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2020年3月15日 (日)

春光駘蕩筑豊肥5:キッチンWILL

大分ではホテルマイステイズ大分に宿をとった。水回りがリノベーションされていて全体に清潔な雰囲気。
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武漢騒ぎで中国人の来日が止まっていたからか、これで1泊6千円ちょっとというのはお得に感じた。(ちなみに緊急事態宣言渦中の今は4千円と破格の御値段)

駅から少し遠いここに決めたのは、大分にわざわざ一泊する理由である「キッチンWILL」にほど近いからだ。4年ほど前、恐る恐るスナックビルの一室のドアを開けて入ったら旨い肴と日本酒が揃った良店で、ご主人とも話が盛り上がり「今度は家人を連れてきます。」と再訪を約したのだった。その後、あれよあれよという間に人気店になったようで、今回はかなり早いタイミングで予約を入れて伺った。

開店と同時に伺ったが直にカウンターが埋まり、奥の座敷も宴席が開かれてあっという間の大盛況。皆予約の客のようで、人気の高さがうかがえた。

ここに来たならばとにかく旨い魚を・・・と思って刺盛を頼むと、この日は関鯖・縞鯵・間八・鰤・鮃・鯛と好みの青白を中心とした魚たちが見目麗しく盛り込まれて供された。
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包丁が冴えわたり、惚れ惚れするような身のエッジに見蕩れるのもそこそこにして口に運ぶと、舌をたぶらかす様な婉然ぶりを見せて、その潤みをたたえた身にゾクッとさせられる。おまけに二月初旬と時期が良かったからか、どの魚もごく品の良い脂が延々と口中にこだまするので、思わず目をつむって味わいに集中することになる。この凄艶な魚たちをまた食べることが出来た悦びにほくそ笑みながら「庭のうぐいす」を流し込んでやると、ホーホケキョの一つも言いたくなるぐらいの昂揚感に包まれた。

この他焼き椎茸や白子酒蒸し、数の子西京漬けなどなどをいただき、最後は琉球丼できっちり〆て結願と相成った。ご主人は終始忙しそうだったので、御勘定の時に4年ほど前に伺った話をすると「今日はお愛想なしですみません。」と言われてかえって恐縮した。次回こそは前回訪問時に入荷していなかった盛りの鮎を食べて、大分の山海の幸をまた存分に堪能したいと思う。御馳走様でした。

意気揚々店を出て、ほど近い坂茂設計のOAPMの美しい夜の姿も拝めたし

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連日のカラオケも盛り上がって、個人的には申し分のない大分での一夜となった。
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2020年1月25日 (土)

10年代を振り返る3:映画・競馬・日本酒他

【映画】
2012年から見た映画の寸評を手控えするようになった。2019年末までで210本、凡そ月2本のペース。名画座に通うようになったので60年代を中心に古い邦画を見る機会が増えた。

まず頭に浮かぶのは特集に通った増村保造×若尾文子の諸作。


斜陽に入った70年代のものでは「竹山ひとり旅」と「はなれ瞽女おりん」の物哀しさが印象深い。亡くなった小沢昭一さんの出演作ではこれ。

洋画は「ブルージャスミン」「息もできない」「鬼が来た」の苦さが思い起こされる。

リアルタイムではやはり「シン・ゴジラ」と「この世界の片隅に」ということになる。また小品だが「ふがいない僕は空を見た」は平成後期の時代の空気とリアリズムを刻んだ映画としてその名を留めておきたい。

【競馬】贔屓の馬はダノンシャーク、ペルシアンナイト、アルアイン、アデイインザライフなど。改めて挙げてみるとマイラーが多い。ベストレースはこれ。

デニムアンドルビーの伸び脚に絶叫した記憶が甦る。

定期的に高校や大学の友人と府中に通うようになったのもこの10年。ミストラルクルーズには二度会ったが、震災を乗り越えていわきの地で未だ命を長らえているのはただただ有難いことだと思う。

【日本酒】
好みの銘柄が増えた。行った店で好印象が残り、そこから飲みだすというのがほとんど。現時点での十選を知りあった店と共に。
・剣菱:きよ友(長原)
・福祝:諸星酒場(新子安)
・風の森:宇木央(新橋)*2019年閉店
・開運:酒楽(掛川)
・雨後の月:すし処のがみ(四谷三丁目)
・澤屋まつもと:田(大井町)
・万齢:一天張(唐津)
・仙介:キッチンウィル(大分)
・伯楽星:ふるさと納税(川崎町)
・瀧自慢:これは前から飲み続けているが、季節限定酒の名前募集に採用されて思い入れが一層強くなったこの10年だった。
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【閉店】
2018年が閉店ラッシュ(東京地方)だったが、その前後にも大井町の信州酒場浅野屋や武蔵小山の新楽飯店などが再開発で立ち退きを迫られて店を閉じられた。浅野屋のおかみさんの、てきぱきとしながらも楚々とした感じを失わない雰囲気が懐かしく思い出される。新楽飯店無き今、美味しい五目焼きそばを食べられる中華の店を未だに探し求めている。
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(写真はネットから引用)

2019年12月 5日 (木)

舌尖上的中国

もっぱら見るのはBSというシニア寄りのテレビライフを送っているが、そんな中で最も楽しみにしているのはBS12で放映されている「舌尖上的中国」という中国各地の食を人々の生活に密着しながらとらえるドキュメンタリー番組だ。

そもそもは正月に特別版として中国各地の新年を祝う料理を特集していたのだが、美麗な映像と臨場感あふれる音声、集う人々の笑顔ととりどりのご馳走がどれも魅力的で、食い入るように見た後に「こういう地に足ついた中国料理を食べたいものだな・・・」と嘆息すら洩れた。

この番組のいいところは料理に仕上がるまでの人々の営みを丁寧に拾っているところだ。魚であればどんな漁で獲れたのか、米であれば数多の農作業を経ている様子を長期に渡って密着し、子を思う母がどんな思いで料理を作り、特級調理人はどのような包丁捌きで皿の上に画を描くのか・・・そういうサイドストーリーが豊富だからメインの料理が殊更ご馳走に見える。また伝統的な手法で素材を育て、仕込み、調理する姿を追うことが多く、まだ中国には多くの手仕事が残っていて、その技術レベルが極めて高いことがありありと判る。

印象に残っているのは豆腐に白カビを生やして発酵させて食べる毛豆腐、それから毎日店を閉める前に店中を隈なく掃除する杭州の片儿川の店「菊英麺館」、塩井から塩を精製する際にがり成分を除去するために豆乳を入れて凝固させること等々枚挙にいとまがない。特に最後のエピソードは豆腐の淵源を示唆するもので、「元々はにがりと豆乳の関係は逆だったのか!」と驚かされた。

また取り上げられた飲食店で偶然にも香港の深水埗にある「劉森記」があった。中国大陸に数百万はあると思われる飲食店の中で、まさか自分が行ったことのある店が出るとは思ってもみなかったので率直に驚いた。転変著しい香港にあって古風な作り方を墨守していて、店主の誇らしげな顔が頼もしく見えた。
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↑劉森記で食べた水餃雲吞麺

先日は大学受験の為地方の巨大受験専門高校に通う母と娘、幼子を田舎の母に預けアイフォンなどを作る鴻海配下のフォックスコンでひたすら単純作業を続ける若い夫婦など、苦闘する人々に食がどう寄り添っているのかに焦点を当てていて、現代中国の世相にも通ずることが出来る内容で、大変感心させられた。

本国でも高い評価を得ているそうで、番組に出た店は大盛況となるバブルも現出したそうだ。確かに杭州の菊英麺店には大資本が入ってあちこち店舗を拡充しているようだし、「劉森記 舌尖上」と入れて検索すると、本土民らしき人たちのブログなどが大量にあって、その影響力の大きさを物語っていた。

翻って日本でこういう番組はできるだろうか・・・と思ったが、何年か前に「新日本風土記」で寿司を取り上げた時はこれに肉薄するいい内容となっていて、未だに自宅のHDDの中に残している。これを制作したオッティモには是非奮起してもらい、NHKにプレゼンの上「舌先の上の日本」を作ってもらいたいと思う次第。


2019年8月20日 (火)

東京都心の和菓子屋巡り

東京の都心三区で小商いの筆頭ともいえる和菓子屋を営むのは到底困難な時世となっているから、たまに見かけると応援方々買って帰ることになる。

赤坂見附など用事があって降りた例はないが、幸い東急メトロパスは地下鉄線内乗り降り自由なので、小山台高校の応援に神宮に行った時に地上へ上がってすぐの青野に行ってみる。駅出口すぐ横という申し分ない立地で盛業していて頼もしいかぎり。中に入ると朝生菓子から上生菓子、季節柄涼し気な水羊羹や水まんじゅうと豊富な品ぞろえで目移りするが、お手並み拝見と思って「ほおずき」と「ほたる」との銘の上生菓子を購入。
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裏に戻って商品を持ってきたから、この季節の事、冷蔵していたようで餡がやや硬く感じられ重い雰囲気だったのは少し残念だったが、その造形の美しさはなかなかのものだった。若主人とお見受けした方の練れた接客は流石のもので、この立地ならではのお使い物需要を手堅く満たしているようだった。

銀座に出た時にはイトシアの裏に回って大角玉屋の出店を覗くようにしている。家人がよく土産に買ってきてくれて馴染みになったが、高速道路の下のこじんまりとした店がいかにも和菓子屋らしくて好もしい。いちご大福の元祖として名が知れているが、ここも上生菓子を何種かは置いているのでそれを目当てに足を運んでいる。

夏のある日、水の流れを模したものと「水遊び」との銘のものを買って帰る。古典的な型のものも、現代風にポップな色調に仕上げたものも仕上がりは美しく、一服の清涼剤になる。
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しかして餡は個人的には得意ではないねっとりとした系統のもので、夏だけに舌に甘みが残るのは爽快さという点では残念だが、逆に秋冬にはこの甘さの余韻が心に響いてくるだろう。

三田の慶應の前の大坂家は山口瞳の実家がが麻布に家を構えていた時の贔屓で、御母堂の依頼で「織部饅頭」を作ったという逸話を聞いて10年以上前に出かけて行ったことがある。過日界隈に用事があったので立ち寄ってみると、変わらず盛業中のようで安心する。

萌え出づる芽吹きを模った「若草」と君時雨を買って帰ったが、まず色調の具合がいい。そうして「若草」は細かな細工が施されていて、それが春の野のわき立つ精気を感じさせて見事な造り。
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甘みも餡のほどけ具合もごく品が良くて、この辺りの旧家にお邪魔した際に美味しい緑茶と共に出されたらさぞ良いだろうなと夢想してしまった。

そういえば・・・と大坂屋の店先で思い出して、歩いて10分ほどの松島屋へ行ったらまだ豆大福があったので買って帰る。東京三大大福の一角を担う店だが相変わらずざっかけない店構えで、まだ港区にも庶民の生活が残っていた頃の風情が色濃く残っていて好ましい。そうして豆大福は相変わらずたっぷりのえんどう豆とさっくりと切れの良い餡、ふるふるした食触が身上の餅が三位一体となって卓越した味に昇華しており、しみじみ美味しい。
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近々こちらの近所に引っ越される上皇夫妻にも、遠い昭和を懐かしむひと時に食べていただきたい逸品だと思う

2019年6月30日 (日)

津軽海峡北南20:ル・ブルジョン・開雲堂・大阪屋

特に感銘を受けた個人的弘前スイーツ御三家を別に記すことにする。

【ル・ブルジョン】
オー・ボン・ビュータンで修業された方がやっているというのでアップルパイを買ってみる。開店早々に行ったのでパイはまだじんわり温かく、ほんのりバターが香って食欲をそそる。薄玻璃のようにシャクっと砕けるパイ生地は実に繊細な仕上がりで、中のリンゴのコンフィチュールとの相性もいい。後口さっぱりで口に油っこさが残ることもなくごく軽快な仕上がりで、これなら他の品も間違いないだろうから、あれこれ買えばよかったと後悔した。
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【開雲堂】
土手町の商店街に重厚な店舗を構えていて、一種のランドマークのようになっている。中はほの暗い明かるさに保たれていて、日本文化の隠れた功労者である陰翳を大事にしている姿勢が好ましく感じられた。和洋いずれの菓子も手掛けていて目移りしたが、ここは初心貫徹、七夕を題材とした「織姫」と願い笹を模った上生菓子を買って帰る。
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織姫は橙色と桃色を隔てる乳白色の嶺が天の川のように見え、そこにまぶされた砂糖の粒子が無数の星々を、そして金粉がひときわ輝く織姫星ベガを表現していて、二寸たらずの練切に小宇宙が見事に抽象化されているのに驚かされる。そして朝出来の新鮮なものだったようでふっくらとした餡は甘さの調子の品が良く、その口溶けの良さは出色だった。流石はそれと知られた名店の味わいで甚く満足した。

【大阪屋】
和菓子の老舗としては開雲堂と並び称される店だったので、弘前を発つ日に寄ることにした。創業から凡そ400年、京都でもこれに太刀打ちできる店はほぼ無いほどの伝統を重ねてきた店はやはり威容を誇る店構えで、金看板に店の矜持が伺えた。
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中に入ると名高い螺鈿細工の棚が見えて、鈍く放つ光の屈折に目も眩みそうになる。
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↑写真はネットから引用

上生菓子を二つ、それにここでしか買えない銘菓「竹流し」を購入。上生菓子はなんと190円と破格の御値段。雨露に濡れる紫陽花二題は、型取りしたものはしっくりと、きんとんのものはふかふかとした餡の具合でその違いが楽しめるのが嬉しい。
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濃いめに抽出した麦茶と一緒に頂いたら「梅雨空続きも悪くはないな・・・」と思わされたから、流石の仕上がりである。

大名物「竹流し」は、まあ江戸の昔はそうないもので驚かされたかもしれないけれども、蕎麦ぼうろが遍く流通している現代にあってはそうでもないだろう・・・と思ってひとかけ食べてみたら、絶妙の脆さといい、微かに立ち昇る蕎麦の香ばしさといい、ごく穏やかな甘さ加減といい、実に質朴な風味なのだが切ない気持ちにすらなる逸品だった。
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↑純白無垢の缶が高貴さを演出
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北の地の厳しい環境にあっても甘やかなひとときを楽しみたいという切実な思いがこの一菓に結晶したようにも思え、それを数百年と途絶えずに作り続けてきた店の凄味を知ることになった。もう一つの銘菓「冬夏」も素晴らしいということなので、必ず再訪して四百年の星霜を余すところなくこの身に併呑したいと思う。

2019年6月27日 (木)

津軽海峡北南17:高砂・仁平寿司

弘前での昼食は二日とも立派な普請の店でとった。

【高砂】
門を構える「高砂」は敷地に蔵もある豪壮な屋敷で、奥の座敷では精進落としが開かれるなど土地の人の節目節目にも対応する大店だったが、店の人たちは大らかで特段緊張を強いられることもなかった。
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暑かったのでもりそばを食べようとしたところ、こちらではざるが大盛であると書かれていたので、そちらにする。
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待つこと数分、供された蕎麦はほっそりと白い更科蕎麦で、店の雰囲気によく合っていた。
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汁は甘からず塩辛ずの程よいもので、するりするりと胃の腑に滑り込む。弘前はアップルパイや和菓子など甘いものの宝庫なので、昼を抑えめにしたいという向きも多いと思うが、ここなどその要望にピタリと応えてくれると思う。

【仁平寿司】
九年前に弘前に来たときには情報が少なすぎて躊躇してしまったが、今回は様子が判ったので予約を入れて伺うことにする。弘高下駅からすぐの店は高砂よりもさらに豪奢な造りで、一見では寿司屋であることが判らないかもしれない。
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中に入っても銘材をふんだんに使った見事な柱や梁が壮観で店に品格を与えていたが、不思議と威圧感は感じずに唯々その直線の決まった美しい空間を堪能することが出来た。電話した時にお決まりの3,000円があるとのことだったのでそれを二人前頼んで、座敷から望む窓外の青紅葉を肴に盃を傾ける。
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直に華麗な色絵が施された大皿に盛られて端正な寿司が登場。一瞥しただけで「これは間違いないだろう」と思ったが、果たしてどのネタも申し分なく美味しくて相好が崩れるのを禁じ得ない。
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どのネタも口に入れると、その真味が真っ直ぐに舌に伝わってくるのだがその加減はあくまで優美で厭らしさがまるでない。そうして「ほう、これは・・・」と堪能していると、蜃気楼のように跡形もなく風味が消えていく。だから、続けて食べても前の魚の余韻が混入することなく、毎度毎度きちっとその魚の真味のみが舌にたち昇る。練達の仕込みがなされていることがありありと感じられて、いや実に驚かされた。

まだいけそうな腹具合だったので、追加に鉄火巻をお願いすると「巻物でしたらうちの梅巻は他所にないものだから是非食べて行ってください」とご主人からのお誘いが。もちろんそれも頼んで、これもお勧めという穴子と美味しかった北寄貝を追加で握ってもらう。
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鉄火は勿論美味しいものだったが、お勧めのカリカリ梅を巻いた梅巻はなるほど他にはそうないかもしれない。梅雨前の少し蒸し暑い時だったから、一緒に巻かれた紫蘇の香りとシャキシャキとした梅の歯応えが心地よく感じられて、印象深い一品になった。

女将さんの細やかで心安い接客は気持ちの良いものだったし、大女将もネタの下拵えを手伝ってきっちりその任を果たされているなど家族皆で客をもてなそうという真摯な気持ちが満ちていて、とてもよい時間を過ごすことが出来た。ここは季節を替えて必ず再訪したいと思う。御馳走様でした。
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2019年6月26日 (水)

津軽海峡北南16:ピッツェリア・ダ・サスィーノ、ふじや

弘前最初の夜は自家製のモッツァレラチーズを使ったピッツァが楽しめるというピッツェリア・ダ・サスィーノへ行った。昼は大盛況の店と聞くが夜の早い時間はまだ空いていて、ゆったりと生ビールを呑み自家栽培の野菜を使ったサラダや生ハム・モッツァレラを食べながらピッツァの焼き上がりを待つ。
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すると焼き手の方が「二枚ともマルゲリータのご注文ですが、一枚は何か別のものに致しましょうか?」とテーブルまでやってきたので「マルゲリータが大好物なんです。それでナポリにも行ったぐらいで」と伝えると、勇躍窯の前に戻って焼き始めてくれた。やってきたピッツァは焼けて尚トマトソースに潤いがあって瑞々しく、自家製モッツァレラも気持ちよいぐらいに伸び、その上旨味も充分あって期待通りの美味しさ。
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久々に上出来のマルゲリータにありつけた悦びに浸っていると「もう一枚は今のとは少し違った味わいにしてみますね」と再び焼き手の方が登場。その二枚目、確かにチーズのコクが増して最初のよりもパンチがある感じ。「そうなんです。丁度よく熟成が進んだモッツァレラを使ってみました。」と嬉しそうに仰る。そこからナポリに修業に行ったことや、我々が訪れたことのある店の話でも盛り上がる。

まさか弘前でナポリ仕込みのピッツァに出会えるとは思わなかったので嬉しい驚き。それにしても自家製のモッツァレラでナポリピッツァを焼いているなんて日本ではそうないだろうから、弘前に来たなら是非食べに行くべき店だと思う。

【ふじや】
旅行最終日の夜は気の利いた店で旨い酒と魚をやりたいと思い、評判の良いきくやに5日前から予約を入れて行く。店は満席で入口にはその旨の張り紙がしてあって、否が応でも期待が高まる。
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魚をたっぷり食べたかったので刺身の盛り合わせに銀鱈西京焼き、穴子白焼き、とうもろこしの天婦羅などを豊盃で頂く。

刺身の盛り合わせはたっぷりやって来てどれも大ぶりな切り身だったが、如何せん味わいの輪郭が少しぼやけて感じられ、ちょっと残念。それでも鮃と帆立は雲丹と一緒に食べてコクを足してやったら美味しかった。これは昼に仁平寿司でいい魚を随分食べてしまったことによるマイナス補正が働いてしまったのかもしれない。
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一方、銀鱈は味噌の漬かり具合が絶妙で、その風味と脂の乗った身の協奏は得も言われぬものだった。
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穴子白焼きとトウモロコシの天婦羅はまずまずといったところ。期待していた分ハードルを上げ過ぎた感があるが、どうもここはコースでお願いすると満足度が上がるようになっているらしい。次回訪問時はそうしよう・・・と階段を下りながら思った。

2019年6月22日 (土)

津軽海峡北南12:シュトラウス・甘精堂・クレオパトラ

【シュトラウス・甘精堂】
青森に行く楽しみの一つは「シュトラウス」に再訪することだった。相変わらず豪奢な雰囲気を保っていて、判っていてもここが青森であることを忘れさせる位のものだから矢張感服する。
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前回の訪問時には品切れだった「アプフェルシュトゥルーデル」があったので迷わずそれを注文する。
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薄手の生地の中には林檎・干し葡萄・ナッツ類のフィリングがぎっちり入っていて、ゲルマン系の律義さを体現しているかのようだった。酸味と甘みと香ばしさ、それにシナモンの香り付けも程よくて絶妙の均衡を保っている。これには生クリームの利いたウィンナーコーヒーの円やかな苦みが丁度よく、ウィーンでの午後のひと時もかくあらんという完成度に甚く満足した。

階下に降りるとお土産用の廉価版シュトゥルーデルがあったので買ってみたが、こちらはアップルパイのスティック版という仕上がりで、青森土産として喜ばれそうな一品だった。
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ここに来て忘れてならないのはそもそもの経営母体である和菓子の甘精堂で、昆布羊羹で名を馳せているが店の片隅に美麗な仕上がりの上生菓子が置いてあったので買って帰った。「清流」は見事な透明感に加え、苔の表現と共に川の匂いを運ぶ青海苔が微かに忍ばせてあって、その心配りにも瞠目させられた。
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「涼風」の淡い色彩と情緒深いグラデーションも美しい。
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いずれも申し分ない出来で揺るぎない老舗の底力を見た思いがした。ここの上生菓子はもっと評判をとってもいいと思う。

【クレオパトラ】
今夜の宿であるアートホテル青森に向かって新町通りを行くと、終点近くにただならぬ雰囲気を放つ喫茶店があったので、当初予定した「マロン」をやめて翌朝その「クレオパトラ」へ行くことにした。

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重厚で装飾的な調度品は純喫茶らしさを感じさせるが、店名からエジプトやアフリカを想起させるオブジェも多数飾ってあって、兼高かおるの家にでも招かれたかのような気持ちになった。
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また京都のイノダ本店のように店内に坪庭があって、そこから採光されているから店構えの印象より随分明るく、朝露に濡れ青々とした草木を眺めて飲む珈琲には清々しさすら漂っていた。

朝食に頼んだミックスサンドは鮮やかな色合いで食欲をそそり、オムレツも固からず柔らかすぎず玄妙な仕上がりで朝から幸福な気持ちになる。
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トイレの装飾も特徴的で印象に残るものだし、そこここに念の入った見事な店だった。余談だがインスタグラムに随分当店の写真が載っていて、ここを放ってはおかない青森女子の成熟ぶりにも感じ入った次第。

2019年6月18日 (火)

津軽海峡北南8:ティーショップ夕日

函館に来たかったのには三つ理由があった。その内の競馬場に足を運ぶことと大沼へ行くことは果たして、最後の宿願である「ティーショップ夕日」に向かったのは夕方17時前。元町のバス停から船見町行のバスに乗って終点までいくと坂道で苦労することもなく店の至近まで辿り着くことが出来た。少し歩くと薄桃色の平屋が見えてきて、そこが「夕日」だった。
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眼前に函館湾が広がり、夕日を浴びながら水道を行きかう船の様子が眺められる。店内はごく静かで、ゆったりとこの黄金の刻を楽しもうという客が思い思いに窓外を眺めていた。
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家人は嬉野の煎茶、こちらはほうじ茶を頼んだが、家人の緑茶が完璧な抽出によってとてもコク深く、昆布のような旨味が感じられるのには驚かされた。いかに普段雑にお茶を入れているか、自然と反省する気持ちになる。
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それにしても深い味わいの茶を喫しながら飽くまで輝く海を眺めることが、ここまで心に安らぎをもたらすとは思わなかった。どういう状態になるのかといえば、心地よい春風と陽を受けながら、いつまでもいつまでもウトウトと微睡み続ける感じに近い。ひと時地上の極楽に揺蕩うことが出来た悦びは、なかなか得難いものがあった。僅か40分ほどの滞在だったが、私にとっての函館の風景といえばここで見た野の花やきらめく漣や風雪を耐えた建物の風合いということになると思う。幾久しく続いてほしい店だ。
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2019年6月16日 (日)

津軽海峡北南6:阿さ利・いちりき

【阿さ利】
函館での夕食は二晩とも肉にした。第一夜はすき焼きの老舗「阿さ利」。予約の電話を入れたら平日にもかかわらず「17時からでしたらなんとか席を用意できます」と言われたから、大変な人気店のようだ。

西日に輝く入口をくぐると下足番がいたであろう玄関があり、靴を脱いで座敷に通される。古い日本家屋を丁寧に使い込んでいて、陽が沈みかけて部屋に陰翳が忍び込んでくると、使い込まれた木の風合いが次第に闇に馴染んでいって、独特の安らぎを与えてくれる。
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そこに鎮座する黒光りする鍋に仲居さんが野菜と肉を投入して火にかけると、じきにぐらぐらと割り下が煮えて堪らぬ匂いが鼻腔をくすぐる。
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頃合いを見て肉を引き上げると僅かに残る薄桃色がほの暗い夕闇にぽうっと浮かんで、座敷はいつの間にやら心躍る舞台装置に変じていた。さしがかなり入っている肉だったが、口がだれず胃ももたれずに済んだのは、清澄な鶏出汁をふんだんに使うところにあるのかもしれない。また、〆の柚子シャーベットの柚子感が強く、これが口と胃をさっぱりと洗ってくれているのも大きい。
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これだけの雰囲気とこれだけの味わいで二人で8,000円少しというのは随分値頃に感じられ、この辺が人気のゆえんだと感じ入った。
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【いちりき】
二日目は「北海道に来たからには塩ホルモンとジンギスカンは外せない」というこちらの希望に真っすぐに応えてくれる「いちりき」さんに行った。
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塩ホルモンメインの店だが、生ラム肉も置いてあるから一軒でどちらも楽しめるという旅のものには有難いお店だ。
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こちらも平日というのに入店時には満員御礼。肉をもりもり食べてる女子会など、どの席も盛り上がっていて見ていて壮観だった。こちらも負けじと塩ホルモンにジンギスカン、ハツ、ガツを頼んで早速焼き始める。
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↑ビールはやっぱり赤星!

塩ホルモンは実に丁寧に掃除されていて、雑味が全くなくクニクニした食感をいつまでも楽しむことが出来る。ジンギスカンもさっと炙れば十分な身質で、噛めば肉汁がほとばしってこれは旨い。
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旭川の「馬場ホルモン」で塩ホルモンを知った身としては、やっぱりガツを食べないとと思って頼んだのだがこれが白眉で、サクッという信じがたい歯応えと旨味をたたえた肉汁が口いっぱいに広がって、興奮状態に陥る。
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そこにご主人からサービスでフランスパンと溶かしバターが供され、これを炙ってバターを垂らしこんでやると食欲中枢が震えて制御が利かなくなり、あっという間に消え失せてしまった。特に溶かしバターは「魔液」とでも名付けたくなるほどの威力を発揮して、空恐ろしさすら感じた。
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これらに野菜スティック、ビール二本にレモンサワーで5,200円ほどと格安だったが「200円はおまけで5,000円!」と来たものだから、完全に脱帽するよりほかなかった。函館に来て海鮮など食べている場合ではない。そうして函館の塩といったらラーメンではなく「いちりき」のことだと記憶に刻んで店を後にした。本当にご馳走さまでした。

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