内に招じ入れ珍道中の顛末を聞きながら西に針路を向ける。

目的地は往年満濃トライアングルと呼ばれた一角にある「長田」。しかし13時半ごろ到着してみると「売り切れ」との看板が建てられて店は閉じられていた・・・「すまん!」と山彦先輩。しからば、とはす向かいにある「小縣家」へ行くことに。
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うどん巡礼がブームになり始めたころには2-3軒支店があったと思うが、今はここだけになったようだ。まずまず客が入っていて一安心。長田では冷やしうどんを食べようと思っていたので、それに似たざるうどんを頼む。
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麺はまだギリギリの時間だったから少しくたった程度で済んだのだが、つけ出汁がどういう訳かほとんど出汁の旨味が感じられないほど薄く、胡麻を擦って風味を添えてなんとか啜り込む。

家人は苦戦しながら大根をおろしてしょうゆうどんを頬張り笑顔を見せ、山彦先輩は「いりこ出汁がうまい、うまい」と神話さながら海へいりこを取りに行かんばかりにかけうどんを啜ってこちらも満足げな表情。注文を誤った責めは自らにあるが、長田で食べたかった…というのが正直なところ。

本格手打 もり家うどん / 高松市その他)  
昼総合点★★★☆☆ 3.5

元祖しょうゆうどん 小縣家うどん / 羽間駅榎井駅塩入駅
昼総合点★★★☆☆ 3.3

2013年6月15日 (土)

麦秋西の旅14:まとめ・雑綴

久々に西の方面に出かけたが、改めてざっくり振り返る。
・讃岐うどんは民家の軒先の風情が無くなり魅力半減。
・倉敷は見終えたので、次に行くなら備中高梁。
・京都が随分色褪せて見えた。諸色高直の感あり。
・古い街並の風情を感じるなら京都より近江の方がいい。
・三重は海の幸・山の幸が豊富で、加えて好みの酒が多くて魅力的。

という訳で、次回は琵琶湖一周や宮川上流域探訪など滋賀・三重を中心に、〆はやはり名古屋の大甚でという旅になりそうだ。

撮り貯めた写真からいくつか。見事な麦秋の畑が広がっていた香川。
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高松のど真ん中で毒キノコ注意の看板。
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黒板に白墨の美麗な文字で相場の見通し。倉敷にて。
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時代がかった松阪の映画の看板。
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赤目四十八滝のサンショウウオの足。
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同じく赤目の日本画に描かれそうな岩肌。
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最後に旅で出会った花々。
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宮脇俊三が旅をするならGW後から梅雨前が一番宜しいと言っていたが、それを実感できたよい旅だった。

2013年5月17日 (金)

麦秋西の旅3:割烹・小料理 津田

かれこれ12年ほど前からうどん巡礼のたびに訪れている「津田」。今や香川に行く楽しみのかなりの部分を占めている。質の良い素材を確かな技術で「うまいもの」にまとめ上げるご主人の力量と、「あはは」と豪快に笑う人懐こさにすっかり心を奪われている。

店は瓦町駅から丸亀町のアーケードに向かう途中、ロイヤルパークホテル高松の正面にあって、中に入るとカウンターが8席ほどと奥に小さな個室がある。ご主人一人で切り回しているので丁度よい大きさだろう。
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この日は突き出しのホタルイカの酢味噌和えを食べていると、「美味しいもん盛り込んだよ!」と言われて造りの盛り合わせが出てきた。
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よこわ・鯛・さわら・平貝・いかが盛り込まれて、店内の木から枝をぽきりと折ってあしらいとして緑が添えられ、とても美しい。歯応えと旨みが群を抜く鯛、しっとした身の具合が艶かしいさわら、甘みの強い平貝・・・いずれも申し分ない。

続いて何を頼もうか、品書きを見て悩む。
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そうこうしている内にご主人が適宜見繕って極品あさりを焼いたのや希少な神戸トマト、鯛の子煮やすじ大根煮、アスパラ浸しなどが次々に供され、そのいずれもが厳選された素材にきちんと手をかけた「うまいもん」ばかりで酒が進んで困った。

やっぱりいい店だなぁ・・・としみじみ思っていると、小ぶりな海鮮丼と鯛の焼骨で出汁をとった吸物が出てきて「むぅ・・・うまい・・・」と呻っているうちに水菓子まで出していただいて大団円。

白木のカウンターは清々しく、作家物のグラスや漆器も使っていて、美味しいものを食べる雰囲気を高めてくれている。けれどもご主人の屈託ない雰囲気があるので堅苦しさはなく、カウンター割烹に初めてデビューするには好適の店ではなかろうか。
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なお、品書きには値段が書かれていないので、初めてならば予算を伝えてお願いするのが得策だと思う。いついつまでも通い続けたい店だ。

津田割烹・小料理 / 瓦町駅片原町駅(高松)今橋駅
夜総合点★★★★ 4.0

2013年5月16日 (木)

麦秋西の旅2:仏生山温泉と庵治

【仏生山温泉】
行きのANAの機内誌でたまたま見かけたので足を運んでみたが、とても良い温泉だった。田舎の雰囲気満載なところに直線を生かしたシャープな外観が現れて思わず「へぇー、こんなところにねぇ・・・」と唸る。
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内部もシンプルな設えで、大きく開け放たれた窓から初夏の爽やかな風が吹きぬけて、敷かれた畳に横たわるとなんとも伸びやかな気持ちになる。吟味した雑貨や古本も売っていて、なかなかのラインナップ。
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ただ小奇麗なだけでなく肝心のお湯も重曹泉のぬるすべ系で、ぬるめの湯温が心地よく、長湯にはもって来いの泉質だった。また半野外の浴槽の中庭には青々としたもみじがあって、季節の移り変わりを楽しめる仕組みになっているのも気が利いている。

帰京後調べてみると、まち全体を旅館に見たてる取り組みの一環でこの温泉があり、近くには同じデザインの宿泊施設もあるようだ。直島や丹下建築などアートや建築に興味を持って香川に来た人ならきっと気に入るだろう。もちろん、うどん巡礼途中の腹ごなしにも好適だ。

【庵治】
随分昔にイサム・ノグチ美術館に行って以来足を運んだ。どこまでも凪いで淡くたゆたう島々を見ていると、心のさざなみが次第に鎮まっていくのが判る。この感じが心地よくて何度も香川に来ているのかもしれない。
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いかんせん暑かったのでどこか涼しいところで景色を眺めたいと思い入ったのが「喫茶アルプス」。海沿いにはそぐわない名だが、なるほど切妻屋根の外観で中に入ると木をふんだんに使った山小屋風となっており、たしかにアルプス感がある。
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注文したアイスコーヒーは酸味が少なくあっさりとしていて、渇いた喉にひんやりと染み渡って美味しかった。家人はレモンスカッシュを頼んだが、ガムシロップが添えられて甘さを自分で調整できるタイプ。細かなことだが、こうした丁寧な感じは好ましい。

店に入って左手の階段を上ると、景色の良い席に陣取ることが出来る。
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西向きだったので美しい夕日を眺めることも出来るだろう。いつかそうした時分に足を運んで、瀬戸内に蕩けて沈む太陽を飽かずに眺めてみたいと思った。

アルプス喫茶店 / 八栗駅六万寺駅
昼総合点★★★☆☆ 3.3

2013年5月15日 (水)

麦秋西の旅1:讃岐うどん巡礼

知人から「高松に行くのでうどん店の情報を教えて」とメールをもらった。店の情報を取りまとめている内に「久々に行くか・・・」という気持ちが高まり、かねて行きたいと検討していた西を堪能するルートに絡めて旅することにした。まずは朝一の飛行機で高松に入って讃岐うどん巡礼から。

【はゆか】★★★+
最も愛してやまない「讃岐の里」が運悪く定休日だった為、口開けは初めてとなる「はゆか」にした。10時半とあって店内は人もまばらだったものの、途切れずにぽつぽつと人が入ってきたから人気店なのだろう。

この後「長田」で冷やしうどん、「よしや」でかけを食べるつもりだったので、冷やしおろしぶっかけを注文。
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ぬれぬれと輝くうどんに期待を高めてずるると啜ると、つるりとした肌合いのうどんが口の中で暴れる。「うんうん、これこれ・・・」と噛み締めてはずるりと啜ってあっという間に完食。全体に調子が整っていて「おいしい讃岐うどんの標準形」といった感。幸先はなかなか良かった。

【長田】★★★+
個人的にはここの冷やしうどんをいりこ感の強い釜揚げの出汁で食べるのが大好きで、今回訪問した店の中では最も期待していた。その期待に違わぬ素晴しい麺が運ばれてきて否が応でも期待が高まり、つばも溢れる。
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必ず出来たてを供してくれる麺はにゅるちゅる感が強く、コシは強いもののたおやかな風情が感じられてやはり旨い。しかし今回はいつもと勝手が違った。出汁だ。なぜか甘みが強いぶっかけ出汁のような味に変わってしまっていた。海の塩っ気を感じさせる讃岐特有のいりこ風味と好相性だと思っているが、最近は観光客が多くて路線変更したのだろうか。この部分がちと残念だった。

【よしや】★★★
こちらも新規で訪問した店。このあたりは店めぐりではよく通っていたのだが、実際食べたのはなかむらぐらい。好きだった宮武の雰囲気を味わえるということで訪問した次第。ご主人の正調讃岐弁に誘われて、ひやあつのかけうどんを注文。確かに宮武ばりの麺のひねりはあったが、全体にコシがなく、また麺の太さにばらつきがありすぎて、食感にまとまりがなかった。こちらの出汁も甘めの出汁で「讃岐感」は薄かった。昼前の絶好の時間で、しかも出来立ての麺だったので期待したのだが、少し残念だった。
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好きだった「彦江」「宮武」「松家」がなくなってしまい、讃岐うどんにあった「自宅の延長のような素朴なシチュエーションでうまいうどんが!」という驚きが無くなってしまったのが少し残念に感じた巡礼だった。

はゆかうどん / 羽床駅
昼総合点★★★☆☆ 3.4

純手打うどん よしやうどん / 宇多津)
昼総合点★★★☆☆ 3.1