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2020年4月 3日 (金)

春光駘蕩筑豊肥7:檸檬樹・珈琲店ミマツ・カフェBGM・Tan's bar

唐津・大分・由布院で立ち寄った喫茶。

【檸檬樹】
唐津駅から線路沿いに少し行ったところにポツンとあり、近隣の住民の憩いの場としてその任に当たっている様子。
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「欧風」と呼びたい佇まいの店は中に入るとドライフラワーがたくさん下げられており、また窓の外にも季節の花が咲いていて心和ませるものがある。
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器の街だけあって、カップも品の良い優美なもので供されて、馨しい珈琲の香りとともに少しだけリッチな気分になる。
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古き良き喫茶店文化がきちんと動態保存されていることを嬉しく感じた。
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【珈琲店みまつ】
大分まで列車に随分揺られたので、ホテルに行く前に小休止しようと行きがけにあるこちらに伺う。プレスの利いた真っ白なシャツを纏う店主が醸し出す雰囲気もあって、ピンとした空気が店内を覆っている。しかし静かに丁寧に珈琲を入れる様子を見ている内に直に慣れて、時折チンと音を立ててやかんから上る湯気の行先をあてもなく眺めたりして供されるのを待つ。

驚いたのはアイスコーヒーを頼んだ家人にはクラッシュアイスを敷き詰めて保冷された生クリームが、繊細で瀟洒なガラス容器で出されたこと。確かに生クリームの鮮度を保つにはこれ以上の方法は無いように思うが、たかが一杯にここまでする気働きに感服した。こちらが頼んだカフェクレームも、ウィーンのカフェのメランジュもかくあらんと思わせる見事な泡立ち具合で、ごく軽快な味わいの仕上がりに深く満足した。本筋の店を求める向きには申し分ないと思う。
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【カフェBGM】
モーニングをやっているとのことで、朝食をとりに伺う。ビルの二階の店は思ったより本式の造りで壁面には名画がずらりと並び、天井の梁や鉄の柵などを見るにかすかにアールヌーヴォーの風情を漂わせていて好もしい。
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そうしてそういう空間に孫が書いたじいじの画が飾られてるのも妙に馴染んでいてこれも好ましい。モーニングはこれぞモーニングというもので過不足はなく、店内にかかるエヴァ―グリーンなマスターピースも耳に心地よくて、朝からいい空間でゆったりでき満足した。

【Tan's bar】
長湯から明礬に向かう途中、由布院を経由した。それは矢張山荘無量塔のTan's barで暖炉の熾り火を眺めながら、閑雅なひと時を過ごしたいが為だった。

宿に着くと丁度チェックインの時間帯だったので、入口に従業員がずらりと並んでいて少し気後れしたけれど、barへ行ったら誰も居らず貸切状態だったから堂々と暖炉の前に陣取って、大好物のPロールを相方に「赤い翼竜」と勝手に呼んでいるスピーカーから流れるバロックに身を委ねる。
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実に至福の時間で、半醒半睡を揺蕩う心地よさと言ったらない。しかし、後から来た老夫婦のシャッター音の連続と店員同士の喋り声に中断されてしまったのはいかにも口惜しかった。この空間を完全に堪能するにはオフシーズンに泊まって利用するほかなさそうだ。
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↑熾り火具合は申し分なかった。

2019年12月11日 (水)

東急バス一日乗車券で師走に紅葉と名建築を楽しむ

代々木上原にある駒場公園内に旧前田家の豪奢な邸宅が残っていて、紅葉も楽しめるというので色々調べると東急バスを乗り継いでいけることが判明したので、例によって1日乗車券をチャージして出かけてみることにした。

駒場というだけあって、東大の施設が散在する通りを行くとその名も「代々木上原」というバス停があって、降りて1分ほどで公園に着く。森閑とした道を行くと、車寄せも備えた見事な洋館が現れる。
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昨年整備されて一般公開され、あちこちで取り上げられていたがブームは一段落したようで、全然人を見かけない状態であちこちの部屋を覗く。
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この建物の建築費はどこから来たのか興味が湧くほど造りは本式で、いかにも貴族の館という風格を兼ね備えている。さすがは重要文化財に指定されているだけのことはある。
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その建物を独り占めしている時間がかなり長くて、大変贅沢な時を過ごせた。

隣には和館があって、そこは見事な紅葉の景色を備えていて、付書院はぼんやりと紅に染まっていて情緒深い。この環境なら一句詠んでも、上出来のものが誂えられるだろうと思う。
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満足して近くの岬屋に向かう途中で、共にマスクのカップルとすれ違う。「俳優の青木某氏では?随分地味な奥さんだな・・・妊娠しているみたいだけど。」との感想が脳裏をよぎり、帰宅して調べたら相手は優香だということだった。

岬屋は細い路地にあるが、暖簾が揺れていてようやくそこだと気づく位小体な店でちょっと意外。元々工場がメインで、そこに直売できるスペースを作ったような雰囲気だった。

初霜は餡の中に栗餡と思われるものが包まれているが、味わいの諧調がほぼ変わらないのでその効果は判然としなかった。
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枯露柿は大福を柿に模したもの。中の餡の滑らかさと軽い口当たりは出色だった。
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黄身時雨はきんとんの様にも見えるが、かっちりとした造り。しかし餡はふんわりしていて、この辺りは最近評価が高い店に共通する仕上がりで人気があるのも頷ける。
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再び渋谷に戻って大井町行のバスに乗り、大崎広小路で降りて五反田の「亜細亜」へ。昼から少し奢って五目そばを頼む。「うちのは塩味ですが宜しいですか?」とミャンマー出身と見受ける店員が確認してくるあたり、よくしつけが施されていて安心感を覚える。そこまで気働きが行き届いているから、五目そばも良かった。
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凡百の店では火の通りが甘い人参や白菜がたんまり載っていて幻滅してしまうこともあるが、ここのはきちんと味が染みこんでいて、確かな具材にきちんと下拵えしてあるからそれぞれの味わいが際立っていていい。巻繊のような面白い具材もあって、値段相応の一杯だったからとても満足した。

食後、一旦帰宅した後、夜になって川崎までバスで出てGUの超大型店限定のブーツを2千円で買う。こういう機会がないとなかなか来れないから、GUには是非都内城南地区にも超大型店を開設して欲しいものだ。凡そ所期の目的は達成したので、駅に隣接したつばめグリルで一献。
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中々の距離を移動して(総移動距離41km)歴史ある建物に紅葉と和菓子、それから老舗中華に買い出しまで済ませて、満足感に浸りながら傾ける黄金色の液体は、思っていた通りの旨さでするりと胃の腑に流れ込んでいった。

最後に一句。 ”紅葉を 師走に愛でる 時来たり ”
・・・あの付書院の効果はそんなには無いようだ。

2019年7月 3日 (水)

津軽海峡北南23:さくらんぼ狩り・秋田犬の里・石田ばら園等

旅の最終日は家人からたっての希望で、まずテレビで紹介されていたサクランボ狩りをしに「津軽ゆめりんごファーム」へ行った。
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↑リンゴはほんのり色付き始めた姫林檎の状態だった。

リンゴ畑の一角に雨除けのついたサクランボ園があり、一人1,000円で1時間食べ放題とかなり良心的な価格設定。行ってみると見事に熟したサクランボがたわわになっていて、摘まんでは口に放り込んで種を吐き、食べてはペッと種を飛ばし・・・・となかなか野趣あふれるもので、猿だった頃のDNAが活性化するのか繰り返していると興奮が高まり苦笑い。充分元は取れたる位は食べられたので、季節の味を思う存分堪能。
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その後、おぐらで支那そばを食べ、
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古遠部温泉に浸かり、
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道すがら以前行った芝谷地湿原に行ったら、3週間前に熊が出没したので閉鎖されていたので、
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大館のアマリリスしんこやへ行って小休止。
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駅前の「秋田犬の里」をぶらりと巡って
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花善の「鶏弁当」を夜御飯用に買ってから、
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季節を迎えていた石田バラ園に。若干見頃は過ぎていたが、それでも実に見事な咲きっぷり。
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隣の「秋田犬会館」も覗いてぐったり気味の二頭を労って、
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愈々大館能代空港に向かう。グーグルマップでは25分ほどで着くと出ていたので余裕だと思ったら、カーナビでは50分以上かかると出てきて離陸ギリギリだったから焦る。下道でトロトロ進むと高速の表示に「大館能代空港」と出てきたのでそれに乗ると、走っている車は皆無で、空恐ろしくなるほど。どうやらグーグルはこのバイパスが開通したことを知っていたが、カーナビは情報が更新されていないのか認識していないようだった。だから、ナビの画面では地図上の道なきところをずんずんとヘリにでも乗ってるように進んでいって可笑しかった。

↑この辺りを飛んでいた

結局余裕を持って空港には到着。雷雨に見舞われ出発は遅れたものの無事の帰京と相成った。

2019年6月27日 (木)

津軽海峡北南17:高砂・仁平寿司

弘前での昼食は二日とも立派な普請の店でとった。

【高砂】
門を構える「高砂」は敷地に蔵もある豪壮な屋敷で、奥の座敷では精進落としが開かれるなど土地の人の節目節目にも対応する大店だったが、店の人たちは大らかで特段緊張を強いられることもなかった。
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暑かったのでもりそばを食べようとしたところ、こちらではざるが大盛であると書かれていたので、そちらにする。
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待つこと数分、供された蕎麦はほっそりと白い更科蕎麦で、店の雰囲気によく合っていた。
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汁は甘からず塩辛ずの程よいもので、するりするりと胃の腑に滑り込む。弘前はアップルパイや和菓子など甘いものの宝庫なので、昼を抑えめにしたいという向きも多いと思うが、ここなどその要望にピタリと応えてくれると思う。

【仁平寿司】
九年前に弘前に来たときには情報が少なすぎて躊躇してしまったが、今回は様子が判ったので予約を入れて伺うことにする。弘高下駅からすぐの店は高砂よりもさらに豪奢な造りで、一見では寿司屋であることが判らないかもしれない。
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中に入っても銘材をふんだんに使った見事な柱や梁が壮観で店に品格を与えていたが、不思議と威圧感は感じずに唯々その直線の決まった美しい空間を堪能することが出来た。電話した時にお決まりの3,000円があるとのことだったのでそれを二人前頼んで、座敷から望む窓外の青紅葉を肴に盃を傾ける。
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直に華麗な色絵が施された大皿に盛られて端正な寿司が登場。一瞥しただけで「これは間違いないだろう」と思ったが、果たしてどのネタも申し分なく美味しくて相好が崩れるのを禁じ得ない。
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どのネタも口に入れると、その真味が真っ直ぐに舌に伝わってくるのだがその加減はあくまで優美で厭らしさがまるでない。そうして「ほう、これは・・・」と堪能していると、蜃気楼のように跡形もなく風味が消えていく。だから、続けて食べても前の魚の余韻が混入することなく、毎度毎度きちっとその魚の真味のみが舌にたち昇る。練達の仕込みがなされていることがありありと感じられて、いや実に驚かされた。

まだいけそうな腹具合だったので、追加に鉄火巻をお願いすると「巻物でしたらうちの梅巻は他所にないものだから是非食べて行ってください」とご主人からのお誘いが。もちろんそれも頼んで、これもお勧めという穴子と美味しかった北寄貝を追加で握ってもらう。
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鉄火は勿論美味しいものだったが、お勧めのカリカリ梅を巻いた梅巻はなるほど他にはそうないかもしれない。梅雨前の少し蒸し暑い時だったから、一緒に巻かれた紫蘇の香りとシャキシャキとした梅の歯応えが心地よく感じられて、印象深い一品になった。

女将さんの細やかで心安い接客は気持ちの良いものだったし、大女将もネタの下拵えを手伝ってきっちりその任を果たされているなど家族皆で客をもてなそうという真摯な気持ちが満ちていて、とてもよい時間を過ごすことが出来た。ここは季節を替えて必ず再訪したいと思う。御馳走様でした。
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2019年6月25日 (火)

津軽海峡北南15:弘前名所めぐり

前川國男は江戸東京たてもの園で旧自宅を訪れた時に直線が生かされた小ざっぱりとした雰囲気に好感を持っていた。その彼が母の故地である弘前に多く作品を残しているというので巡ってみた。デビュー作のこぎん研究所は変哲のない建物に見えたが、それほど普遍性のあるデザインとして日本中で模倣された証左であるようにも感じた。
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ここは二階が前川氏のミニ展示室になっていて、氏の略歴や設計した建物の模型や写真パネルが貼ってあったから、初心者の我々にはうってつけだった。無料ではあるが、寸志として300円寄付しておいた。
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弘前城内には市民会館と博物館が隣り合っている。市民会館に微かな郷愁を覚えたのは、子供の頃に何度か行った桜木町紅葉坂上の神奈川県立青少年センターによく似たデザインだったからだ。似てるのは道理で、これも氏が設計している。
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中に入ると有名なステンドグラスが目を惹くが、これは数年前に作成されて嵌め込まれたものだという。
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こういう建築物だと安易に手を入れようとせず墨守しがちだが、そこに安住せずに沈思黙考を続けて、建物の雰囲気に寄りそう美しい光の景色を生み出す辺り、弘前の人々の美的感覚は相当に優れているように思う。

博物館では昔の弘前の様子を回顧する特別展示がされていて、明治期創業の石場旅館が古地図に載っているのを見つけたりして楽しめた。こちらは後期の作でレンガタイルが前面に出ていて作風の変化がうかがえる。よく雰囲気が似ている東京都美術館も氏の設計と知り納得した。
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ここから至近である城正面の市役所もこの作風を伝えていて、統一感があって好もしい。
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城といえば城内の植物園に白孔雀がいるから見た方がいいと言われ、花々を楽しんで歩いていたら、キューキュー泣き声が聞こえるのでそちらに行くと、純白無垢の美しい姿が見えてハッとした。
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繁殖期が近いので求愛の為に羽根が伸びていて、その優美な姿を見ることが出来たようだ。これはツイていた。

この他最勝院の五重塔も青空を分つように屹立していて見事だったし、その三門の前に樹齢300年近いエドヒガンザクラの樹があって、流石の精気を放っていたのも印象深い。
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宿の隣の日本基督教団弘前教会は真白く気品が感じられ、
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中央弘前駅に隣接する昇天教会はアメリカ開拓時代の素朴な信仰心を彷彿とさせて生垣の薔薇も見事。
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弘前は街のサイズの割に見所が多くて楽しめた。

2019年6月24日 (月)

津軽海峡北南14:大正浪漫喫茶室・喫茶レモン

弘前についてまず向かったのは藤田記念庭園にある大正浪漫喫茶室だ。ホテルのチェックアウトを済ませて観光客が街に繰り出す10時半ごろまでなら落ち着いて雰囲気を楽しめるだろうと思って行ってみたら、果たしてその通りで10時前の入店時には我々のみ。
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しかし退店時には修学旅行生に加え地方視察の地公体関係者もドンドンやって来て、大方予想通りとなった。ここでは市街地から離れていて行きづらい「ピーターパン洋菓子店」のアップルパイをいただく。
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パイ生地の中にしっとりしたスポンジとリンゴのコンポート、それに砕いた胡桃が忍ばせてあって、単純なアップルパイにはない味わいの協奏が楽しめてとてもいい。リンゴの街ならではの凝った一皿にありつけてとても満足した。

この記念館は大正・昭和期に中央財界で名を馳せた藤田翁によって建てられたものだそうだが今は観光の目玉になっていて、弘前に人を誘引する任を立派に担っている。死して尚地元に資するものを遺したあたり、故郷に錦を飾る理想形を見た思いがする。なんでも展示されていた年表によれば藤田翁は大森や荏原に自宅を構えていて、品川区の小学校にも寄進されていたとの由。思わぬ縁も知ることが出来て嬉しくなった。
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↑様々な意匠が美しく保たれていて感服。

【喫茶レモン】
晴れて随分暑くなってきたので、最勝院に立ち寄った際に門前の喫茶レモンで小休止をとった。どことなく昇天教会を思わせる意匠を凝らした外観が洒落ているが、日によってはジャズや室内楽のコンサートも開かれる店なのだそうだ。
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中は天井が高く開放感があって、玄関のドアを開け放していたからとなりを流れる川筋の風がこちらにも入って来て心地いい。店名ゆえにレモンスカッシュを頼んだら、生レモンを絞ってミントの葉も添えてくれた本式のもので嬉しくなる。
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おかげで暑さで減じていた活力が回復して、体の中にも涼風が吹き込んできたようだった。優し気なマダムにレモンスカッシュが美味しかったと告げると「まあ、そうですか。嬉しいです。」と沁み入るような笑顔を見せてくれて、それも元気回復の一助となった。最勝院に来たなら、寄った方がいい店だと思う。
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2019年6月22日 (土)

津軽海峡北南12:シュトラウス・甘精堂・クレオパトラ

【シュトラウス・甘精堂】
青森に行く楽しみの一つは「シュトラウス」に再訪することだった。相変わらず豪奢な雰囲気を保っていて、判っていてもここが青森であることを忘れさせる位のものだから矢張感服する。
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前回の訪問時には品切れだった「アプフェルシュトゥルーデル」があったので迷わずそれを注文する。
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薄手の生地の中には林檎・干し葡萄・ナッツ類のフィリングがぎっちり入っていて、ゲルマン系の律義さを体現しているかのようだった。酸味と甘みと香ばしさ、それにシナモンの香り付けも程よくて絶妙の均衡を保っている。これには生クリームの利いたウィンナーコーヒーの円やかな苦みが丁度よく、ウィーンでの午後のひと時もかくあらんという完成度に甚く満足した。

階下に降りるとお土産用の廉価版シュトゥルーデルがあったので買ってみたが、こちらはアップルパイのスティック版という仕上がりで、青森土産として喜ばれそうな一品だった。
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ここに来て忘れてならないのはそもそもの経営母体である和菓子の甘精堂で、昆布羊羹で名を馳せているが店の片隅に美麗な仕上がりの上生菓子が置いてあったので買って帰った。「清流」は見事な透明感に加え、苔の表現と共に川の匂いを運ぶ青海苔が微かに忍ばせてあって、その心配りにも瞠目させられた。
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「涼風」の淡い色彩と情緒深いグラデーションも美しい。
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いずれも申し分ない出来で揺るぎない老舗の底力を見た思いがした。ここの上生菓子はもっと評判をとってもいいと思う。

【クレオパトラ】
今夜の宿であるアートホテル青森に向かって新町通りを行くと、終点近くにただならぬ雰囲気を放つ喫茶店があったので、当初予定した「マロン」をやめて翌朝その「クレオパトラ」へ行くことにした。

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重厚で装飾的な調度品は純喫茶らしさを感じさせるが、店名からエジプトやアフリカを想起させるオブジェも多数飾ってあって、兼高かおるの家にでも招かれたかのような気持ちになった。
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また京都のイノダ本店のように店内に坪庭があって、そこから採光されているから店構えの印象より随分明るく、朝露に濡れ青々とした草木を眺めて飲む珈琲には清々しさすら漂っていた。

朝食に頼んだミックスサンドは鮮やかな色合いで食欲をそそり、オムレツも固からず柔らかすぎず玄妙な仕上がりで朝から幸福な気持ちになる。
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トイレの装飾も特徴的で印象に残るものだし、そこここに念の入った見事な店だった。余談だがインスタグラムに随分当店の写真が載っていて、ここを放ってはおかない青森女子の成熟ぶりにも感じ入った次第。

2019年6月18日 (火)

津軽海峡北南8:ティーショップ夕日

函館に来たかったのには三つ理由があった。その内の競馬場に足を運ぶことと大沼へ行くことは果たして、最後の宿願である「ティーショップ夕日」に向かったのは夕方17時前。元町のバス停から船見町行のバスに乗って終点までいくと坂道で苦労することもなく店の至近まで辿り着くことが出来た。少し歩くと薄桃色の平屋が見えてきて、そこが「夕日」だった。
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眼前に函館湾が広がり、夕日を浴びながら水道を行きかう船の様子が眺められる。店内はごく静かで、ゆったりとこの黄金の刻を楽しもうという客が思い思いに窓外を眺めていた。
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家人は嬉野の煎茶、こちらはほうじ茶を頼んだが、家人の緑茶が完璧な抽出によってとてもコク深く、昆布のような旨味が感じられるのには驚かされた。いかに普段雑にお茶を入れているか、自然と反省する気持ちになる。
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それにしても深い味わいの茶を喫しながら飽くまで輝く海を眺めることが、ここまで心に安らぎをもたらすとは思わなかった。どういう状態になるのかといえば、心地よい春風と陽を受けながら、いつまでもいつまでもウトウトと微睡み続ける感じに近い。ひと時地上の極楽に揺蕩うことが出来た悦びは、なかなか得難いものがあった。僅か40分ほどの滞在だったが、私にとっての函館の風景といえばここで見た野の花やきらめく漣や風雪を耐えた建物の風合いということになると思う。幾久しく続いてほしい店だ。
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2019年4月12日 (金)

東京から18きっぷで行く日帰り旅:東海道中花見酒(1)

今春の旅も愈々千穐楽。どこが相応しいか検討を重ねた結果、矢張東海道にしようと決めた。これまで素通りしてきた街道沿いに残る別荘建築の見物方々、百鬼園先生ゆかりの興津水口屋へ足を運び、時期を迎えた桜を愛でてから初鰹と静岡銘酒を存分に堪能しようと思う。

川崎駅に予定より早く着いたら、一本前の大船行に間に合ったので乗り込むと、残る停車駅は横浜と戸塚だけだから乗客も少なくいきなり座っていくことが出来た。これは幸先がいい。大船で乗り換え、国府津過ぎでは秀麗な富士も見え、朝から随分気分がいい。
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小田原で降りて乗り換えの箱根登山鉄道には少し時間があるので、駅前の守谷パンへ行って昼食と土産を買う。流石に行列はなかったが、先頭の三十がらみの男が一々パンの特徴を店員に聞き、逡巡しきりで渋滞は発生していた。その後彼はコッペパンを選んだが、そこに塗るペーストの種類を一々聞き出し始め、ついに店員に愛想を尽かされていた。日本の将来は矢張昏いような気がする。
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↑初めて購入したフランスパン。あんパンの外側をたっぷり食べたかった宿願が叶う。

パンを買い込み乗り込んだ登山鉄道は最早日本人は皆無で隔世の感がある。一駅先の箱根板橋で降りて目的地である「老欅荘」へ向かう途上、旧街道に出てこれも有名な「内野家住宅」に遭遇する。
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運営を担っていたまちなみ保存会から「この3月末をもって一般公開は終了した」との掲示があり、ここにも日本の足腰の弱まりを見た思いがする。

そこから細い路地を少し上ると老欅荘が見えた。門前の桜は今が盛り。
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ここを建てた松永耳庵は父が勤めていた会社の開創の人であるから、所縁がない訳でもない。近代三茶人の一人ということでさぞ所蔵の逸品が展示されているのかと思ったが、展示室に茶道具や掛け軸は少なく、またこれというものも無くて少し肩透かしを喰らう。後で調べたら大半のものは東京国立博物館に寄贈してしまったらしい。

その裏手の小山に登っていくと、名前の由来となった大欅が出迎えてくれ、更に行くと住み暮らした庵が静かに建っていた。
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入って右奥の茶室の向こうには桜が咲いていて、風が強かったから吹雪となって広間前の庭に降り積もり、なかなかの風情があった。この茶室を次の間から端坐して眺めると、薄明が差し込む様子が殊に美しく、日本家屋の神髄にわずかに触れた思いがした。

各部屋にはきちんと野花が活けてあって感心したが、池の畔のもう一つの茶室で熱心に作業してる係の方が「私が活けているんです」という。随分熱心に再訪を勧誘されたし、月に一度土曜日には気軽な茶会が開かれるというから次は時間を取って訪問することに決めた。
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ここから東へ行くと、稀代の別荘偏執狂である山縣有朋の「古稀庵」があり、その裏手に腹心清浦圭吾の別荘があるというので、tweedeesマニアとしては足を運ばざるを得ない。(なお、大森山王にある「清浦坂」は訪問済み)
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↑途中竹林と竹垣が綺麗な細道を行く。

今は個人の御宅となっていて、公開日時は限定されているからそれに合わせて行ったつもりだったが、どうも庭仕事が入るようで公開されないようだったので、ここは次回にと踏ん切りをつけて駅に向かうことにする。
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↑古稀庵の門のみ写真に収める。

小田原駅まで戻ると想定よりも随分時間が余った。昼は守谷のパンと思っていたが、前から気になる「日栄楼」へ行って軽く餃子とビールで時間を潰すことにした。
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古びた扉を開けると店主らしき老爺がテーブルに陣取ってテレビを眺め、「どうぞ」と声をかけてきた。その卓には雑然と新聞や調味料が置かれ、うずたかく南瓜煮が積まれた鉢もあり、それを肴に飲み始めているように見える。
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やや荒れた雰囲気に大丈夫かなと恐れて待っていると、席の後ろからジュウジュウ焼ける音がする。なぜか餃子は厨房ではなく、入口横の狭いスペースで作られる仕様になっていた。待つことしばし、想定とはかけ離れた棒餃子が来た。
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こういう古くからの店が、流行りものに手を出して成功した験しはない。失意に暮れて一口食べると「シャクッ」と何とも軽い歯ざわりで餃子の皮が砕け散ると同時に香ばしさが鼻腔をくすぐる。そうして餡からはにんにくの風味が漂って、食い気を荒々しく刺激してくる。ハードルが下がっていたからか、これが抜群に旨い。こういう油で揚げる感じの餃子、例えば宇都宮餃子などは苦手な類のものなのだが、ここのものは別次元の軽やかさですいすいと胃の腑に消えていく。これは思わぬ出会いとなり、甚く満足して店を後にする。小田原市民におかれては、是非当店に足繁く通ってこの隠れた名物を墨守していただきたい。

気分も良くなって、二年前には蕾しか見られなかった城の堀端の桜を見に行くと、今日は通り抜けのようになっていて大変結構な景色になっていた。想定外の大収穫に満足して小田原を後にした。
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2019年3月24日 (日)

東京から18きっぷで行く日帰り旅:焼津酒蔵巡礼(下)

まずもっての目的である磯自慢の酒蔵を見物して、昼飯を調達しに南西にある「サスエ前田魚店」へ向かう。磯自慢の蔵から南下して川にぶつかったら西へ進むという道順をとったが、川沿いの西行きは川筋を抜ける強い西風が吹き付けて思ったよりも前に進まず、しかも乾いた冷たいものだったので痛いくらいに額を撲っていくので相当に骨が折れた。観光協会のご婦人の憂慮の訳をここで初めて知らされることになる。
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それでもようやく到着したサスエは刺身が抜群であることで名を馳せていて、そこが作る寿司や丼だから絶品だというので足を運んだ。12時にならないと弁当類は出てこないというので15分前に行ったらやはり陳列されていなかったので、近くの公園で寒風にやられた身体を陽にあてて養生してから戻ると、賑やかなネギトロ丼といった感じのものが一種類、5点ほど置かれただけだった。

その後も出てくる気配はなかったのでやむなくこれと、これもお勧めというびんちょう鮪の刺身を買って海沿いのふぃしゅーなを目指そうと思ったが、寒風によるダメージが大きく次第に偏頭痛がしてきたので、これ以上風に吹かれるような場所にいるのは困難と判断して、先程陽に当たった公園に向かい、「ここを食卓とする」と宣して午餐を摂ることにする。
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何とはなしに女子向けの雰囲気がするネギトロ丼はいくらや賽の目切りの玉子焼きも載って、目には楽しいが鮪の旨味や醍醐味はどこに隠れたのか一向に現れない。びんちょう鮪も、立ち食い寿司で食べるあれとさして差異はない。どうも予約をして誂えてもらうようなものでないと、その実力は味わえないものらしい。

結構な空振りをしてしまい、しかも酒を口にしてしまったので自転車に跨りトボトボ歩くことになり、その怪しげな風体から通報されて事案化しないかびくびくしながらようやく駅まで戻るはめに。我ながら閉口した。

ここからバスに乗って北に向かうとすぐに菜花が一面咲き乱れている堤に出ていかにも気持ちが良さそうだったから、こっちで飯を食えばよかったと恨めしく思う。その後も菜花は間断なく、庭先に畔に川端に路地に隙間を見つけては咲いていて心を和ませてくれる。
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目的の岡部宿には初亀の蔵と昔の旅籠の建物が残っているという。そこに向かう旧東海道沿いに小川が流れ、河畔には菜花が咲き早咲きの桜が流れを覆うような景色があって、いかにも春めいていて心が弾む。
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野辺の花を愛した荷風をストリートビューの黄色い彼のようにここに召喚したならば、満足げに下駄を鳴らしてテクテク歩き続けるように思えた。

直に初亀の酒蔵が見えてきた。先程飲んだ限りでは最後の後口に今少し品格があればという出来だったが、次の機会では小川の景色を思い出しながらの一献となるだろうから一味増して旨かろうと思う。
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さらに行くと岡部宿の旅籠「柏屋」に着く。なんとか観光の目玉にと意気込んだようだが、資金が足りなかったのか本陣跡は簡素な立札があるだけで往時を偲ぶよすがもなくて肩透かし。
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広場でぼんやり花を眺めてから、近くのいやし庵なる白飯が売りの店で夕飯用の握り飯を買って、早々に立ち去ることに。これで春の小川の景がなければ連続して肩透かしを食らうところだった。
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無駄に立派なバス亭でも寒風に曝され、
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いよいよ偏頭痛が気分を支配してしまう仕儀になり、どうにか緩和しようと駅前の温泉施設へ行って入浴するが、塩気のある泉質で妙に温まりすぎて、今度はどくどくと脳を脈打つのが煩くてしかたない。
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それがあるから午睡もかなわず這う這うの体で電車に乗り込む。
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前回随分楽をさせてもらったホームライナー沼津に今度もお世話になる算段で、静岡の駅ビルでビールのアテを物色することにしたが、どこにでもある店ばかりで面白みがない。

ようやく見つけた練り物屋は地元の店のようであんまり賑わっていなかったが、好物の薩摩芋天(ここでは”おいもさん”といった)があったので買い込んで、悠然ふかふかの座席につきささやかなる夕餉の時間に。少しぽそぽそするが、混じりっ気のない素朴な味わいがいい”おいもさん”は腹持ちもいいし、ビールにも合う。
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丸めて串にさしたりすれば、随分見栄えも良くなって売れそうな気がするが、どうだろうか。岡部で買った握り飯はきちんと塩気が利いた握り飯で、美味しかったが吃驚するほどのこともなかった。
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たちまち沼津まで走り抜けて、熱海を出て小田原に差し掛かった頃、座席下のヒーターの熱気が増してくる。そこには焼津で買う時に「冷蔵保存でね」と店の方に念を押された喜久酔の四合瓶が保冷剤と共に簡易な冷蔵パックに入っている。そのシールドは薄く、熱風をどれくらい持ちこたえられるものか・・・・知らぬ間に第三新東京市下でヤシマ作戦的なものが展開しはじめていて、シンジ君にでもなったつもりでエントリープラグにも似た冷蔵パックを開けて「キクヨイ!」と声を掛けたら、まだ十分冷たくてニコっと笑いかけてきたから安堵した。
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↑無事自宅に辿り着いた喜久酔と磯自慢。県内向けの磯自慢は1升2千円と格安で、帰京する強者サラリーマンが3本購入していた。但し、その酒質は馴染んだ磯自慢のものには程遠く、ごくあっさりとした味わいで別物に近い。

そういえば、静岡の練り物屋も蒲「菊」だし、和菓子の「白喜久」といい菜花の季節によく菊に出会った不思議な旅だった。

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